ヒエロニムス・ボッシュ

人間の想像力は悪に傾きやすい

ヒエロニムス・ボッシュ

ずっと以前、カウンセラー講座に通っていた時、心理学の先生から面白い話を聞いたことがある。
悪役専門の俳優さんが、新境地を開く為、善良な役を引き受けるようになったら、舞台は好評にもかかわらず、私生活ではノイローゼになってしまった、という話だ。

おそらく、この俳優さんは、舞台で『悪』を演じることによって、無意識のうちに心のバランスを取っていのだろう。悪を表出する場所を無くして、ノイローゼになるのも頷ける話である。

昔から、「性善説」「性悪説」の考えがあり、仏教のように「人間の本性は仏である」という教えもあれば、キリスト教のように「人間は生まれながらに罪深い」という教えもあり、どちらがどうとは言い難い。

いずれにせよ、人間が善と悪の両面を備え、人の一生はすなわち光と闇の戦いであるという考えは、全世界共通のように思う。

何だって、突然、こんなことを書き始めたかというと、TVでオンエアされていたアーノルド・シュワルツネッガー主演の映画で、テロ組織のボスが、へまをやらかした部下の口を金具でこじ開け、大きな毒蛇を丸飲みさせて殺害するという、とんでもないシーンを目にしたからだ。

似たような話で、敵に捕らえられた主人公の恋人が、小さなハツカネズミを生きたまま丸飲みさせられ、体内でもがき苦しむハツカネズミが、やがて内臓を食い破って、お尻の穴から出てくるという、えげつないシーンも別の映画で見たことがある。

ヨーロッパあたりを旅行すると、観光地の旧市街にしばしば『拷問博物館』なるものがあり、中世に実際使われた拷問室や拷問器具が展示されていることがある。

針だらけの棺桶に人間を閉じこめる『鉄の処女』や、煮えたぎった鉛を飲ませる為の金属製のジョウロ、お腹の一部を切開し、そこから腸を巻き上げる為の拷問台など、よくもまあ、これだけ残酷な事を思いつくものだと感心するぐらい、いろんな器具がある。

前に読んだ美術書に、『地獄に関しては、生き生きと描かれた名画が多いが、天国を描いた秀作は呆れるほど少ない』という一文があったが、私もまったく同感だ。

人間というものは、悪い事、他人を痛めつける事については、驚くほど想像力が働くものらしい。

初稿:2003年12月4日

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