私は『北斗の拳』の伝承者争いのエピソードが好きで、キャラクターで言えば直情型の長男ラオウ、技で言えば、北斗究極奥義『無想転生』が好きなんですよネ。
なぜか全巻持っているので、家に来た人がいつもビックリするのですけど。(それも愛蔵版^^;)
「伝承者争い」の巻は、原作者 武論尊の哲学が随所に散りばめられていて、非常に面白い作品に仕上がっています。
暗殺拳「北斗神拳」は、その恐るべき破壊力ゆえ、一子相伝の秘拳として伝えられてきました。
伝承者争いに敗れた者は、記憶を奪われたり、身体を不具にされたりして、拳を封じられるのが定めでした。
核戦争で世界中が荒野と化した時代、北斗神拳の伝承者として、町にはこびる悪者どもを倒しながら、生き別れになった最愛の女性ユリアの面影を支えに、旅を続けるケンシロウ。
その彼の前に、かつて伝承者争いをした三人の兄弟が立ちはだかります。
一人は、ケンシロウに敗れた事を怨み、暴挙の限りを尽くす三男ジャギ。
一人は、優れた医術を会得しながら、核の灰を浴びて、病の身となった次男トキ。
あと一人は、世界最強を自負し、この世の全てを手中に収めるべく猛進撃を続ける長男ラオウです。
死闘の末、ケンシロウはラオウに打ち勝ち、真の伝承者への道を歩き出すのですが、その過程で語られる心情や、兄弟間の葛藤や個性が、実に面白いんですよ。
ちなみに私は三人姉妹の真ん中で、姉でもあり、妹でもあるから、それぞれの心理がよく分かる。
だから惹かれた部分も多いですね。
兄弟間の争いで一番象徴的に感じたのが、愚かで救いようのない三男ジャギの恨み言。
『兄より優れた弟なんて~~~』
兄より弟が優れたって、それは仕方のないこと。
なんでもかんでも兄貴が上とは限らないのに、ジャギは伝承者の権利を末弟のケンシロウに奪われたと、いつまでも怨みに取り憑かれています。
これによく似た実例が、兄弟横綱で一世を風靡した『若ノ花・貴ノ花』ですよね。
厳しい目で見れば、兄の若ノ花より、弟の貴ノ花の方が、力士としては上なのは明白でした。
というより、幼少から真剣に力士を目指した貴ノ花と、何となく流れで力士になった若ノ花の、気持ちの差が現れたというべきでしょうか。(当人に直接聞いたわけではないので、推測だけれども)
若ノ花が、あっさり相撲界から身を引いたのも頷ける話で、人にはそれぞれ自分に適った道というものがある。
『北斗の拳』でも語られていますが、
「同じ道を進めば、同じ宿命を背負う。兄弟ならば、違う道を歩むがよい」(確かラオウの台詞)
って、ある意味、真実だと思います。
初稿:2000年12月22日
※ トキとラオウの死闘って、どの巻に収録されていたのか忘れた。確かこのあたり。