英国王室が分かる3部作「エリザベス」「ゴールデン・エイジ」「ブーリン家の姉妹」&「クイーン」

目次

エリザベス一世 : 現代に通じるキャリアウーマン

エリザベス一世は、私が好きな歴史的人物(女性)の一人です。

どれくらい好きかといえば、自作の小説のヒロインの名前に頂戴したほど。

ロンドン塔の囚人からイングランド女王、そして、世界の覇者へ。

若干25歳で戴冠した彼女の運命の重さを思うと、胸が震えます。

エリザベス一世の伝記はもちろん、彼女をモチーフにした様々な読み物がありますが、私が一番好きなのは、ケイト・ブランシェットが演じる映画『エリザベス』。

ケイト・ブランシェットといえば、『ロード・オブ・ザ・リング(指輪物語)』の森の奥方ガラドリエルが有名ですが、私の中では出世作となった『エリザベス』が一番です。

「私は国家と結婚した」と自らの運命を受け入れる以前の、繊細で、どこか夢見るような乙女エリザベスを好演。

知的でありながら、女性らしい苦悩が手に取るように分かるほど。

キャリアに生きる現代女性にも通じる作品ですので、機会があれば、ぜひ御覧下さい。

映画『エリザベス』について

若き日のウィリアム王子に王家の血筋を実感

その昔、世界中のタブロイドがダイアナ妃の不倫&離婚報道で賑わっていた頃、お昼のワイドショーで映し出されたウィリアム王子のポートレートを見た時、それまで「夢の王子様」だったレオナルド・ディカプリオ(「タイタニック」に出ていた頃の)のことなど、どこのお山にか飛んでいって、「うわー、ディズニーのプリンスが息して歩いてるぅ♪♪」と、その美しさと気品に嘆息したものだ。

顔だけのレオ様とは違う、由緒正しき王室の血脈。

ダイアナ妃の生き写しのようなスウィートな顔立ちに、イギリスでは紳士の証とされる真っ直ぐに伸びた両脚。

「あー、本当に『王子様』っているんだなー」と、つくづく。

ついでに、2002年、ロンドンに旅行した時、土産物屋に、ハリウッド・スターを彷彿とするようなプリンス・ウィリアムの絵葉書がたくさん売られていたのも印象的だ。

対して、チャールズ皇太子は、テニスの最中に股ぐらを搔いてる写真とか、ブラックジョークの吹き出し付きとか、「よく不敬罪に問われないな」と思うようなトホホな絵葉書ばかりが目に付いたが。(ダイアナ妃の不倫騒動で、一気にイメージが悪化したので)

↓ ロンドンもこの頃はまだイギリスらしい風情があったんですよね。今みたいに無差別テロとも無縁で。
ロンドン

激動の時代とプリンセスの運命

思い出のロンドン旅行から十数年。

こんな素敵な王子様のハートを射止めるのはどんな女性だろうと、あれこれ思い描いていたら、これまたモダンでハイセンスなお嬢様、ケイト・ミルドンさん。嫌みのない美貌と、スーパーモデルも顔負けの知的な着こなしに、一番嫉妬しそうな同世代の女性も兜を脱がざるを得なかったという感じ。「And they lived happily ever after(そして二人は幸せに暮らしました)」を絵に描いたようなウェディング・セレモニーに嘆息した女性も多かったはずだ。

それに比べて、エリザベス一世やアン・ブーリンの生きた時代のなんと血なまぐさいことか。

王族、とりわけ王女にとって、結婚とは政治の道具に他ならず、自由恋愛など、もってのほか。

ひとたび政情が傾けば、あっけなく首を刎ねられ、人質として幽閉される。

スーパーセレブのイメージとは裏腹に、「今日も生きているのが不思議なくらい」のシビアな運命を背負い、権謀術策の宮廷で翻弄された彼女らの生き様を思うと、ウイリアム王子とケイト嬢の結婚は、まさに民主主義の進歩の証、法と人権に守られた現代社会の象徴といえるだろう。

