エメリッヒ監督のQUO VADIS(主よ、どちらに行かれるので?)
ローランド・エメリッヒ監督のことは決して嫌いではない。
私の中では、「デザスター(災害)」の好きなオジーと位置付けられ、初出の『インデペンデンス・デイ(1996年)』も、ケツの穴のような巨大UFOを存分に楽しませてもらった。
続く『2012年(マヤ文明が2012年に世界滅亡を預言していたという有名な与太話を元に制作)』や『デイ・アフター・トゥモロー』でも、豪快な破壊っぷりに目が点になったし、津波がエベレスト山頂を越えて、チベットの山寺に押し寄せる場面は今でも好きですよ。あの鐘つき坊主がどうなったか、誰も教えてくれませんけど。
惜しむらくは、豪華特撮も、何度も目にすると、だんだん慣れてしまって、しまいには驚かなくなること。
そして、助かるのはいつも善人で、我先に逃げ出す悪人は、高波に呑まれたり、道路の亀裂に落ちたり。
そりゃ、映画だから、我先に逃げ出す悪人が燃えたり、墜落したりするのは、お約束ゴトなんだけど、「この人もどうせ……」とか思うと、全ての先が見えてしまって、何の楽しみもなくなってしまうのです。
そして、ついに2016年。
あの傑作の続編が公開されると知りましたけど、最初から期待はしてませんでした。
なぜって、エメリッヒ監督だから。
きっとまた、ああなって、こうなって、オチはこうで……と思っていたら、本当にその通りで、なんだかんだでエメリッヒ作品とお付き合いしてきた私としては、一言、言いたくなるんですよね。
QUO VADIS ? (主よ、どちらに行かれるので?)
→ 暴君ネロの迫害から逃れようとした聖ペテロが夜明けの光の中でイエス・キリストの姿を目にし、問いかける言葉。その後のペテロとキリスト教の運命を示唆する場面として有名です。
なんか、どうも、ゴジラでこけてから、拍子抜けしたというか、何かを見失ったような感がなきにしもあらず。
また、どかんと、面白いのを作って欲しい。
ちなみに、私はエジプト文明と融合したとんでもSF『スターゲイト』の頃からの付き合いです。(TVシリーズじゃなくて、カート・ラッセル主演の映画の方)
※ スターゲイトは面白かった。発想も、キャラの造形も、ユニークでした(^^)v
映画『インデペンデンス・デイ:リサージェント(復活)』
クリントン大統領の時代、火星人型エイリアンの巨大円盤の襲撃から「20年後」を設定した『インデペンデンス・デイ:リサージェント(復活)』を観ました。
周囲の評判通り、特撮は凄いけど、ストーリーはいまいち。
Amazonのレビューも散々で、完全に期待外れの続編になってしまいました。
完敗の理由は、『ヒーローの不在』でしょう。
前作は、ヒラー大尉(ウィル・スミス)という魅力的なリードキャラクターがいて、それに引っ張られる形で、皆が一丸となって反撃しましたが、今回は、リードキャラクターの印象も薄いし、ヒラー大尉の息子や、ホイットモア大統領の娘や、前作に引き続きのIT担当のデイヴィッドや、マッドな科学者や、主要人物が複数存在して、誰の目線で描かれているのか分からない。
あちこちで話が同時進行する上、その度に流れが途切れ、盛り下がってしまう。
せっかく前作のキャラクターを引き継ぎながら、それがまったく活かせず、私でも思い付きそうなおとり作戦で、エイリアン・クイーンをおびき出し、クイーンが倒れた途端、手下たちはすごすごと引き揚げるという、ずっこけぶり。
特撮が凄いだけけに、物語の荒さが浮き立ったという感じ。
私としては、ジェフ・ゴールドブラムの面変わりに、ただただ「時の流れ」を痛感するばかり。
ああ、あれから20年も経ったんだなぁ……と、観客を落ち込ませてどーする!?
