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会話によるキャラの書き分け

『台詞』と『話し言葉』は違う 会話によるキャラの書き分けが出来ていますか? 

会話によるキャラの書き分け

もし、あなたの書いた小説が高く評価されないとしたら、理由の一つは『台詞が”台詞”になってないから』だと思います。

言うまでもなく、小説におけるキャラクターの喋りは『台詞』であって、『会話』ではありません。

人が口にする言葉には違いないけれど、人の会話をそのまま文章化した「会話文」ではないんですね。

せっかく良いことを言ってるのに、読む側が苦痛に感じるとすれば、それは会話文=会話の丸写しで、『台詞』になってないからだと思います。

わかりやすい例を挙げれば、面白い漫画は、大半がキャラの会話で構成されているにもかかわらず、読み物としても十分に手応えがありますね。

それはキャラの交わす言葉が、単なる会話の書き写しではなく、ちゃんと台詞になっているからです。

名作マンガの決め台詞を見ても分かるように、大勢に愛される台詞は、文学に近いものがあります。

まず言葉にリズムがあり、用いられる単語が洗練されています。

「洗練された単語」というのは、いかにも賢そうに見える四文字熟語や、誰も知らないマニアックな専門用語ではありません。

この場所、この人、この展開に、「これ以外の言葉はない」と断言できるような、選び抜かれた単語です。

今はすっかり古典になってしまいましたが、北斗の拳の『我が生涯に一片の悔いなし(ラオウ)』も一つの名言ですね。

あれも作品全体が名台詞の宝庫で、さすが武論尊&原哲夫の世界です。原作者の武論尊氏も相当に時代劇や時代小説、様々なジャンルの作品を研究して、あのようにクラシックかつ迫力のある台詞回しを身につけられたと推察します。

これが下手な作者なら、「俺の人生に悔いはない」とか「存分に戦ったから悔いはない」みたいな、スカスカの台詞にしかなりません。

最後の最後にこの一言が出てこなければ、それまでのラオウとケンシロウの闘いも、単なるパワーゲームでしかなくなるわけですよ。腕力の強い方が勝ち、みたいな。

でも、最後の最後に「我が生涯に一片の悔いなし」と口にすることで、彼等の闘いは、単なる腕相撲ではなく、己の矜持や人生を懸けた漢(オトコ)の闘いであったと納得できるわけです。

このように、会話文と台詞の違いを理解しないと、ただ単にキャラクターがぺちゃくちゃ喋っているだけの、「イメージの言語化」でしかなくなります。そんでもって、作家の仕事は、イメージを言葉に置き換えることではなく、言葉そのものを作品に昇華させることですよ。

自分の頭の中のイメージを言葉(会話)で説明するのではなく、その会話自体が巻物のように美しく、「声に出して読みたい日本語」の世界になることです。(上手く言えませんが)

単に言葉に置き換えただけの会話文と、台詞の違いが分からなければ、脚本の素晴らしいTVドラマや、洋画の吹替版などを観て下さい。

ああした脚本も、ただ単に人々の会話を言葉に置き換えただけでなく、耳から入ってくるリズム、そのキャラクターにふさわしい言い方など、隅々まで神経を配って、美しく、テンポのいい内容に仕上がっています。

この違いが分かれば、あなたの小説も、非常に躍動感のある、小説らしい小説になると思いますよ。

参考までに。

海洋小説 《曙光》 MORGENROOD
ブックカバー
宇宙文明を支える稀少金属ニムロディウムをめぐる企業の攻防と、海洋社会の未来を描く人間ドラマ。心に傷を負った潜水艇のパイロットが、恋と仕事を通して成長する物語です。