エリザベス姫の生い立ちと時代背景

そんな英国も、エリザベス1世が即位し、強国スペインの無敵艦隊を撃破して、「ゴールデン・エイジ」を迎えるまでは、ヨーロッパ列強に翻弄される小さな島国に過ぎず、吹けば飛ぶような軍隊をやっと囲って、細々と食いつないでいるような状況だった。

しかも国内はカトリックとプロテスタントの宗教的対立に二分し、エリザベスの父王ヘンリー6世の死後、王位に就いた娘のメアリー1世は、熱心なカトリック教徒であったことから、国内のプロテスタント勢力を片っ端から血祭りにあげ、「ブラッディー(血まみれ)メアリ」と恐れられた。

政治的理由から、スペインのフェリペ2世と結婚したものの、夫婦仲は冷え切り、世継ぎもない。

そんなメアリの後ろに控えているのが、義妹にあたるエリザベス。

ヘンリー6世の2番目の妻で、不倫の恋の末に、先妻の王妃キャサリン・オブ・アラゴンを追放し、王冠を手に入れた卑しき女、アン・ブーリンの娘で、世間からは「淫売の子」と呼ばれている。

アン・ブーリンは、ヘンリー6世の不興を買ったこともあり、結婚後わずか2年で「魔女」の烙印を押され、ロンドン塔で首を撥ねられた。

そして、娘のエリザベスも、淫売と呼ばれた母と同じ運命を辿るのは明らかだったが、美しく聡明で、女王メアリに反発する多くの支持者を味方に付けたことから、生と死の綱渡りのような幽閉生活を見事に乗り切った。

一度は謀反の疑いでロンドン塔に捉えられ、義姉である女王メアリの前に呼び出されるが、どんな感情の変化か、女王はついに死刑宣告の書類にサインをすることなく病に没し、王位をエリザベスに譲ることになる。

とはいえ、国庫は空っぽ。

軍隊とは名ばかりで、国を守る要塞も、砲弾一つで砕け散るようなお粗末さ。

にもかかわらず、海を隔てた向こうでは、強国スペインとフランスが虎視眈々と英国の王座を狙っており、国内では、依然としてエリザベス暗殺を目論むカトリック派の反勢力が暗躍を続けている。

そんなエリザベスの身の安全を保証する手段はただ一つ。

結婚して、世継ぎをもうけることだ。

即位と同時に、様々な縁談が持ち上がるが、エリザベスは忠臣の話すらまともに聞こうとしない。

なぜなら、彼女はハンサムな貴公子、ロバート・ダドリー興に夢中だったからである……。

果たして、エリザベスの恋は実るのか。

何故、彼女は『私はイングランド(国家)と結婚した』という名言を残し、生涯独身を貫いたのか。

そのプロセスを、決してヒステリックになることなく、「恋に傷ついた女性」「国家という重大な責務を背負った運命の人」という視点で、ドラマティックに描いたのが映画『エリザベス』。

彼女の生き様は、女性の幸福とキャリアの狭間で揺れ動く現代女性にも十分に通じるはずだ。

映画『エリザベス』のみどころ

重すぎる責務とキャリアの第一歩

1998年、アカデミー作品賞にもノミネートされた映画『エリザベス』は、死刑宣告と背中合わせに幽閉生活を送る王女時代から、「処女王」を宣言し、名実ともに英国女王として玉座に就くまでの前半生を現代的に描いている。

エリザベスを演じたケイト・ブランシェットは、「ロード・オブ・ザ・リング」で森の奥方・ガラドエリルを演じ、最近ではインディ・ジョーンズ最終章で悪役の女将校や、「ロビンフッド」のヒロイン、マリアン役などで、若い層にも広く知られる個性の強い演技派。

キャサリン・ゼタ・ジョーンズやジュリア・ロバーツのような、「いかにもハリウッド女優」といった華やかさはないけれど、知性と気品、意志の強さが感じられ、私のお気に入りの一人である。

