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角川映画『汚れた英雄』コンマ一秒のエクスタシー / ローズマリー・バトラーの主題歌

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コンマ一秒のエクスタシーと『Riding High』の疾走感

今はもう、ほとんど名前を聞くこともありませんけど、うちは姉妹そろって草刈正雄さんのファンでした♪

すらりと伸びた長身、ハーフならではの端正な顔立ち、まるで少女マンガから抜け出てきたような上品で麗しいルックスにメロメロだったのです。

その草刈さんが全裸を披露し、有名女優と濃厚なラブシーンを演じて話題を呼んだのが、大藪春彦原作の『汚れた英雄』。

美貌と才能に恵まれた野心的な男が金持ち女をたらしこんで上り詰め、最後は破滅する――という、大藪小説の黄金パターンを地で行く作品です。

興行的にはそれほど成功しませんでしたが、ローズマリー・バトラーの主題歌「Ridin' High」は大変ヒットしました。公開当時、この曲を耳にしなかった日はなかったくらいです。

コンマ1秒のエクスタシー』というコピーも大変話題になりました。

歌詞も燃えるようなエナジーがみなぎって、レースのシーンにとてもマッチしています。

こちらはローズマリー・バトラーの主題歌にのって展開される映画のオープニングです。

*動画は削除されました。度々、YouTubeに上がってるので、検索してみて下さい。

I can see you burning with desire
Reaching for a glory you will never find
I can't help but feel a wall around you
The way you kiss me you never miss me do you?

You don't care what people say about you
Searching for an endless game all thru your life
Riding thru a haze that you call memories
Get on the right track you never look back do you?

The nights we spent the tears I shed
My words of love will never die

Riding High Riding High
You are the lonely rider I know
Riding High Riding High
I love you more than you'll ever know
You're going too fast
You better think twice・・・oh no!
You're going too fast
You better think
Riding High

あなたの中に 燃えるような欲望が見える
あなたには決して見出せないだろう栄光を求めているのね
私にはあなたを助けることはできない
ただ あなたの周りに隔たりを感じるだけ
あなたは私に口づけしても 恋しく思ったりはしないのよね

あなたは周りの人が何と言おうと気にしない
人生を懸けた終わりなきゲームを探し求めている
あなたが思い出と呼ぶ 朦朧としたものも走り抜けて
信じた道を 決して振り返ることなく突き進んで行くのでしょう?

だけど 私たちが過ごした夜と 私の流した涙
そして私の愛の言葉は決して死んだりしない

高速で駆け抜けるのよ
あなたが孤独なライダーだということは分かっている
そうよ 高速で駆け抜けて
あなたが知る以上に 私はあなたを愛しているのよ

そして あなたは あなたが思うよりもずっと速く 
駆け抜けてゆくのね

{自家製フィーリング訳}

歌詞がシンプルなだけに、いろんな風に解釈できますね。

でも、「Riding High」って、本当にいい言葉だし、大藪小説の主人公のイメージにピッタリだと思います。

角川商法:「映画」と「原作」と「主題歌」を同時にPR

「映画」と「原作」と「主題歌」を同時に売り出す『タイアップ商法』を大々的にやり出したのは角川が初めてでした。

第一弾の映画『人間の証明』は、「読んでから見るか、見てから読むか」というキャッチコピーで、森村誠一の原作も売れに売れたし、角川映画のヒロインだった薬師丸ひろ子ちゃんも主題歌が軒並みヒットして、女優というよりアイドル歌手のような売れ方でした。

ただ単に「コマーシャルが効果的だった」からではなく、松田優作、高倉健、薬師丸ひろ子、真田広之といった俳優の魅力に加え、どの主題歌も非常に印象的で、「これで売れなきゃどうかしている」と思うくらいのクオリティの高さだったと思います。

言うなれば、大衆の好みをとらえた、作り手のセンスも素晴らしかったということですね。

こういう売り方を考え出した角川春樹という人は、本当にすごいと思います。

まさにサブカルチャー爛熟期の80年代を代表するプロデューサーの一人ですね。
(もう一人は、『オレたちひょうきん族』『The Manazai』の仕掛け人、横沢プロデューサー)

なぜオートバイ映画がヒットしたのか? HONDA&KAWASAKIが大学生のマストアイテムだった頃

平成&令和生まれが今、この映画を観てもピンとこないでしょう。

サスペンス要素もなければ、ハリウッド映画みたいなド派手なカーアクションがあるわけでもない(喩えるなら、『ワイルドスピード』みたいな)。

いわば、イケメン+金持ちの天才ライダーが、アメリカ人の社長令嬢を口説き落として、のし上がるという、昭和ドリームを体現したような作品だからです。

昭和ドリームというのは、当時の日本人の中高年層がいまだ敗戦の屈辱を引き摺って、欧米コンプレックスを抱き、欧米に追いつけ、追い越せで死に物狂いで頑張っていた時代の野望みたいなものです。

ビジネスエリートの白人女性から見向きもされない日本人男性が、己の肉体と才能を武器に、国際コングロマリットの社長令嬢をものにし、なおかつ、パトロンである日本人の金持ち女性ともよろしくやるストーリーは、まさに昭和のジャパニーズドリームというか、当時の日本人サラリーマンの怨念と劣等感を煮詰めたような話で、だからこそ、ハーフの美男俳優・草刈正雄と、当時、勢いのあったオートバイメーカー(しいては日本の製造業 Made in JAPAN)のタッグに説得力があったのです。