これは ヒラリー will be を想定した女性大統領の設定か。でも、現実の大統領選は映画を遙かに超えましたよね^^;
トランプさんも、これくらい人を集めたかったろうに。
唯一の救いは、マッドな科学者の昔と変わらぬ笑顔。
エイリアン・クイーンも、既にジェームズ・キャメロンが『エイリアン2』で強烈なインパクトを残しましたから、真新しさは無し。
もう少し、ひねりが欲しかった。おまけに、あんまり怖くない・・(T^T)
Wikiによると
低評価・興行的な失敗に対して、後に監督のローランド・エメリッヒは「僕は『インデペンデンス・デイ: リサージェンス』を作るのをやめるべきだった。なぜなら、僕たちの手にはずっといい脚本(=ウィル演じるヒラー大尉をメインに据えたバージョン)があったんだ。だが、ものすごく急いで別の脚本を形にしないといけなくなった」「僕はただ『ノー』と言うべきだった」と製作を後悔していることを語った[14]。
私も、ヒラー大尉(ウィル・スミス)をもう一度、登場させるべきだったと思う。
というわけで、1996年の前作を振り返ってみよう。
『インデペンデンス・デイ』(1996年)の魅力
リサージェントに比して、前作『インデペンデンス・デイ(1996年制作)』の面白かったこと。
最大の功績は、主人公のヒラー大尉を演じたウィル・スミスでしょう。
私の記憶する限り、アフリカン系の俳優がアクション大作の主人公を演じたのは本作が初めてではないかと思います。
もちろん、それ以前にもアフリカン系の俳優が主役を務めることはありましたが、ヒューマン・ドラマだったり、コメディだったり、少なくとも一級のアクション映画のヒーローとして登場したことは無かったように記憶しています。エディ・マーフィーもコメディ系ですしね。(違ってたらゴメンナサイ)
また、当時の映画雑誌に、エメリッヒ監督のコメントとして、「『落ちこぼれが世界を救う』がテーマだ」と紹介されていたのが今も記憶に残っています。(20年前の事なので、定かでないが)
実際、本作で活躍するのは、実社会からはみ出した、落ちこぼればかり。
プログラマーのデイヴィッド=ITの天才だが、出世コースから外れた冴えない男
ジャスミン(ヒラー大尉の恋人)=ストリップダンサー
ラッセル・ケイス(最後に円盤に突っ込む)=宇宙人にさらわれたことを信じてもらえず、皆にバカにされる農家のオヤジ。
ホイットモア大統領=支持率低下中。
オーキン博士=エリア51に籠もりっきりで、完全に世間からかけ離れたオタク研究員。
ヒラー大尉もNASAの採用試験に不合格となり、決して突出したパイロットではありません。
いわば、落ちこぼれの寄せ集めチームで総攻撃するのが本作の魅力で、そのノリはどこまでも漫画であり、壮大なジョーク。
だから、何も考えずに楽しめるし、後味も爽快なんですね。
本作は、とにかくテンポがいいです。
巨大UFOが降臨する場面は、公開前から繰り返しTVCMで流れていたので、皆、何が登場するのか、よく知っています。
だから、変に気を持たせることなく、物語の冒頭で、早々と登場して、あっという間に攻撃が始まる。
リサージェントが前半でもたつくのとは対照的です。
今でこそ「ホワイトハウス襲撃」もポピュラーですが、20年前はインパクト大でした。
あの頃はまだアンタッチャブルな存在でしたからね。
ちなみに、当時の米国大統領は、不適切な関係でお馴染みのクリントンでした。ヒラリーではなく、旦那の方。
この巨大円盤を目にする度に、「アカウニの尻の穴」を連想するんですよね。
うちの親戚が漁師で、ウニが大きな収入源だったんです。
どうやってウニの身を取り出すかというと、最初にナタみたいな裁断包丁で横分割して、耳かきみたいな器具で身を剥がすんです。
ウニの身は非常に柔らかく、崩れると商品にならないので、「私もやりたい」と言っても、絶対にさせてくれませんでした。
ウニ一つ、けっこうな値段がするそうです。
エイリアンの秘密の信号にいち早く気付くITの天才、デヴィッド。
ジェフ・ゴールドブラムも『ザ・フライ』で一躍有名になり、『ジュラシック・パーク』で不動の地位を築いて、その勢いで、この大作に出演しています。
天才IT技師として登場したのは、ジュラシック・パークのマルコム博士のイメージが強かったからだと思います。
ちなみに、チャールズ・ブロンソン主演のアクション映画『狼よさらば』で、娘を暴行するチンピラ役で登場します。
これが最初のキャリアみたいです。
まさに大出世。努力されたんでしょうね。
本作で一躍スターダムに上り詰めたウィル・スミス。今観ても、魅力的。
彼を見出したエメリッヒ監督も慧眼ですね。
もしかしたら、エメリッヒ監督の最大の功績は、ウィル・スミスを世に送り出したことではないか??