映画「エリザベス」では、ケイト・ブランシェットの瑞々しい美しさが、25歳の「駆け出し女王」の戸惑いや恋心を等身大で映し出し、従来の「王室もの」とはまったく異なるスタイリッシュな作品に仕上げている。

たとえば、恋人ダドリー興と愛し合った後、ベッドでぼんやりまどろんでいたら、いきなりノーフォーク公にカーテンを開けられ、スコットランドが挙兵した事を告げられる。

初めての国政。

ぼさぼさ頭で、ドレスの胸元も乱れ、まるで新卒の女子大生のごとき頼りなさ。

それでも「女王らしく」意見を述べ、英国の重鎮を前に英断を下そうとするが、老獪な側近を威圧してでも、自らの意志を貫き通す強さはまだない。

戴冠当時、国政の要であったウィリアム・セシルに重大な事態を告げられても、何をしていいのか分からない、エリザベス。
戴冠当時の重臣であったウィリアム・セシル

初めて大役についた若い女性の戸惑いと、「それでもやらねば」という気丈さが交互に現れる名場面。ケイトの演技力が素晴らしい。
戸惑うエリザベス

異議があるにもかかわらず、枢密院に押し切られる形でスコットランドに出兵したイギリスは、案の定、大敗を喫し、その中には少年兵も多数含まれていた。

その事実を、スコットランド女王メアリ・オブ・ギースからの「血まみれのフラッグ」で初めて知ったエリザベスは激しく動揺し、自らの弱さに打ちのめされる。

だが、そんなひ弱な彼女をじっと見守る一人の男があった。

フランシス・ウォルシンガム興。

後にエリザベスの腹心として、ゴールデン・エイジを支える老練な政治家である。

ジェフリー・ラッシュは私の大好きな役者さんの一人です。映画『シャイン』のデヴィッド・ヘルフゴッド役から注目しています。
エリザベスの資質に注目するウォルシンガム興

『処女王』の本当の意味 : なぜ彼女は国家と結婚したのか

強くならねばならない──。

この失敗を教訓に、英国の指導者としての責務を心に刻んだエリザベスは、強硬なカトリックの司教を相手に一歩も引けを取らず、まずは国内最大の問題である宗教対立を礼拝統一法によって収める。

そうして、自らの権力を意識し、女王としての道を一歩ずつ歩き始めるエリザベスではあるが、一方で女性としての幸福を望む彼女に衝撃の事実が打ち明けられる。

“相思相愛の恋人”であるはずのダドリー伯爵は既婚者だったのだ。

自尊心を激しく傷つけられたエリザベスは、公の前で「私は男妾を一人もつことにします。結婚はしません(オリジナルでは I have no Master. 誰にも仕えぬ、誰の者にもならぬ、という強いニュアンス)」と宣言し、絶対君主としての道を駆け上ってゆく……。

いわば「現代キャリアウーマン」の苦悩ともいうべき演技と作風に、共感する若い女性も多いだろう。

非難が渦巻くのは必至の礼拝統一法をはかる議会で、女王としてリーダーシップを執るために、私室で何度も何度も演説の練習をするエリザベスの姿は、まるで社運を賭けたプレゼンテーションを前にした女性管理職のようだし、望まぬ結婚を押しつけられ、「政治か、恋か」を迫られる場面も、若い女性の胸に切なく響く。

歴史の教科書で、「独身主義のコワイおばさん」ぐらいのイメージしかなかった人も、この映画を見れば、エリザベスも一人の恋する乙女であり、女性らしい葛藤や心の傷を乗り越えて、運命に打ち克った人物であることが分かるはずだ。

