ベートーヴェン

ベートーヴェン交響曲第9番「合唱付き」~歓喜の歌を世界で最初に耳にした聴衆~

ベートーヴェン

世界で一番幸せな人は、ベートーヴェン交響曲第9番の初演に立ち会った聴衆だと思う。

……そう言うと、ワーグナーの『トリスタンとイゾルデ』とか、ラフマニノフの『ピアノ協奏曲第二番』とか、初演に立ち会いたかった作品って、いっぱいあるんだけどね。

当時はロックもポップスも無かったから、「ベートーヴェンの新曲が発表される」と言えば、「ビヨンセやジャスティン・ティンバーレイクのニューアルバムが発売される」のと同じような感覚だったかもしれない(比ぶべくもないかもしれないが)

今度はどんな名演を聴かせてくれるのだろう、どんな新しい旋律に出会えるのだろう──。

第九を聴く度に、期待に胸をふくらませながら劇場に足を運んだ人々のざわめきや興奮が思い起こされる。

それはきっと、現代人の私たちには想像もつかないような、エキサイティングな出来事だったにちがいない。

もしかしたら、あの初演の聴衆の中に、私の先祖……というか、前世が居たかもしれないと思う。

それぐらい、この第九も大好きだ。

一般参加の第九合唱団も、そろそろ次の段階に進み、本番に備えていっそう練習が厳しくなる時期と思う。

ミーハーと言われようと、ええかっこしいと思われようと、「第九を歌いたい」という人の気持ちは、これからも永遠に続いてゆくだろう。

こちらは近年公開された『敬愛なるベートーヴェン』の第九演奏会の場面。
次第に聴覚を失っていくベートーヴェンを補佐するためにやってきた写譜師アンナ(架空の人物)との交流を描く秀作だ。
ハリウッドのいぶし銀エド・ハリスが魂のこもった熱演を見せる。


本作で一番印象的だったのは、ベートーヴェンの隣の部屋に住むおばあさんの一言だ。
いつも廊下に椅子を出し、長い間、座っている老女に対し、アンが「中に入らないのですか?」と尋ねると、

「ここは特等席なのよ。ピアノソナタも交響曲も、その作曲の過程を私はすべて耳にしてきたわ。こんな幸せなことがある?」

私も隣に住みたかったな。

敬愛なるベートーベン [DVD]
出演者  エド・ハリス.ダイアン・クルーガー.マシュー・グッド.フィリーダ・ロウ.ニコラス・ジョーンズ.ラルフ・ライアック
監督  アニエスカ・ホランド
定価  ¥ 3,800
中古 43点 & 新品  ¥ 1,339 から
5つ星のうち 3.6 (44 件のカスタマーレビュー)

情熱的で力強い人間ドラマ。ルートヴィヒ・ヴァン・ベートーヴェンの人生最後の数カ月に一部史実に沿った『敬愛なるベートーヴェン』は、この巨匠が取り憑かれた男であり、最大に革新的であるのに本人は聴くこともでない生涯の集大成といえる作品を作曲していたことが描かれている。ベートーヴェンはほとんど耳が聞こえず、金遣いの荒い甥との関係に幻滅し、若い女性作曲家のアンナ・ホルツ(ダイアン・クルーガー)に心引かれる。アンナは曲を楽譜にする写譜師としてベートーヴェンの元で働くことになる。女子修道院に客人として滞在し、ぼんやりとした技師と婚約しているアンナは、ベートーヴェンの感情の起伏の激しい天才ぶりに引きつけられる。半分の時間で、ベートーヴェンはアンナに引かれ、彼女の魂をまっすぐに見ているようだ。残りの半分の時間では、アンナのことを自信がないだの、お世辞は言うなだのどなりつけている。決して弱虫ではないアンナも負けじと言い返す。アンナが反抗すればするほど、ベートーヴェンは彼女の中に自分と同類である魂を見出していき、自分の脆さと芸術を作り出すことの重荷を打ち明けられる相手として認めていく。エド・ハリスのベートーヴェンは苦痛に苛まれているが、打ち負かされてはいない。心の奥底では自分の責任を充分に理解していて、ただ崩れていくことはできない男に見える(“神はたいていの男の耳元では囁く”ベートーヴェンは言う。“私の耳元では叫ぶんだ”)アニエスカ・ホランド監督(『オリヴィエ オリヴィエ』)は堂々として、優しさと暴力が交互に現れる人間ドラマを撮った。いくつかのスリリングな瞬間があり、そこには輝かしい交響楽第九番の初演に耳を傾ける観客たちの感動の場面も含まれている。(Tom Keogh, Amazon.com)