ヒラー大尉の恋人で、勇敢な女性ジャスミン。
トンネル火災に遭遇したら、一も二もなく、このスペースに避難すべし!を強く印象づけた名場面。(本当だよ)
「宇宙人に誘拐された」という過去のために、ずっと笑い物にされてきた農夫のラッセル・ケイス。
家族は貧しいトレーラー暮らし。ゆえに生き延びる……という設定も、エメリッヒ監督が言うところの「落ちこぼれが世界を救う」なのでしょう。
それにしても、農薬散布のセスナ機しか経験のないオヤジが、どうやって一夜で最新鋭の戦闘機の操縦をマスターしたのでしょう。
このあたりが無茶苦茶なのだけど、それも笑って許せるんですよね。
ここぞという時に「ミサイル発射装置の不具合」というのも、非常にわざとらしい演出なんですけど(アクション映画のあるある大百科みたいな)、けっこう泣ける場面なんですよね。
一人、突撃するオヤジ。けっこう泣けます。
私にはケツの穴とウォッシュレットにしか見えませんが。
ちなみに、この映画をホワイトハウスでご覧になったクリントン大統領(旦那)は、「僕も戦闘機をマスターしきゃ」とジョークを飛ばしておられた……という話を映画雑誌で読んだことがあります。
なんだかんだで、まだ余裕がありましたね、この頃は。
あれから20年が経ち、再びクリントン大統領(嫁)がホワイトハウスで『インデペンデンス・デイ:リサージェント』を観る──という落ちなら面白かったのですが、現実は映画のようにはなりませんでした。
ヒラリー嫁を打ち破ったのは、なんと『ホームアローン2』でカメオ出演していたドナルド・トランプ氏。
『ホームアローン2』の撮影に使われたホテルがトランプ氏の所有だったのです。
噂によると、自分のホテルを映画で使わせた際には、必ずカメを出演するそうですよ。
それもまた因縁のような話です。
だって、『ホームアローン』で描かれている暮らしも、アメリカの豊かな時代を象徴するような華やかさでしたから。
そして今、ハリウッド映画のみならず、経済やITの中枢で中国系が当たり前のように活躍し(日本人ではなく)、エメリッヒ監督が生涯のテーマと定める「人類が一丸となって」というメッセージも、昨今の世界情勢においては、だんだん説得力を失いつつあります。
1996年は、ビル・プルマン演じるホイットモア大統領の「人類は決して滅びはしない。今日が我々のインデペンデンス・デイ!」という演説が感動的でしたが、2016年になると大した演説もなく、様々な民族が力を合わせて……という設定もありませんでした。
「若くて経験の浅い大統領」という設定が、さりげにクリントン(旦那)を意識しているような……。
イラン、イラク、イスラエル、その他、様々な民族が一丸となって……という設定も、1996年にはまだ希望があった。
2016年になると、現実があまりに重くて、ギャグにもなりません……。
日本の自衛隊基地にも指令が届いたようです。なぜに『出口』なのか……。
日系人の役者さんらしく、日本語の発音が微妙にネイティブじゃないのがポイントです♪
ちなみに、デヴィッドのお父さんはユダヤ教。ゆえに息子の名前がデヴィッド(=ダビデ。古代イスラエルの王。ペリシテ最強の戦士ゴリアテを打ち倒す英雄)。細かな所までこだわって設定してるんですよね。
