注目キーワード
  1. 仕事
  2. 美輪明宏
  3. キリスト教
  4. 哲学
AKIRA「エネルギーってどこからやって来るのかしら」

アイデアを持ち続ける意義 大友克洋の『AKIRA』より

AKIRA「エネルギーってどこからやって来るのかしら」

アイデアはどこからやって来るのか

サイバーパンクの傑作と名高い大友克洋の『AKIRA』の映画版にこんな台詞があります。

前にリュウが言ってたわ。アキラって、絶対のエネルギーなんだって。

人間ってさあ、一生の間にいろんな事をするでしょう。何かを発見したり、造ったり……。

家とかオートバイとか橋や街やロケット……

そんな知識とかエネルギーって、どこから来るのかしら?

猿みたいなものだったわけでしょう。人間って。 その前は爬虫類や魚――そのもっと前はプランクトンとかアメーバ。

そんな生物の中にもすごいエネルギーがあるってことでしょう。

そのもっと前の水や空気にも遺伝子はあるのかしら。宇宙のチリだってそうでしょう。

もしあるとしたら どんな記憶を秘めているのかしら

宇宙の始まりの そのもっと前の……

誰でもそんな記憶を持っているのかもしれないわね

もし何かの間違いで順番が狂って そんなアメーバーみたいなものが人間みたいな力を持つことになったら

アニメ版『AKIRA』

『AKIRA』は暴走族の下層のメンバーだったテツオが、超能力者のタカシに衝突したことがきっかけで、性格も一変し、強力なパワーを持つようになります。

テツオの幼馴染みで、暴走族のリーダーでもある金田は、その謎を追う途中、軍に捕らえられ、反政府ゲリラのメンバーであるケイと共に留置所に拘束されます。

上記の台詞は、留置所の一室で、「君はなぜテツオを追っているんだ。あの不思議な力と関係があるのか? それに、何なんだ、アキラって?」と問いかける金田に、ケイが答えるもの。

もし、何かの間違いで順番が狂って、アメーバーみたいなものが人間みたいな力を持つことになったら、自分の周りのエサを食い尽くすだけだ、と、懸念します。

そして、ケイの懸念は的中し、テツオは手の付けられないモンスターに変貌するわけですが……

当時のCMから、新手のエスパーものと軽く見ていた私も、この台詞で見る目が変わりました。宇宙の根源に問いかけるような、奥の深い話だったんだな、と。

しかし、よくよく考えたら、ケイの言うとおり、不思議なのですよ。

家も、オートバイも、橋も、街も、最初からそこにあったわけではないですね。

誰かが設計し、建材を組み立てたから、そこに形が現れたのです。

その源流はどこにあるのかと問われたら、人の頭の中、あるいは心と呼ばれるところに違いありません。

ケイの言うとおり、人間の中にも、宇宙に匹敵するようなエネルギーが備わっている、ということですね。

大友克洋の『AKIRA』では、マッドな科学者や軍人らが、その力をコントロールしようとして失敗し、東京崩壊に繋がった経緯を描いています。

最終的には、制御不能になったテツオも肉体を失い、宇宙的なエネルギーに還元するのですが、もし人がそうした力を信じ、自身の中から掘り起こすことができたら、偉大な創造へと繋がっていくし、現に、今わたしたちをとりまく製品や設備は、みな誰かのアイデアから生まれてきたのなのです。

AKIRA「エネルギーってどこからやって来るのかしら」

もう始まっているからね…

AKIRAに関しては、最後の台詞も意味深です。

「今の僕たちには無理だったんだ」

「でも、いつか私たちも……」

「もう始まっているからね」

”今の僕たちには”の目的語は、「テツオの力」に違いないですが、技術、情報、思想、政治、いろんなものに当てはめることができます。

一度、始まった潮流は、簡単には変えられない。

自分たちで制御しきれると、どうして言い切れるのか。

最後には崩壊して、ゼロに還るまで、誰にもどうすることもできないものかもしれません。

 AKIRA 〈Blu-ray〉 (Blu-ray)
 著者  大友克洋 (原著), 大友克洋 (監督), 岩田光央 (出演), 佐々木望 (出演), 小山茉美 (出演), 大友克洋 (脚本), 橋本以蔵 (脚本)
 定価  ¥3,100
 中古 32点 & 新品  ¥2,412 から
関連記事

『空想ごっこ』も真剣に考え抜いてこそ 海底鉱物資源の本採鉱を前に、プロジェクトリーダーの失踪という憂き目に遭ったアルは、海中技術に長けた潜水艇のパイロットを探し求め、半年前に海洋技術センターを解雇されたヴァルター・フォーゲルを紹介され[…]

アイデアと可能性 ~今は必要なくても、いつかは誰かが必要とするかもしれない
海洋小説 《曙光》 MORGENROOD
ブックカバー
宇宙文明を支える稀少金属ニムロディウムをめぐる企業の攻防と、海洋社会の未来を描く人間ドラマ。心に傷を負った潜水艇のパイロットが、恋と仕事を通して成長する物語です。