建築家の夢想の世界から出てきた #0053

建築が含む物語性と建築家の夢想 なぜあの建物は愛されるのか #0053

建築家の夢想の世界から出てきた #0053

#0053 建築家の夢想の世界から出てきた「ばか建築」

てそさん、

宮崎駿の描く町(#0038)は私も大好きです! ちょっと非現実っぽくって、でも現実に人が暮らしているにおいがする。アジアやヨーロッパのいろんな町のディテールが取り混ぜられているみたいで、そうそう人が住んでいればこんな形を作るだろうなーどこかにこんな形の町があるんだろうなーと思わせる。それは多分理屈ではかれない部分に生活のツボみたいなものがあって、それをギュッと押さえて町の絵が描かれているからなんでしょうね。

私は文学作品に書かれた都市を研究しているのでこういう話にはすぐとびついてしまいます。文学作品だけじゃなくて、映画やアニメ(くれよんしんちゃんの春日部とか)も扱ってみたいのですがまだ手が回らない。

ところで「ばか建築」群は一種のフェアリーテイルのような、どことなく夢の世界をひきずっているようなところがあるように思います。それは多分建築家の夢想の世界から出てきたからなのでしょう。でも、その建築が共感できる物語性を持っていなければ、現実の世界に具体化された他人の夢を見せ付けられる方は不快感を持ったり白けたりするんだと思います。ばか建築がそれぞれの人の生活の物語の中に登場するようなら、共感される建築と言えるのかな。

そして#0043の話へ続きますが、伝統的な建築が風景の中に溶け込んで見えるのは、その風土に産する素材を使って、何度も同じような建築を作るうちに洗練された型ができて、形自体が風景にあっていることと、もう一つ、そのなじんだ建物の中での生活がある程度共感を伴って想像できるからといったメンタルな原因があるのではないかと思います。自然の風景は美しいけど、そこに人が住んでいるのも美しいと感じられる。「景観」のもともとの意味は、「自然と人工の物が入り交じっているさま」でした。

ところが都市にはほとんど建築だけしかないから、建築同志の調和とかそこでいかに目立てるかを競っていればいいですよね。でも地方では自然の中での建物のデザインを考えなければいけない。建築家はいろいろ考えているようですけど、その人たった一代だけで伝統的な型よりもすばらしい現代建築をつくろうと思ったら、よっぽど天才でないといけないでしょうね。

コルビュジエみたいな。「建築は建物の内側で勝負すべきだ」というのは、よくもわるくもヨーロッパ的発想に私には思えました。

言い古されていることだけど、伝統と創造のバランスをどこでとるかみたいな問題につながりそう。それはこれまでこうだったからということよりも、みんなで話し合ってこうしようと決めていくべきことだろうなと思います。

てそさんが大学生、Iさんが大学院生なので、Iさんの方が少し先輩になるのかな。
受け答えが優しいですね。

てそさんの「違和感」に対して、

ところが都市にはほとんど建築だけしかないから、建築同志の調和とかそこでいかに目立てるかを競っていればいいですよね。でも地方では自然の中での建物のデザインを考えなければいけない。

と共感しつつも、

「建築は建物の内側で勝負すべきだ」というのは、よくもわるくもヨーロッパ的発想に私には思えました。

独自の見解を示しておられる点が印象的です。

そう言われると、てそさんも「ああ、なるほどな」と考えるきっかけになる。

物の言い方一つで、相手の受け止め方が変わる好例です。

私が特に印象に残ったのは、『ばか建築がそれぞれの人の生活の物語の中に登場するようなら、共感される建築と言えるのかな』の一文。

引き合いに出していいのか分からないけど、京都タワーとか、通天閣とか、お世辞にも美しいシンボルとは言えませんよね。京都タワーは「ろうそく」を象っているらしく、それはそれで味わいがあると思うのですが、エッフェル塔みたいに、世界中から観光客が押し寄せるような存在かと問われたら、何とも。。。

日本一高いわけでもなければ、凄いアトラクションがあるわけでもなく、内部も、お世辞にも『お洒落なショッピングセンター』とは言えません。

もうたいがい古いし、簡単に改装もできない理由もあるのでしょう。

それでも、京都人にとって、京都タワーは心のふるさと(?)に違いなく、遠くから新幹線や電車で帰ってきて、あの“ぼんぼり”みたいな、モヤ~っとした明かりが車窓に見えると、ほっとします。

あれはあれで、街の中に溶け込んでいて、時代に合わせて建て替えて欲しいとも、不細工とも思わない。

それぐらい京都人の暮らしと心に染み込んだ、味わいのある建物だと思います。

一口に「ばかけんちく」といっても、妙に地元民に愛される建物もあれば、なかなかお洒落でも総スカンを食らう建物もあり、一概にどれがバカで、どれが優秀とは言えません。

それこそ、建築が内に秘めた物語が、どれくらい地元民の心にフィットするかで、案外、美観とか、芸術性といったものは、含まれていそうで、含まれてないような気もします。

いくら素敵な建物でも、「コンペの出来レース」とか「談合疑惑」とか、ダーティーな噂がつきまとえば、興ざめしますしね。

それにしても、建物ひとつで、これほど議論が弾むジャンルも珍しい。

建築って、美術、経済、社会性、歴史、すべてを包括した総合芸術だと思いますよ。

建築家の夢想の世界から出てきた #0053

『ばかけんちく談話室』は、1995-2007年にかけて、古井亮太氏が運営されていた『ばかけんちく探偵団』に設置されていた掲示板です。詳細は「ばかけんちく談話室について」をお読みください。
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