25歳の戴冠式。

現代の日本なら、お洒落に、恋に、OLライフを楽しんでいるお年頃である。

会議のリハーサル。老獪な政治家らにやり込められるのを覚悟して、溜め息ついたり、頭を抱えたりする姿は現代のキャリアウーマンと同じ。

007でブレイクする前のダニエル・クレイグ。既に暗殺者の貫禄がありますね。

様々な苦難を乗り越え、女王の道を突き進むエリザベスの前に、さらなる試練が訪れる。
なんと、相思相愛だったダドリー興が、エリザベスの暗殺計画に携わっていたのだ。

「女王に恋することは、男の心を腐らせる」というダドリーの言葉は、キャリア志向の女性を配偶者にもつ男性の心理を見事に表しているのでは。

本来なら死刑に相当する重罪であったが、エリザベスは彼を殺さず、生かすことを選ぶ。
それは決して恋の憐憫ではなく、「最大の脅威は自分の身近に潜んでいる」という現実を自らに戒める為だ。

かくして、エリザベスは『処女王 Virgin Queen』の道に身を投じる。

そして、よく誤解されることだが、エリザベスのいう『Virgin』とは、処女=男性経験なし、という意味ではなく、『The Virgin=聖母マリア』のことである。

エリザベスが目指したのは、聖母マリアのように、『国民の心の支え』『敬愛の対象』になることであり、「私に男は不要です」みたいな、オールドミスの恨み節とはまったく異なる。

国家の要となり、強い心で国民を導くには、もう二度と、愛やら結婚に惑わされない覚悟が必要であり、また内外にそれを宣言することによって、他国の政略を牽制する目的もある。

髪を切り、顔を白塗りにするのも、女性の強い決意の表れであると同時に、自分を神格化する為であり、決して、「結婚できないなら、一生、独身でいいです」みたいなヤケクソとは訳が違うのだ。

それにしても、ジョセフ・ファインズは、涙を浮かべる惰弱な英国男性を演じさせたらピカイチですね。
ジェレミー・アイアンズ(参照:映画『エム・バタフライ』)といい勝負してます。ジェレミーの方がもっと情けなく、退廃的ですけど^_^;

DVDとノベライズの文庫本

映画のDVD

英国王ヘンリー8世と愛人の間に生まれたエリザベス。腹違いの姉、メアリー女王の死後、弱冠25歳で英国王女に即位。側近でさえも誰が敵か見方か分からない中で、恋人のダドリーが唯一彼女の心の支えだった。スキャンダルの的となりながらも、毎晩逢い引きを重ねる中で、国内の宗教争いは激化し英国史上最大の危機に直面。彼女を失脚させようと、時の権力者ローマ法王をはじめ、全ヨーロッパから忍び寄る暗殺指令と陰謀の影――。アカデミー賞7部門にノミネートされ、様々な主演女優賞を総ナメにした歴史ロマン。

出演のケイト・ブランシェットの知的な演技もさることながら、娘時代の情熱のすべてをささげた恋人・ダドリー興を演じたジョセフ・ファインズ(同じ英国時代もの「恋におちたシェイクスピアも秀逸)」のスウィートな雰囲気も素敵。この方は現代風のハンサムでありながら、カボチャ・パンツや襟巻きトカゲのようなコスチュームが似合う。

また、反対勢力の諜報活動や暗殺を一手に引き受け、エリザベス政権を支えたウォルシンガム興を演じるジェフリー・ラッシュの怪しくも逞しい存在感。(私の大好きな俳優さんの一人。数奇な運命を辿った名ピアニストを演じた「シャインも素晴らしかった。最近では「英国王のスピーチ (コリン・ファース 主演) 」で再び熱い注目を浴びている)

保守的で、お節介オヤジのようにエリザベスの世話をやく忠臣ウィリアム・セシルを演じたリチャード・アッテンボローの好々爺ぶりも見逃せない。

ついでに、この映画には、バチカンから遣わされた暗殺者として若かりし日のダニエル・クレイグが出演している。人気のない聖堂を、黒いマントを翻しながら、殺意を秘めてエリザベスの方に向かってくる場面は、さすが「21世紀のジェームズ・ボンド」と唸りたくなるほど。拷問の場面も、カジノ・ロワイヤルみたいだった。(これを演じた時、ダニエル・クレイグも、自分が21世紀のボンドになるとは夢にも思わなかっただろう)

