受験生の心の友 深夜ラジオと笑福亭鶴光の『オールナイト・ニッポン』

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受験生の心を支えた深夜ラジオ番組

その昔、インターネットなどというものが無かった時代、受験生、もしくは試験前の学生は、AMラジオを聴いて自らを慰めていた。

モノラル・スピーカーの向こうから時々ノイズ混じりに聞こえる、中島みゆきお姉さまや、タモリのおじさま、笑福亭鶴光のヒワイな笑い声などが、学校生活に疲れた若者の憩いだったのだ。

深夜ラジオのパーソナリティー達は、恋の悩みを聞き、受験生の愚痴に共感し、どこの誰かも分からぬ何万という学生リスナーを励ましてくれた。

当時も、若者たちは孤独だったが、現代のように、周囲から完全に隔絶されたような『孤立感』はなかった。

「誰も分かってくれない」――けれど、“分かってくれない気持ち”を分かってくれる人はいた

それが、中島みゆきや、タモリや、笑福亭鶴光ウといった、深夜ラジオのパーソナリティーだ。

深夜、家族が寝静まってから、AMラジオのスイッチを入れれば、みゆきお姉さまが励ましてくれるし、タモリのおじ様がバカなジョークで世事や受験戦争を茶化してくれる。

暗い部屋に独りぼっちではあるけれど、そこには確かに「温もりをくれる誰か」が居たのである。

だから、中学生も、高校生も、眠いにもかかわらず、深夜1時まで粘り、10分でもいいからラジオを付けた。

リスナーからの葉書に、今、この瞬間にも、同じように闘っている、全国何千、何万の同志の存在を感じ取ることができた。

孤独ではあったけれど、一つの周波に結ばれた連帯感があったのだ。

とりわけ、オールナイト・ニッポンのオープニング・ソング、「チャラッチャ、チャッチャララ、チャッチャチャ」というトランペットのメロディが流れると、「ああ、今日も頑張った」という気分になり、ほっこりと眠りに就くことができる。

そして、午前一時まで持ち堪えることのできなかった学生は、翌日、放送を聞いた同級生から話を聞いたり、放送を録音した知人からテープを借りたりして、リスナーの輪に加わった。

それまで一度も口を聞いたことのない隣のクラスの子と、テープの貸し借りを通じて、仲よくなったこともある。

テレビも面白かったけど、深夜ラジオはそれ以上だった。

何せ、聞く人が少なくて、夜の仕事の人と、学生御用達みたいな番組だから、エロ、パロディ、皮肉、何でもありだったからだろう。

そんなオールナイト・ニッポンの看板とも言うべきオープニング・ソングを作曲したのが、ジャズ・トランペットの巨匠、ハーブ・アルパートだ。

この曲が、ハーブ・アルパートの初期のヒット曲『ビター・スイート・サンバ』だと知ったのは、高校生になってからだ。

当時、『ライズ』『ビヨンド』など、ハーブの曲を起用したTVコマーシャルが流れていたこともあり、彼のレコードを聴いてみたら、お馴染みの『チャラッチャ チャッチャララ チャッチャラ』という曲が収録されていたのである。

世界のハーブ・アルパートも、まさか自分の楽曲が深夜番組のオープニングに使用され、多くの若者が日本のラジオ曲のオリジナル・ソングと勘違いしているなどと夢にも思わなかっただろう。

今、聴いても、この能天気なサンバは、『オールナイト・ニッポン』の世界観にマッチしていたと思う。

鶴光の『オールナイト・ニッポン』

ちなみに、私がよく聴いていた土曜の深夜の『鶴光のオールナイト・ニッポン』は、ほんとにハチャメチャだった。

今でも忘れられないのが、プロの女性声優にAVのような演技をさせ、最後のオチはダジャレという『夜のミッドナイト・ストーリー』。

たとえば、国民の誰もが知っている子ども向けアニメの主演女優さんの時は、こんな感じだった。

声優さん 「おじいさん、その太いものを入れて、いっぱい掻き回して」
鶴光 「ほぅら、こんなにトロトロしてきたよ。次は何が欲しいか、言ってごらん……」
声優さん「あ~、おじいさん、もっと入れて、いいわ、最高」

最後のオチ 「あー、すき焼きって、本当に美味しい♪ 特にトロトロの卵と白ネギが」。

今ならクレームどころか、確実に仕事をなくすと思う (・∀・)

あと、もう一つ、面白かったのが、ダジャレの「悪魔の足跡」のコーナー。

ホラー音楽をバックに、鶴光がおどろおどろしい声でリスナーの投稿を読み上げるもので、オチは決まってダジャレ。

「ある日、僕は友人と、禁断の森に出かけた。真っ暗な森の中で、不気味な足跡を見つけた。すると、僕の友人が言った」

「あ、熊の足跡」

チャリラリラ~みたいな。

今でも強烈に覚えているのが、『鬼婆が取り憑いた話』。

夕暮れの中、ボクが一人で道を歩いていると、向こうの方から気味の悪い老婆がやって来た。
老婆はイヒヒと笑いながら、遠くを指差し、
「あそこにいる、イヌを見てごらん」
と言った。

老婆の指差す方を見た時、ボクはとっさに叫んだ。

あ、あのイヌ、尾にババがついてる!

「鬼婆」と「尾にババ(ウ○チ)」をひっかけた大阪風ダジャレですね。

それでも、こんなアホなトークで4時間も持たせていたんですから、大阪の芸人というのはホンマに凄いです。

あと、下品なネタで申し訳ないが、このギャグも忘れられません。

 秋空に
 いわしぐもが
 浮かんで
 ええ乳しとりまんな~
 おなごの世話しとくんなはれ

※追記 現代はYouTuberがラジオのパーソナリティ代わりなのかもしれないですね。

初回公開日 2008年11月30日

この記事を書いた人

石田 朋子のアバター 石田 朋子 サイト管理人

作家・文芸愛好家。80年代サブカルチャーの大ファン。普段はぼーっとしたおかあさんです。昭和の名作漫画はほとんど空で台詞が言えるほどの元祖ヲタ。車と猫が大好きな東欧在住。サイトでは作品紹介ではなく、作品を題材とした文芸コラムを掲載しています。

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