ばかけんちく談話室

設計者の名前には責任が伴う 『Re:ダメなものはもちろんダメ』 #0007

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『ダメなものはもちろんダメ』 #0006に対するレスポンスです。

『Re:ダメなものはもちろんダメ』 #0007

ただ、それだけだと話がちょっと単純すぎるかもしれません。
というのも、極端な例を挙げれば、雨漏りを防ぐために使い勝手が犠牲になるとか、使い勝手を優先させたがために雨漏りの危険が大きくなるとか、そういう場合だってあるからです。
もちろん、両方うまく解決するのが当たり前と言えばその通りですけど、時には背に腹はかえられないっていう状況もあり得ます。
そうした場合に、建築家はどっちをとるか、いずれにしろ文句を言われるのは覚悟の上で、選択せねばならないときもあります。
そういう場合には、機能を配慮していないと簡単にいうことはできないとも思います。

なるほど。
でもその状況が「苦渋の選択」の結果なのか、「あえて無視」なのかは、僕らや○○さんのような「使う側」にはなかなか伝わらないですね。
そこが難しいところです。

それに関連して、前から思っていたことなんですが、建築設計の方々は、自分の手掛けた建物とは、完成後、どのように関わりをもっていくのでしょうか?

自分が意図したコンセプトがちゃんと維持・発揮・実現されているかどうか、確かめに行ったりするのでしょうか?

要するに、「建物がどう使われているか」の事後調査、のようなもの。これも「お忍び」で行くのと、「公式に(例えば定期的に)」行くのではずいぶん意味が違うと思いますが。

特に「建築家」として「私が設計した」と個人で名乗るからには、逆に、その後の建物の行く末に、モノスゴイ責任が伴うものだと思うんですが。

○○さんのような「使い手」が感じる、「建物を使ってみて始めて分かる具体的な問題点」なんかをキチンと吸い上げて、修整したりする機会はあるものなのでしょうか。

完成後、いざ人を入れてみたら、どこをどう動いたらいいのか分からない人が続発して、せっかくキレイに仕上げられた壁面やガラスに、ベタベタと「トイレは前方右」「ここは2Fです」とか書かれた紙が張ってある建物をたまに見ますね。サイン表示が悪いのか、人の通り道がヘンなのか。

こういうのを建築家が見に来て「あちゃー、失敗したなぁ、反省反省。」と思ったりして、サイン表示を自ら修整したりするのか、それとも全く逆に「私の作品に勝手にこのようなものを張られては困る!」とか言って、現場の人を怒っちゃったりするのか(そりゃ可哀そすぎ)、非常に知りたいところです。もちろん、人によるとは思いますが。

結局、苦情をまともに受けるのは、施主:クライアントだけ、っていうのもなんだか不公平な気がしますが。

『設計者の責任』で真っ先に連想するのは、水害で大きな被害を受けた高層マンションですね。

地下が浸水したことで幾多の設備がダメージを受け、「下水が逆流する」「エレベーターが使えない」など、深刻な問題が生じて、被害に遭った建物のみならず、界隈の高層マンションのイメージも地に落ちました。

売却するにも、資産価値が急落しては次の買い手もつきませんし、住民が離れていけば、空き部屋だらけのゴースト・マンションと化します。

水害に弱いことや、長期の居住には向かないことなど、事前に分かっていたにもかかわらず、ディベロッパーも、建設業者も「売れれば、それでよい」という態度で、住民に何ら注意喚起しなかったとしたら、大変な責任逃れですよね(事前に、水害に弱いことを告示するディベロッパーは有り得ませんが)。

それも一戸建てならともかく、簡単に潰しの利かない、巨大高層マンションです。

いずれ老朽化し、ゴースト化すれば、残された住民はどうやって暮らしのクオリティを維持するのでしょうか。

資金不足では改装も適わず、10年、20年と時が経つにつれ、昔のニュータウンのように、高齢者ばかりが住まう、不便なゴーストタウンになりかねません。

そうした問題は、購入者の自己責任なのでしょうか。

企画や建設した側は、何の社会的責任も負わないのでしょうか。

建築物は、ラーメンやジャケットのように、「売れればいい」では済まないものであり、時に、問題建築は、購入者に著しい経済的損失と精神的ダメージを、社会には補償や修理といった大きな負担を投げかけるものです。

そして、それが事前に問題視されて、開発にストップをかけるのも、突き詰めれば、一般市民や専門家の良識やセンスに依るんですね。

後々に禍根を残すような巨大建設が強行されても、誰も疑問に思わず、声も上げなければ、「売ったもの勝ち」、「よく調べもせず、購入したあなたがバカ」で済まされてしまうのですから。

建築に関しては、日本ではまだまだ関心が低いこともあり、外国みたいに、「道路幅を変える」というだけで、周辺の住民が総決起するようなアクションは起こりにくいところがあります。

言い換えれば、「売ったもの勝ち、作ったもの勝ち」の一方的な世界であり、それに唯一、対抗できるのは、一般人の関心と良識、建築(美術)に関するセンスだけなんですね。

『Re:ダメなものはもちろんダメ』 #0007

『ばかけんちく談話室』は、1995-2007年にかけて、古井亮太氏が運営されていた『ばかけんちく探偵団』に設置されていた掲示板です。詳細は「ばかけんちく談話室について」をお読みください。
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