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クロード・モネ ウォーターリリー

ドビュッシー 『水に映る影』『小組曲』『沈める寺』

クロード・モネ ウォーターリリー

ドビュッシーの音に色はない。

風や光に色が無いように、ドビュッシーの音楽にも色は見えない。

なぜだろうと思って音の底を覗いてみると、そこに形がないからだ。

「天国」や「妖精」がそうであるように、ドビュッシーの音楽も観念の世界として心に響いてくる。

人が「月」を思えばそれは月になり、「海」を思えば海になる。

色も形もない透き通った音楽に、どんな印象でも反映することができる。

ドビュッシーの音楽を心地よく感じるのは、そこに自由な羽ばたきを感じるからだ。まるで自分の心の音を聞くような陶酔感。

どんな風にでも音と戯れることができる。

そのあたりが、ベートーヴェンやブラームスを聴いていると、時々、疲れてしまう所以だったりする。

こういう音楽を一枚の絵に描き、白い回廊に一列に並べて、朝の光の中で眺めることができたなら、それはきっと天国と呼ぶにふさわしい清々しさだろう。

光を紡ぎ、水のように跳ねる。

ドビュッシーのアルペジオ。(アレクシス・ワイセンベルクに関する記事はこちら

組み合わされたアルペジオ(≪練習曲集≫第2巻から)

こちらはフランス版『ちいさい秋みつけた』。

ピアノ4手連弾のための組曲、一般に『小組曲』で知られている四部作の中の一つです。

「小舟にて」「行列」「メヌエット」「バレエ」と、いずれも単独でも素晴らしく魅力的な曲がセットになっており、連弾としても、オーケストラでも楽しめるドビュッシーの傑作。

中でも私が好きなのが第3楽章の「メヌエット」。

最初に落ち葉が舞い、街路を埋め尽くした黄色い枯れ葉の上を、長いおさげの少女が跳ねるようにして歩いて行く。
ふと立ち止まると、まだ陽の光を名残るような緑の葉っぱが落ちていて、少女はそれを木の枝に戻そうとするけれど、突然、冷たい風が吹きつけて、葉っぱはみるみる遠くに運ばれて行く。
少女は黄色い木漏れ日を見上げると、再びステップを踏み始める。
足元に深まる秋の気配を感じながら──。

という印象かな。

特に指定はないけれど、この四つの小曲は「春夏秋冬」を表しているような気がしてなりません。

「小舟にて」は、やわらかい春の陽ざしの中でボート遊びを楽しむ恋人たちの情景を描き、「行進」は、水着や遊び道具を片手に湖に急ぐ子ども達の列を思わせる。「バレエ」の華やかさは、白い粉雪の舞う中をクリスマスの妖精たちが踊ってるみたい。色鮮やかでしょう?

あともう一点が、『映像』に収められている『水に映る影(水の反映)』。
まるでモネの水彩画を思わせるような豊かな音の広がりと透明感のある響きが素晴らしい。
音をのぞき込んだら、あなたの姿が見えるでしょう?
水に映っているのは、他ならぬ自分自身──
私たちはドビュッシーの音楽を聴きながら、その実、自分の心にはねかえる音を感じているのです。

あともう一点は、いわずもがな、前奏曲集『沈める寺』。これは下記のリンクからどうぞ。
実は、ドビュッシーは、一度も生で聞いたことがない。
なんだかんだで機会がなかったなぁ、と。
この『沈める寺』だけは、深い、深い、森の奥の、古いカトリックの寺院で聞いてみたいものです。

おすすめアイテム

ドビュッシーの演奏も人によって好みが大きく分かれるところ。

私の一押しは言うまでもなくアレクシス・ワイセンベルクの名曲集で、クリスタルな響きに魅せられること幾星霜。
いかにもドビュッシー、いかにも印象派! としていない、独自の世界観に惹かれます。

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お家芸のようなフランス的演奏を堪能するなら、ミシェル・ベロフがおすすめ。
この方の演奏も知的で、洗練されていますよね。

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『水に映る影』『沈める寺』を堪能するなら、今や世界のマスターピース、ミケランジェリ版がおすすめ。
すでにあの世にいってます。

『小組曲』に関しては、「メヌエット」に対する私のこだわりが強いせいか、なかなかどれも納得できない部分があります。
私が持っているハースという方の演奏が、有名ではないけれど、一番心に響いて、その思い出をずっと引きずっているからかもしれません。
ちなみに、このCD、すでに廃盤です。
あえて挙げるなら、コレかな。
「メヌエット」は、あまりペダルを使わない、ちょっと乾いた感じの演奏が好きです。
他の収録曲もいいですよ。ぜひ試聴してくださいね。

・梨の形をした3つの小品(サティ)
・3つのロマンティックなワルツ(シャブリエ)
・組曲「ドリー」op.56(フォーレ)

初稿:: 2011年3月1日

海洋小説 《曙光》 MORGENROOD
ブックカバー
宇宙文明を支える稀少金属ニムロディウムをめぐる企業の攻防と、海洋社会の未来を描く人間ドラマ。心に傷を負った潜水艇のパイロットが、恋と仕事を通して成長する物語です。


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