文明と海底鉱物資源と技術革命

「だが、なぜそんなにまでして海底鉱物資源の採掘にこだわるんだ? ネンブロットに行けば、全長三〇〇メートルの無人掘削機がガンガン露天掘りしてると言うじゃないか」
「それは一部の金属鉱山や、石灰や陶石や珪石みたいな非金属鉱床に限った話だ。希少金属、とりわけニムロディウムはそうじゃない」
「未だに奴隷が手掘りしているとでも?」
「機械は使っているが、それに限りなく近い。TVのドキュメンタリー番組などで目にしたことはないか?」
「いや」
だったら、一度は見ておくんだね。宇宙文明を支えているのは科学技術ではなく、鉱害病でボロボロになった人の手だと分かるから

「私怨ではない。技術革命だ。
ニムロディウムは激しい噴火や大きな地殻変動によって惑星深部から地表にもたらされ、鉱床の大半は地中の奥深くに存在する。高品位のニムロディウム鉱石を採掘するのに、地下数百メートルに坑道を掘り、摂氏四十度近い高温多湿の環境で、重さ二〇キロのマシーンを抱えて何年も岩盤を掘り続ければ、人間の身体がどうなるか、君にも想像がつくだろう。
この宇宙文明の時代に信じられないかもしれないが、未だにそうした光景が鉱山の奥深くで繰り返されている。非合法の採掘現場も含めてだ。
だが、大量のニムロディウムを含む鉱物が海底から完全自動化で採掘され、より簡易な方法で精製できれば、鉱業も、金属業も、産業全体が変わる。ニムロディウムのみならず、常用金属、希少金属ともに海底鉱物資源の活用が進めば、世界の構図も変わるだろう。
我々の目指すゴールは技術による革命だ。
そして、ティターン海台の採鉱プラットフォームがそのエポックとなる」

海洋小説『曙光』 MORGENROOD (上)

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「私怨ではない。技術革命だ。
ニムロディウムは激しい噴火や大きな地殻変動によって惑星深部から地表にもたらされ、鉱床の大半は地中の奥深くに存在する。高品位のニムロディウム鉱石を採掘するのに、地下数百メートルに坑道を掘り、摂氏四十度近い高温多湿の環境で、重さ二〇キロのマシーンを抱えて何年も岩盤を掘り続ければ、人間の身体がどうなるか、君にも想像がつくだろう。
この宇宙文明の時代に信じられないかもしれないが、未だにそうした光景が鉱山の奥深くで繰り返されている。非合法の採掘現場も含めてだ。
だが、大量のニムロディウムを含む鉱物が海底から完全自動化で採掘され、より簡易な方法で精製できれば、鉱業も、金属業も、産業全体が変わる。ニムロディウムのみならず、常用金属、希少金属ともに海底鉱物資源の活用が進めば、世界の構図も変わるだろう。
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海洋小説『曙光』 MORGENROOD (上)

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>海洋小説『曙光』MORGENROOD

海洋小説『曙光』MORGENROOD

宇宙文明の根幹を支える稀少金属ニムロディウムをめぐる企業と海洋社会の攻防を舞台に描く人間ドラマ。生きる道を見失った潜水艇パイロットと愛を求めるフォルトゥナの娘の恋を通して仕事・人生・社会について問いかける異色の海洋小説です。
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