そして、その裾野には、全国何万人だか何十万人だかのオートバイ乗りがいました。

無免許の暴走族も含めれば、関東連合どころか、四州連合ができるほどのライダー数だったのです。

大学生はもちろん、高校生でも、新聞配達やガソリンスタンドのアルバイトをして、小遣い貯めて、まずは250ccのオートバイを購入するところから人生が始まっていたんですね。

で、高校生から乗り始めた子が、大学生になると、KAWASAKIのNinjaや、HONDAのCBR、 YAMAHAのFZといった400ccにグレードアップし、後ろに彼女を乗っけてツーリング……と。それが定番だったわけです。オートバイから車に転向する男子も少なくありませんでした。人気だったのは、HONDAのCITYとか、セリカとか、あのあたり。

今では高校生も大学生も「オートバイを買うのが夢」というのはあまり耳にしませんし、車も「カーシェアリングでよくね」という感じで、モーターへの熱も冷めました。

というより、『お金が無い』とういのが切実な理由でしょう。

昭和の頃は、息子がグレても、親が子供に殴られながらも20万、30万と支払う能力があって、学校にも行かず、バイトもせず、昼間からタバコぷかぷかやってるような子でも、オートバイだけは妙にいいのに乗ってたりしましたけど、今は親の方にも余裕がないのか、「オレに学校に行って欲しかったら、バイク買えや!」という脅し文句も無効になりました。そんな風に脅したところで、親もお金持ってないのが分かるからでしょう。

ある意味、暴走族というのは、当時の中高年層の豊かさを象徴するような出来事だったのかもしれません。(もちろん、高校中退→就職→お金貯めて自分で買う、勇ましい男子もいましたよ。またそういう男子を世話する、“とっつぁん”みたいな親分肌の職人さんも多かったんですね。自分も戦後の貧しさや孤独を経験して、そういう子たちの心理が分かる……みたいな)

そうした背景もあって、『美貌の天才ライダー』『パトロンのお嬢さん』『世界的なレーシングイベント』にも説得力があり、バイクや車に興味のある若者が劇場に足を運ぶ現象に繋がったわけですが(興行的にはあまり振るわなかったようですが)、経済的にも、市場的にも、裾野の崩壊した現代は、美貌の天才ライダーに何の説得力もなく、白人女性をターゲットにした恋の駆け引きも、ただただ滑稽なだけで、逆に、「命の危険を冒してまで、何が面白いの?」「最初から争わない、競わない」とか言われそうで、隔世の感があります。

映画としての出来不出来はともかく、『汚れた英雄』は。良くも悪くも、遠く過ぎ去った昭和のジャパニーズドリームを象徴する快作として、未来に語り継がれるでしょうし、ローズマリー・バトラー嬢のパワフルな歌唱も、レコード文化が崩壊し、無料視聴とサブスクリプション全盛の時代にあっても、なんの遜色もありません。

むしろ、こんな濃い作品が堂々と制作されていた時代の生き証人として、大切に保存して頂きたいです。

DVD・CD・小説

どこのチームにも属さない一匹狼の二輪レーサー北野晶夫(草刈正雄)。誰よりも速く走ることしか興味はない彼にとって、言い寄ってくる美女の群れも、栄光へ到達するための道具でしかない。ただひたすらに世界のチャンプをめざす男の行きつく先は…。
大藪春彦原作の同名ベストセラー小説を、角川映画の時の総帥・角川春樹が自らメガホンを握って初監督したハードボイルド・バイクレース・アクション映画。
徹頭徹尾クールでスタイリッシュなジゴロ風のヒーローを草刈正雄が見事に演じきっているが、そこには原作の持つ「汚れた」要素は微塵もなく、むしろ英語タイトル「THE LAST HERO」の方が似つかわしいテイストになっている。
主演・草刈正雄もさることながら、晶夫に入れ込む金持ち女を演じる木の実ナナ、浅野温子といった女優陣も妖艶。
ストーリーそのものに興味がなくても、ツーリングやレースの好きな人、特に、若かりし頃、バイク野郎だった人には懐かしく楽しめる作品だ。
Amazonプライムでも視聴できるので、興味のある方はぜひ。

汚れた英雄 ブルーレイ [Blu-ray]
出演者  草刈正雄、木の実ナナ、浅野温子 (出演), 角川春樹 (監督)
監督  
定価  ¥2,293
中古 6点 & 新品   から

原作の小説はこちら。大藪春彦の昭和のジャパニーズドリームを体現する作家でしたね。

 汚れた英雄 第1巻(野望篇) (角川文庫 緑 362-29) (文庫)
 著者  大薮 春彦 (著)
 定価  ¥550
 中古 12点 & 新品   から

タイトルを見るだけで、生唾がわいてくる(?)
まさに「80年代」を象徴するような豪華ラインナップ。
あのメロディ、あの場面が、懐かしく思い出されるファン垂涎の一品です!

人間の証明のテーマ/ジョー山中
戦士の休息/町田義人
蘇える金狼のテーマ/前野曜子
戦国自衛隊のテーマ/松村とおる
セーラー服と機関銃/薬師丸ひろ子
汚れた英雄/ローズマリー・バトラー
探偵物語/薬師丸ひろ子
時をかける少女/原田知世
里見八犬伝/ジョン・オバニオン
メイン・テーマ/薬師丸ひろ子
愛情物語/原田知世
Woman ~Wの悲劇~より/薬師丸ひろ子

角川映画スペシャル by ユニバーサル ミュージック (e)
 定価  ¥38
 中古 21点 & 新品   から

first edition : 2007/05/06
Last update : 2007/11/25
主題歌『Riding High』の歌詞を追加

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