歓喜の歌

An die Freude

O Freunde, nicht diese Töne!
Sondern laßt uns angenehmere
anstimmen und freudenvollere.
(ベートーヴェン作詞)

Freude, schöner Götterfunken,
Tochter aus Elysium
Wir betreten feuertrunken.
Himmlische, dein Heiligtum!

Deine Zauber binden wieder,
Was die Mode streng geteilt;
Alle Menschen werden Brüder,
(シラーの原詩:
Was der Mode Schwert geteilt;
Bettler werden Fürstenbrüder,)
Wo dein sanfter Flügel weilt.

Wem der große Wurf gelungen,
Eines Freundes Freund zu sein,
Wer ein holdes Weib errungen,
Mische seinen Jubel ein!

Ja, wer auch nur eine Seele
Sein nennt auf dem Erdenrund!
Und wer’s nie gekonnt, der stehle
Weinend sich aus diesem Bund!

Freude trinken alle Wesen
An den Brüsten der Natur;
Alle Guten, alle Bösen
Folgen ihrer Rosenspur.

Küsse gab sie uns und Reben,
Einen Freund, geprüft im Tod;
Wollust ward dem Wurm gegeben,
und der Cherub steht vor Gott.

Froh, wie seine Sonnen fliegen
Durch des Himmels prächt’gen Plan,
Laufet, Brüder, eure Bahn,
Freudig, wie ein Held zum Siegen.

Seid umschlungen, Millionen!
Diesen Kuß der ganzen Welt!
Brüder, über’m Sternenzelt
Muß ein lieber Vater wohnen.

Ihr stürzt nieder, Millionen?
Ahnest du den Schöpfer, Welt?
Such’ ihn über’m Sternenzelt!
Über Sternen muß er wohnen.

「歓喜に寄せて」

おお友よ、このような音ではない!
我々はもっと心地よい
もっと歓喜に満ち溢れる歌を歌おうではないか
(ベートーヴェン作詞)

歓喜よ、神々の麗しき霊感よ
天上の楽園の乙女よ
我々は火のように酔いしれて
崇高な汝(歓喜)の聖所に入る

汝が魔力は再び結び合わせる
時流が強く切り離したものを
すべての人々は兄弟となる
(シラーの原詩:
時流の刀が切り離したものを
貧しき者らは王侯の兄弟となる)
汝の柔らかな翼が留まる所で

