恋に必要な思いやり ~あなたにもNoを言う権利がある

恋に必要な思いやり ~あなたにもNoを言う権利がある

恋に必要な思いやり ~あなたにもNoを言う権利がある

恋をするには資格がいる

恋をするには資格がいる。

人を愛するには能力がいる。

前者は、山本鈴美香の名作『エースをねらえ』の藤堂さんのセリフ。
後者は、英国の文人、G・K・チェスタトンの名句です。

恋に必要な資格とは、相手に対する思いやりと責任感。

人を愛する能力とは、忍耐、包容力、想像力、心の努力全てでしょう。

どちらが欠けても、恋は長続きしません。

だからこそ、一所懸命な恋は、結果によらず、人を成長させるのです。

このパートは海洋小説『曙光』(第五章・指輪)の抜粋です。
詳しくは作品概要、もしくはタイトル一覧をご参照下さい。
WEBに掲載している抜粋は改訂前のものです。内容に大きな変更はなく、細部の表現のみ訂正しています。

【あらすじ】

ウェストフィリア調査を終え、無事にローレンシア島に帰り着いたヴァルターと、彼を支え続けたリズは、いっそう深く結ばれる。しかし、ヴァルターが父親のアル・マクダエルを激怒させたことから、二人の状況は暗転。離ればなれになってしまう。そんな中、アルは、保守派の大物マティス・ヴェルハーレンの次男、ウィレムとの見合いを画策し、スカイタワーの落成式で引き合わせる。彼を想う気持ちとウィレムの優しさの狭間でリズの心も揺れる。

【小説の抜粋】 本当の優しさとは

アルとヴェルハーレン議員夫妻の計らいで、リズとウィレムは顔を合わせたものの、リズは見合いの場を避けて、ウィレムの誘いを断る。翌日の晩餐会、ウィレムは改めてリズに声をかける。

さすがに二晩続けて素っ気なくするのも失礼と思い、居ずまいを正すと、

「どうぞ、そのままで」

ウィレムは夕べと同じ優しい口調で言った。

「お邪魔でしたら、すぐに向こうに行きますから、そう固くならないで下さい」

だが、リズは軽く首を振り、

「夕べは大変失礼を致しました。せっかくお誘い下さいましたのに、ご厚意にお応えもせず……」

「どうということはありません。誰にでもNOを言う権利があります。まして僕とあなたは初対面だ。易々と酒を酌み交す気持ちにもなれないでしょう。僕も意に染まない会合には顔を出しませんし、あなたにもその自由がある。スカイラウンジでご一緒するのを断られたぐらいで根に持つほど狭量でもありません。それより、この手のお見合いにはうんざりしているのではありませんか、お互いに」

ウィレムがわざと砕けた言い方をすると、リズも少し緊張を解き、「そのように言って頂けると、私も救われます」と答えた。

「そう堅苦しくならないで。本当に何でもないことです。一目会ったぐらいで、あなたのような女性の心を鷲掴みにできるとも思いません。あなたの眼差しを見れば、遠くに想う人があることぐらい、すぐに察しがつきますよ」

「あの、ミスター・ヴェルハーレン、それは……」

「何度も申し上げています。堅苦しくならないで、と。あなたが誰に恋をしようと、あなたの自由です。その為に咎められる理由など何一つない」

「友人として話しませんか、ミス・マクダエル。僕もあなたも別の次元に幸せを求めてる。そして、その気持ちを分かってくれる人は周りにはない。もしかしたら、あなたの恋する人だけが、あなたの不安や淋しさを理解してくれるのかもしれませんね」

「だから余計で辛いのです」

 リズは遠く海を見やった。

「やっと手に入れた幸せが再び波に運ばれていくみたい……。全てに恵まれているように見えて、本当に欲しいものは決して手に入りません」

 そんなリズの横顔をウィレムは無言で見詰めていたが、

「よかったら、景気づけに一杯やりませんか。昨夜の分も兼ねて、甘いカクテルでも。それで少しでもあなたの淋しさが紛れて、沈んだ顔に微笑みが浮かべば、僕もここに来た甲斐があったというものです。本当はこんな仰々しい集まりに顔を出したくなかった、でも、両親がうるさく言うもので、仕方なく」

「まあ、そんなお年になっても、ご両親にうるさく言われるものですか」

「そんな年? これまた、グサっとくるようなことを平気で仰いますね」

リズが慌てて言葉を取り消すと、ウィレムは眩しそうに目を細め、「とにかく一杯飲みましょう」と、戸口に立っていたバンケットコンパニオンにショートカクテルの「ブルームーン」を二つオーダーした。

程なく逆三角形のカクテルグラスに薄紫色のブルームーンが運ばれてくると、ウィレムはその一つをリズに差し出し、「一つ、おまじないを教えましょう」と空を仰いだ。
「大学時代、アルバイト先の女の子に教わったおまじないです。グラスワインに月を映して、恋の成就を祈りながら飲み干すんですよ。とはいえ、今夜はもう月も沈んでしまったし、僕が代わりに満月をやってあげましょう。ほら、こんな感じ」

ウィレムが親指と人差し指で円い月を作って見せると、リズは初めてクスクス笑い、ウィレムも頬を緩めた。

「やっと笑って下さった」

「……すみません」

「謝ることはないですよ。人間、誰しも辛い時はあります」

第五章 指輪 Kindle Unlimited版

深い絆で結ばれたヴァルターとリズは幸福の絶頂にあったが、ウェストフィリアの深海調査がきっかけでリズの父、アル・マクダエルが疑義で告発される。公聴会に証人として立ったヴァルターは中立公正の立場から発言し、人々に深い感銘を与えるが、悪魔の罠が忍び寄っていた。
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