華麗にしてスタイリッシュな演出は、時代もの苦手な女性もきっと気に入ると思う。必見。

エリザベス [Blu-ray]
出演者  ケイト・ブランシェット (出演), ジェフリー・ラッシュ (出演), ジョセフ・ファインズ (出演), クリストファー・エクルストン (出演), リチャード・アッテンボロー (出演), シェカール・カプール (監督)
監督  
定価  ¥980
中古 14点 & 新品  ¥700 から

小説『エリザベス』

ヘンリー8世と愛人アン・ブーリンとの娘エリザベスは、3歳で母が処刑され、私生児の烙印を押された。21歳の時には、反逆罪の疑いでロンドン塔に幽閉された。しかし数々の陰謀や暗殺の恐怖に怯えながらも、鋭い判断力と英知で男たちを操り、25歳で自ら女を捨て、国家のために生きることを決意する──。華麗な筆致で綴られた映画の原作。

いわゆるノベライズ本。解説にもあるように、ここに描かれたエリザベス1世はドラマティックに味付けされており、史実というよりは小説として楽しんだ方がいい。とはいえ、実在のエリザベスからまったくかけ離れているわけではなく、「きっと、こんな思いだったろうな」と納得できる内容。映画では描ききれない繊細な心の内や政情などが丁寧に綴られているので、ぜひ合わせて読んで欲しい。翻訳も素晴らしいです。

映画『エリザベス・ゴールデンエイジ』

数奇な運命を背負いながらも、25歳でイングランド女王に即位したエリザベス。女王として国を愛し、ひとりの女性として男を愛した彼女は、イングランドの黄金期を築いていく。しかし、その道程は波乱と混乱に満ち溢れたものだった。エリザベスの転覆を狙う者だけではなく、ヨーロッパ列強のイングランド占領を狙う者達の策略や陰謀が渦巻いていた・・・

『エリザベス』の続編として2009年に公開され、さらに成長したケイト・ブランシェットの魅力が随所に光る。

ヴァージン・クイーンの道を選んだエリザベスが、心惹かれる男(ウォルター・ローリー興)に出会って、女性らしい葛藤を見せる場面はちょっと少女漫画チックだが、本物と見まごうばかりのノーブルかつ力強い存在感はさすが。

制作サイドは、エリザベスの後世を描いた最終章を企画しているそうで、ぜひ実現していただきたい。


これが有名な『ティルベリーの演説』。
Youtubeで字幕付き出ていますが、日本語訳や歴史的背景もネットにたくさん情報が出てますので、ぜひ検索して下さい。


映画のDVD

ケイト・ブランシェットのファンは必見だが、前作に比べたら、ちょっと消化不良な点が。
クライマックスの『アルマダ海戦』も、案外、あっさり終わって、淋しかった。

ケイトの演技は素晴らしいが、隠れてローリーと結婚した若い侍女を平手打ちするシーンは不要だったんじゃないかと。
まるで嫉妬に狂うヒステリーおばさんみたいで、そこだけがマイナス・ポイント。

エリザベス:ゴールデン・エイジ [Blu-ray]
出演者  ケイト・ブランシェット (出演), ジェフリー・ラッシュ (出演), クライヴ・オーウェン (出演), サマンサ・モートン (出演), シェカール・カプール (監督)
監督  
定価  ¥980
中古 14点 & 新品  ¥980 から

ノベライズの文庫本

世界中で大ヒットした「エリザベス」から9年、遂に続編が完成。生涯独身を貫いたエリザベス1世と探検家ローリー卿との恋愛、スコットランド女王メアリーとの確執などエリザベスの波瀾万丈の人生を描く。

こちらもノベライズ。すっかり女王としての貫禄を身につけたエリザベスだが、女の身には重すぎる責務もある。
スペインの無敵艦隊が刻々と迫る中、彼女は歴史を味方に付け、英国を守ることができるのか──。
これも読み応えのある作品。

 エリザベス:ゴールデン・エイジ (ソフトバンク文庫) (文庫)
 著者  ターシャ・アレグザンダー (著), 野口 百合子 (翻訳)
 定価  ¥1
 中古 23点 & 新品   から