1996年といえば、まだ「Windows95」の時代ですからね。Googleも、スマホも、Facebookもない。
振り返れば、恐ろしく急速にIT化とグローバル化が進み、国際情勢も東西二大陣営のイデオロギー対決から,全く異なるものに変質して、たかが「20年」が、50年にも、100年にも感じます。
リサージェンスが尻すぼみのようになったのも、今さら「人類が一丸となって」みたいなメッセージが心に響かなくなった理由も大きいかもしれません(むしろ、逆に向かいつつある)。
エンディングのやり取りを見る限り、次作はいよいよエイリアンの本拠地に攻撃を仕掛け、エイリアンを根絶やしにする……という話になりそうですが、今度、制作する時は、ジェイソン・ステイサムを主役に据えて、素手でエイリアンと格闘して欲しいです。(『インデペンデンス・デイ:アドレナリン』)
*
ちなみに、デヴィッド・アーノルド作曲のインデペンデンス・デイのサントラはおすすめです。
特に、エイリアンの攻撃が始まった時の「チャラララ~ン」のBGMは、日本のバラエティとかでもよく使われてます。
よく考えたら、前作は音楽もよかったんですよね。
ケツの穴に突っ込む時の音楽も泣かせます。
ああ、このパートで、オヤジが……と思い出すと、うるっとするもん。(どんだけ繰り返し観とるんや……)
『さらば宇宙戦艦ヤマト』のパクリではないか
インデペンデンス・デイはどう見ても『さらば宇宙戦艦ヤマト』のパクリではないかと、公開当時から思っていました。
パクリというのは大げさにしても、これって、どう見ても、彗星帝国じゃん、、、みたいな。
ラスト、巨大円盤の側面に総攻撃を仕掛けるショットも、非常によく似てるんですよね。
真田さんが、『ウニのお尻』=戦闘機の発射口に敵の弱点を見出し、そこから内部に侵入して、中枢に爆薬を仕掛ける……という設定も同じだし。
さらに、リサージェントでは、「テレザートのテレサ」みたいなのが出てきて、びっくりしたわ。
これ、次作で、「さあ、参りましょう」とか何とか言って、主人公のパイロットと共に敵機に突っ込んだら、怒るぞ、ほんまに(--;)
DVDとAmazonプライムの紹介
1996年版はおすすめですよ。思想がありそうで無いし。最後にオヤジがちょっとばかり泣かせるし。
気分転換にどうぞ。
出演者 ウィル・スミス (出演), ビル・プルマン (出演), ジェフ・ゴールドブラム (出演), メアリー・マクドネル (出演), ローランド・エメリッヒ (監督)
監督
定価 ¥780
中古 24点 & 新品 ¥270 から
リサージェントはレンタルで十分。
出演者 ジェフ・ゴールドブラム (出演), リアム・ヘムズワース (出演), ビル・プルマン (出演), マイカ・モンロー (出演), ジェシー・アッシャー (出演), シャーロット・ゲンズブール (出演), ローランド・エメリッヒ (監督)
監督
定価 ¥1,180
中古 63点 & 新品 ¥354 から
スターゲイトは文句なしに面白い。
なぜ、この世界観をもっと膨らますことができなかったのか、ほんと、QUO VADISです。
ジェフ・ゴールドプラムをもっと堪能したいあなたに……。


初稿:2017年2月14日