ひとりの友の友となるという
大きな成功を勝ち取った者
心優しき妻を得た者は
彼の歓声に声を合わせよ

そうだ、地上にただ一人だけでも
心を分かち合う魂があると言える者も歓呼せよ
そしてそれがどうしてもできなかった者は
この輪から泣く泣く立ち去るがよい

すべての被造物は
創造主の乳房から歓喜を飲み、
すべての善人とすべての悪人は
創造主の薔薇の踏み跡をたどる。

口づけと葡萄酒と死の試練を受けた友を
創造主は我々に与えた
快楽は虫けらのような弱い人間にも与えられ
智天使ケルビムは神の御前に立つ

神の計画により
太陽が喜ばしく天空を駆け巡るように
兄弟たちよ、自らの道を進め
英雄のように喜ばしく勝利を目指せ

抱き合おう、諸人(もろびと)よ!
この口づけを全世界に!
兄弟よ、この星空の上に
父なる神が住んでおられるに違いない

諸人よ、ひざまついたか
世界よ、創造主を予感するか
星空の彼方に神を求めよ
星々の上に、神は必ず住みたもう

合唱のポイント

歌詞は有名ですけど、実際、ドイツ語で何と言っているのか、知らない人も多いのではないかと思います。

以下、合唱パートにおける発音を紹介しておきますね。
(私は専門家ではないし、日本語に置き換えているので、厳密には違う部分もあるかもしれませんが<ウムラウトとか・・>、だいたいの感じをつかめていただけたら嬉しいです)

曲自体は長いですが、同じ歌詞の繰り返しなので、すぐに覚えられますヨ。

Freude, schöner Götterfunken,
フロイデ シェーネル ゲッテルフンケン

Tochter aus Elysium
トホテル アウス エリージウム

Wir betreten feuertrunken.
ヴィル ベトレンテン フェウエルトルンケン

Himmlische, dein Heiligtum!
ヒムリッシェ ダイン ハイリヒトゥム

Deine Zauber binden wieder,
ダイネ ツァウベル ビンデン ヴィーデル

Was die Mode streng geteilt;
ヴァス ディ モデ シュトレング ゲタイルト 

Alle Menschen werden Brüder,
アレ メンシェン ヴェルデン ブリューデル

Wo dein sanfter Flügel weilt.
ヴォー ダイン サンフテル フリューゲル ヴァイルト

Seid umschlungen, Millionen!
サイト ウムシュルンゲン ミリオネン

Diesen Kuß der ganzen Welt!
ディーゼン クス デル ガンゼン ヴェルト

Brüder, über’m Sternenzelt
ブリューデル イーベルム シュテルネンツェルト

Muß ein lieber Vater wohnen.
ムス アイン リーベル ファーテル ヴォーネン

Ihr stürzt nieder, Millionen?
イール シュトゥルシュト ニーデル ミリオーネン

Ahnest du den Schöpfer, Welt?
アハネスト ドゥ デン ショプフェル ヴェルト

Such’ ihn über’m Sternenzelt!
スフ イーン イーベルム シュテルネンツェルト

Über Sternen muß er wohnen.
イーベル シュテルネン ムス エル ヴォーネン

Küsse gab sie uns und Reben,
クッセ ガブ シエ ウンス ウント レーベン

Einen Freund, geprüft im Tod;
アイネン フロウント ゲプリューフト イム トート

Wollust ward dem Wurm gegeben,
ヴォラスト ワルト デム ヴルム ゲゲーベン

und der Cherub steht vor Gott.
ウント デル ケエルプ シュテフト フォル ゴット

【格好良く歌うコツ】

(1) [ t ] は舌打ちするように音を切る。母音を付けない。

たとえば Welt(ヴェルト)の最後の「t」は、to(ト)と母音を付けて発音するのではなく、「チッ」と舌打ちするように、舌先を口蓋の上に付けて、純粋に「t」の音だけ出すのがコツです。

この「t」を歯切れ良く、明瞭に発音すると、ドイツ語っぽく聞こえます。

(2)ポイントは「Welt」「Gott」「Götterfunken」

合唱のクライマックスに相当する言葉が上の三つです。

Diesen Kuß der ganzen Welt (この口づけを全世界に!)の「Welt」

und der Cherub steht vor Gott.(智天使ケルビムは神の御前に立つ)の「Gott」

そして、Freude, schöner Götterfunken (歓喜よ、神々の麗しき霊感よ)の「Götterfunken」

いずれも、曲の最高音に込められた歌詞ですから、ここで「歓喜が爆発するように」、あるいは「天に突き抜けるように」高らかに歌うのがコツです。

(3)中間部のフォルテで気張らない

合唱の一番難しいパートは、曲の中間に現れる以下の部分です。

Ihr stürzt nieder, Millionen?
Ahnest du den Schöpfer, Welt?
Such’ ihn über’m Sternenzelt!
Über Sternen muß er wohnen.