ブーリン家の姉妹

エリザベスの出生を知りたければ、ナタリー・ポートマン&スカーレット・ヨハンソンが恋の火花を散らす「ブーリン家の姉妹」がおすすめ。

時代は、ヘンリー8世の治世。

スペイン王室から嫁いだ女王キャサリン・オブ・アラゴンがまたも男児を死産する場面から始まる。

いずれ国王には愛人が必要になると読んだノーフォーク公は、若く美しい姪のアン・ブーリンを差し出すが、王の心を捉えたのは、優しく控えめな妹のメアリーだった。

王の公認の愛人として床を共にするようになったメアリーは程なく妊娠するが、彼女の身体から遠のいた王は、妖艶なアンの魅力に取り憑かれ、待望の男児を授かったにもかかわらず、メアリーとその子を宮廷から遠ざけてしまう。

その後、王の寵愛を一身に集めるようになったアンだが、彼女の野望はそこで終わらない。

本当に愛しているなら「愛人」ではなく「正妻」として迎えることを王に強く迫り、ついにはローマ・カトリックに背いて、正統な女王キャサリン・オブ・アラゴンを離縁させる。

念願の王冠を頂いたアンだが、国民からは淫売と呼ばれ、彼女の背後には、次なる愛人の座を狙うジェーン・シーモアの存在もあり、その地位は決して安泰ではない。

身の安全を保証する道は、唯一つ。

男の世継ぎを産むことだ。

だが、アンが授かったのは、男児ではなく、女児のエリザベスであり、次の子供は流産してしまう。

男の世継ぎが産めない焦りと、王の心変わりから、アンは次第に追い詰められ、ついには実弟と交わろうとするが、最後の最後に、ようやく理性を取り戻し、王に流産の事実を告げて、慈悲にすがることを決心する。

だが、そうするには遅すぎた。

彼女に反感を抱く廷臣らの策略もあり、すでに心も冷え切った王は、アンを魔女として裁きの場に突き出すのだ――。

この映画の見どころは、女性として対照的な生き方をするアンとメアリー姉妹を、演技派のナタリー・ポートマンとスカーレット・ヨハンソンが、それぞれの持ち味を生かして、そつなく演じている点だ。

ヘタすればドロドロの愛憎劇になりそうなところをあまり深く突っ込まず、二大女優の雰囲気だけで葛藤を表現しているので、全体に重くなく、見終わった後もけっこう爽やか。

ベストセラーとなった原作の方は、アン、メアリー、そして王妃キャサリン・オブ・アラゴンの思いや生き様を非常に詳細に描いており、読んでいてしんどくなる箇所も多いが(文章がダメという意味ではなく、アンの思い込みの激しさに疲れてしまう)、映画は三角関係のトレンディ・ドラマのようなノリで、一気に物語が運ぶ。

重厚な歴史ドラマを期待している人は肩すかしを食らうかもしれないが、二大女優の華麗なコスチュームや、大奥のようなシチューエーションを楽しみたい方にはおすすめ。

英国の歴史って、やたらと「メアリー」が登場するので、どれがどのメアリーなのか、訳がわからないが、この作品を観れば、エリザベス誕生の背景が手っ取り早く理解できると思う。

どちらかといえば女性向けの作品だが、二大女優の色香を堪能したい男性ファンにも強くおすすめ。


映画のDVD

愛したのは同じ“一人の男”。妹はただ王を愛し、姉は王妃という地位を望んだ・・・

最初から狙う気ムンムンのアン=ナタリー・ポートマンよりも、慎ましい主婦の顔をもつメアリー=スカーレット・ヨハンソンの方がやはり好感度が高い。
とはいえ、アンの象徴的なグリーンのドレスは素敵だし、ヘタないきみでルークとレイアを出産した作品より演技としては上等ではなかろうか。
ヘンリー8世を演じたエリック・バナのセクシーな眼差しも見逃せない。
ドラマとしての深みは少々物足りないが、濃度の高い原作を上手にまとめていると思う。

