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知見は時に絶望しかもたらさない フランツ・カフカの『ロビンソン・クルーソー』

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幸せに生きるコツ――なりふり構わず

ロビンソン・クルーソーが島のもっとも高い一点、より正確には、もっとも見晴らしのきく一点にとどまりつづけていたとしたら――

慰めから、恐怖から、無知から、憧れから、その理由はともかくも――そのとき彼はいち早く、くたばっていただろう。

ロビンソン・クルーソーは沖合を通りかかるかもしれない船や、性能の悪い望遠鏡のことは考えず、島の調査にとりかかり、またそれをたのしんだ。

そのため、いのちを永らえたし、理性的に当然の結果として、その身を発見されたのである。

カフカ寓話集 (岩波文庫)

今の時代、「知っていること」「備えがあること」は、現代人の幸せ術として必須のものだけど、知っているがゆえ、備えがあるが為に、かえって身がすくむこともあると思う。

身を捨ててこそ浮かぶ瀬もあれの言葉にもあるように、人間、時には、何も考えずに思い切ったことをする勇気と勢いも肝心。

いつでも最上の場所が、最高の結果をもたらすとは限らない。

見えすぎることや知りすぎることは、時に身を滅ぼすという意味で、人間、真ん中あたりを、無我夢中で這い上がっている時が、一番安定しているんじゃないか。

絶望もせず、転げ落ちることもなく、ひたすら上っていく、あの時が。

こうした言葉を絶望名人カフカが記しているのも興味深い。

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