ピアニッシモからフォルテへ、フォルテからまたピアニシモへ、寄せては返す波のように強弱をつけて歌わなければならないドラマチックな部分なだけに、つい山場の「Welt」で、ガーンと大きな音を出してしまいがちですが、他の部分の「Welt」と違い、ここは天国をを思わせるような透明感が大切な箇所。
この箇所の「Welt」をはじめ、フォルテの部分は、あくまで崇高に、上品に歌うのがコツです。

(4)フーガの部分は周りの音をよく聞いて

フーガの部分は各パートが掛け合うように歌う部分なので、飛び出したり、出遅れたりする人が続出する箇所でもあります。

Brüder, über’m Sternenzelt
Muß ein lieber Vater wohnen.

この部分のポイントは、「Brüder」。「全世界の兄弟よ」と呼びかける、このブリューデルは優しく。
それに続く「Sternenzelt」は、星のきらめきを思わせるように。
ここが美しく決まらないと、演奏全体が死んでしまいます。

(5)最後の爆発感が肝心

クライマックスは、次の歌詞の繰り返し。

Seid umschlungen, Millionen!
Diesen Kuß der ganzen Welt!

Brüder, über’m Sternenzelt
Muß ein lieber Vater wohnen.

Freude, schöner Götterfunken,
Tochter aus Elysium

最後は Götterfunken(神々の火花……とうちの合唱団の先生は言っていた)が意味するように、歓喜の火花を散らしてフィニッシュするのがコツ。

指揮者によっては、「ゲッテルフンケン!」と歯切れ良く歌い終わるパターンと、「ゲッテルフ・ン・ケ・ン」と一音一音溜めるように表現するパターンと二つあるので、指示をしっかり理解して、とちらないようにしましょう。

交響曲第9番 おすすめCD

ベートーヴェン:交響曲第9番「合唱」
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第九も名盤揃いですが、聴く側にこだわりがあるので、万人に共通の名演というのはまずありません。
しかしながら、耳に心地よい、絵に描いたような第九はあります。
カラヤン版は誰でも安心して聴ける演奏です。
特にこだわりもなく、「とりあえず一枚買っておくか」という方におすすめです。

バーンスタイン/ベートーヴェン:交響曲第9番~ベルリンの壁崩壊記念コンサート~ [DVD]
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バーンスタインの第九も人気がありますが、特におすすめなのが崩壊記念コンサートの録画映像。
カラヤンのケレンの入った「いかにも!」な表現が苦手な方にはこちらをおすすめします。

ベートーヴェン:交響曲第9番《合唱つき》[バイロイトの第9/第2世代復刻]
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5つ星のうち 3.9  (30 件のカスタマーレビュー)

ベートーヴェン:(1)交響曲第9番ニ短調op.125「合唱つき」

【演奏者一覧】 ヴィルヘルム・フルトヴェングラー指揮 バイロイト祝祭管弦楽団 バイロイト祝祭合唱団 エリーザベト・シュヴァルツコップ(S) エリーザベト・ヘンゲン(A) ハンス・ホップ(T) オットー・エーデルマン(BS)

これも持ってましたね。私が買ったCDは「足音入り」だったんですよ。
フルトヴェングラーがコツコツと舞台袖から出てきて指揮台に立つまでの、その足音まで収録されているというレアものです。今度の復刻版にも足音が入ってるんでしょうか・・。
歴史的背景を知れば、この演奏の良さが分かります(Amazonのレビューにも一部紹介されています)
現代のスタイリッシュな演奏が好みの方には、ただただ古臭いものにしか聞こえないでしょう。
マニアが最後に辿り着く「歴史的に意義のある」名盤です。

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