ブーリン家の姉妹 [Blu-ray]
出演者  ナタリー・ポートマン (出演), スカーレット・ヨハンソン (出演), エリック・バナ (出演), ジム・スタージェス (出演), マーク・ライアンス (出演), クリスティン・スコット・トーマス (出演), デビッド・モリッシー (出演), ジャスティン・チャドウィック (監督)
監督  
定価  ¥4,200
中古 3点 & 新品   から

16世紀イングランド。新興貴族ブーリン家の姉妹、アンとメアリーは、たちまち国王ヘンリー8世の目を惹く存在となる。立身出世を目論む親族の野望にも煽られて、王の寵愛を勝ち取る女同士の激しい争いが幕を上げた!王の愛人となったのはメアリー。その座を奪ったうえ、男児の世継ぎをつくることのできなかった王妃までもを追い詰めるアン。英国王室史上、最大のスキャンダルを描いたベストセラー。

これは予想以上に面白かった。翻訳も上手い。
男性読者には、女同士のドロドロがかったるいかもしれないが、女性が読めば、どれもこれも納得するはずだ。
とりわけ、王の寵愛を得て、王妃キャサリン・オブ・アラゴンを追放するまでの5年間、「もう疲れたわ! 世界で一番幸せな振りをするのは、もうたくさん!」とメアリーに八つ当たりするアンの叫びは、愛が手段にすりかわった女の嘆きそのものである。
王冠を賭けた略奪愛は、一人の女が支配するには、あまりに重すぎたのではないだろうか。

映画『クイーン』 ダイアナ妃の死とエリザベス二世

時代は一気に現代へ。

『王族』と言えば、宝塚歌劇団のようにキンキラキンのドレスを身につけ、いつも頭のてっぺんに大きなダイヤのついた王冠をかぶっていて、着替えも食事も、すべて召使いまかせ……というイメージがあるけれど、現代にもなれば、それはお伽噺の世界。

現代のロイヤルファミリーは、家族で川辺にでかけ、グリルを楽しんだり、ベッドにもぐってTVを見たり、女王さまは自ら四駆を運転してお出かけになったり、庶民の暮らしと変わらない。

しかも、大衆は王族にも言いたい放題だし(昔なら火あぶり、縛り首)、20世紀の議会制では、女王より首相の方がはるかに多くの実権を有し、議員の決定には女王さまだって逆らえない。

そんな現代において、女王は何を想い、何に悩むのか。

その一面を上品に描いたのが、ダイアナ妃の葬儀をめぐるエリザベス二世の葛藤を描いた『クイーン』だ。

現在もご存命の『エリザベス二世』を演じたヘレン・ミレンは、本物と見まごうばかりの容姿もさることながら、知的でエレガントな演技が高く評価され、幾多の主演女優賞を総なめにした。

また、同時期、首相であったトニー・ブレアを演じたマイケル・シーンも、労働党の党首らしい、「庶民派首相」を軽妙に演じ、国難を救ったヒーローのように描かれているのも一興。

(参照→『フロスト×ニクソン』アメリカ国民を釘付けにした伝説のTVインタビュー

私も、ダイアナ妃の交通事故をリアルに体験した世代だが、あの時、メディアの大半は、ダイアナ妃の側から事実を伝え、王室側の葛藤には踏み込んでいない。

それを如実に描いたのが本作であり、よく英国王室がOKを出したな、と思わずにいないほど。

ダイアナ妃の死は、チャールズ皇太子と正式に離婚が成立し、王室を抜けてからの出来事なので、王室としてはその位置づけに悩むところだ。

「王族として弔うか」、それとも「私人として弔意を示すか」、判断を誤れば、国民の憎悪に火を注ぐどころか、王室解体まで一気に話が進みかねない。

生前から、ワイドショーに積極的に出演して、王室の恥部を喋りまくるダイアナ妃の存在は腫れ物のようでもあったから、王室側の困惑や葛藤も頷ける話である。

それにしても、女王とはなんと孤独な存在なのか。

大衆に罵倒されても、ぐっと堪えて、ひとり涙を流すしかない。

「私だってこんなに苦しんでいるのよ」と情に訴えるわけにもいかず、女王として国民が納得するような決断を下さなければならない。

しかも、王族に「謝罪」も「撤回」もなく、その決断は常に“絶対”である。

世界中が英国王室……しいては、エリザベス二世の決断を見守る中、映画のエリザベス女王は、当時国民に人気のあったブレア首相と密に連絡を取りながら、万人にとって最前の答えを模索する。ちなみに、労働党という、王制とは真っ向から対立する党首が、次第に王室の苦難を理解し、批判する側から支える側に移り変わっていく様子も面白い。

どれほど苦悶しようと、王者の威厳を忘れない『クイーン』の姿に、「律する」ということを改めて考えさせられた。

女王になるのは宿命だが、「女王でいること」は強い意志なくして出来ない。

現代には現代の王の務めがあり、苦悩があることを感じさせる秀作である。

映画のDVD

1997年5月、労働党のブレアが選挙で勝利をおさめ、エリザベス女王はブレア首相を承認する。同年8月、チャールズ皇太子との離婚後も国民的人気を誇っていたダイアナが、パリ滞在中、交通事故で急逝。ニュースはロイヤルファミリーにも伝わり、チャールズ皇太子は王室機でパリに飛び、ダイアナを英国に連れて帰ろうとする。離婚したとはいえ、将来、国王となる息子にとって、彼女は母親なのだ。最初は「ダイアナは民間人。国事ではない」と王室機の使用を禁じた女王も、チャールズの説得に折れた。しかし、彼女は決して、ダイアナの死について公的なコメントを出さず、これが国民の反感を買った。国民は女王は冷徹だと非難し、彼女は孤立。そんな女王を救ったのは、新首相ブレアだった。

ヘレン・ミレンの気高い演技もさることながら、若き首相ブレアを演じるマイケル・シーンの軽やかな存在感もいい。
相手が女王であることを十分に意識しつつも、民意の代表としての立場を貫き通すブレア。
その駆け引き、人間としての触れ合いが、本作を見応えのあるものにしている。
ロイヤル・ファミリーの私生活や、ダイアナ妃をめぐる王室の葛藤など、興味のある方におすすめ。

ちなみにヘレン・ミレンの作品はこちらもおすすめです。
エセ文化人が美と知性を滅ぼす 映画『コックと泥棒、その妻と愛人』

クィーン [DVD]
出演者  ヘレン・ミレン (出演), マイケル・シーン (出演), ジェイムズ・クロムウェル (出演), スティーヴン・フリアーズ (監督), ピーター・モーガン (脚本), ヘレン・ミレン (Unknown)
監督  
定価  ¥9,980
中古 5点 & 新品  ¥923 から

おまけ 『ふたりの女王 メアリーとエリザベス』

2018年公開の米英・合作映画。

題材は申し分ないのに、ふたりの女王の描き方がいまいちで、何を伝えたいのか分からない、中途半端な作品。
ふたりの女王にとって、「結婚」「出産」が国家にとっても重大な意味をもつのは確かだけど、描き方がちょいと下品で、まったく感情移入できなかった。
映画『エリザベス』の出来映えが素晴らしいだけに、本当に残念。
国家を担う女王同士の対決というよりは、キャットファイトみたいな印象で、もう少し、国家の長らしい葛藤や威厳が欲しかったですよね。

興味のある方はプライムビデオでどうぞ。

初稿 2011年4月22日

Photo : http://www.simbasible.com/elizabeth-movie-review/elizabeth-movie/

この記事を書いた人

石田 朋子のアバター 石田 朋子 サイト管理人

作家・文芸愛好家。80年代サブカルチャーの大ファン。普段はぼーっとしたおかあさんです。昭和の名作漫画はほとんど空で台詞が言えるほどの元祖ヲタ。車と猫が大好きな東欧在住。サイトでは作品紹介ではなく、作品を題材とした文芸コラムを掲載しています。

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