Morgenrood 曙光

【作品詳細】人はみな海底に眠る鉱物資源 ~いまだ光を放たざる曙光の物語

海洋小説《曙光》MORGENROODは、下巻の後書き『事実は小説より奇なり』で紹介しているように、1995年から資料集めを始め、2017年にいったん校了しました。

その後、Kinle Direct Publishingで販売していましたが、2018年末より、海洋研究開発機構(JAMSTEC)および文部科学省ほかで様々な海洋開発プロジェクトに携わってきた西村一先生にご指導を頂き、誤字脱字をはじめ、いくつかの技術的な誤り(用語の間違いや設定ミスなど)について訂正することができました。

カテゴリーとしては「海洋SF」に属しますが、後述にもあるように、最初から「海洋科学小説を書こう」と狙ったわけではなく、キャラクター設定の過程で海洋科学や鉱業、建築・デザインの要素を織り込んだ次第です。

元々、文芸作品として出発している為、フィクションらしいトリックやSF的な要素はほとんどありません。せいぜい舞台が「架空の惑星」で、「宇宙船が飛ぶ時代」というぐらいです。また、読み手の意表を突くようなどんでん返しやアドベンチャー的な展開はありませんが、現存する海洋小説の中では、非常にリアルで、専門性の高い作品に仕上がっています。

また、人間ドラマにも重点を置き、一人一人の内面にスポットをあてるような描写を心がけています。

ニーチェの生の哲学『これが生だったのか、それなら、よし、もう一度!』を、運命の海と永遠に廻る太陽になぞらえ、魂の幸福とは何か、自分の人生を愛するとはどういうことか、分かりやすく解説しています。

学びと人生のヒントにして頂けたら幸いです。

全体のあらすじ

西暦末期、無人探査機『パイシーズ』が、みなみのうお座星域より一つの鉱石を持ち帰る。そこに含まれる未知の稀少金属『ニムロディウム』によって、宇宙開発技術は劇的に向上するが、世界最大のニムロデ鉱山がファルコン・マイニング社の手に落ちたことから、恐怖と寡占による一党支配が始まる。

マイニング社の横暴に風穴を開け、幾多の鉱業問題を解決する為に、特殊鋼メーカーの雄、アル・マクダエルは前人未踏の海底鉱物資源の採掘に挑むが、採鉱システムの完成を前に、チームリーダーの失踪という憂き目に遭う。

急遽、代役を捜し求めるが、紹介されたのは半年前に解雇された潜水艇のパイロット、ヴァルター・フォーゲルだった。半信半疑で身上調査していたところ、パスワードでロックされた『リング』の鳥瞰図を覗き見てしまう。それは大海原に直径15キロメートルの二重ダムを築き、内部の海水をドライアップして、海底面に都市空間を創出するというアイデアだった。

これこそ惑星表面積の97パーセントを海洋で占められた惑星《アステリア》の未来を変えると確信したアルは、早速、ヴァルターに面会し、アステリアに連れ出すことに成功するが、アルの愛娘、リズが彼に一目惚れしたことから、アル自身の運命のシナリオも微妙に狂い始める。

果たして、海底鉱物資源の採掘はファルコン・グループの一党支配に風穴を開け、アステリアの未来を変えるのか。

二人の恋と『リング』の行方は――。

章立て -各章の詳細-

【第一章】運命と意思

希有な技能を持ちながら、人員整理で解雇されたヴァルターには悲しい過去があった。十三歳の時、故郷ネーデルラントの干拓地が未曾有の大洪水に襲われ、堤防を守りに戻った土木技師の父親が高波に呑まれて命を落としたのだ。母は裕福な元婚約者と再婚するが、新しい暮らしに馴染めず、継父と諍いを起こして、家を飛び出してしまう。
その後、商船学校で学び、潜水艇パイロットの職も得るが、壊滅した干拓地では世界的建築家を迎えて商業エリアを再建する計画が持ち上がり、ヴァルターは、長年、復興ボランティアに尽くしてきた仲間と共にアイデアコンペで対決する。彼の提案した『緑の堤防』は地元民に支持されるが、建設会社の意匠を盗用したかどで告発され、やむなく示談書にサインする。
裏切り者として故郷を追われたヴァルターは、自暴自棄になって、ステラマリス(地球)を飛び出す。

【第二章】 採鉱プラットフォーム

水深3000メートルの海底下で、揚鉱管や集鉱機を繋ぎ、採鉱システムを完成させる『接続ミッション』を六週間後に控え、現場の士気は最高潮だが、新参のヴァルターに対してマネージャーらの態度は素っ気ない。今さら潜水艇のパイロットなど必要ないという熟練スタッフに対し、ヴァルターはテスト潜航の必要性を力説し、そこにリズに片想いする大学生兼パイロット補佐のエイドリアンが絡んで、三つ巴の様相となる。そんな彼を温かく励ますリズと次第に心を通わせるようになるが、二人の間には、父親であり上司でもあるアルの存在が巌のように立ち塞がっていた。

【第三章】 海洋情報ネットワーク

採鉱プラットフォームの成功は自由公正をもたらすかに見えたが、アステリアに眠る膨大な鉱物資源を求めて、ファルコン・マイニング社やその他の企業も開発公社を結成して乗り込んでくる。寡占を阻止する為、ヴァルターは情報共有による事業の透明化と知的基盤の強化を訴えるが、理想とするネットワークの構築には莫大な資金やノウハウを必要とする為、一朝一夕には運ばない。
彼のアシストを務めようとリズが必死になればなるほど、二人の関係はぎくしゃくし、とうとう喧嘩になってしまう。

【第四章】 ウェストフィリア

誤解を乗り越え、いっそう深い絆で結ばれたヴァルターとリズの前に、ファルコン・マイニング社の特命を受けた又従妹のオリアナが現れ、北方の火山島ウェストフィリアの深海調査をオファーする。パイロットとしての矜持から承諾するが、調査の内容も目的も杜撰で、現場の不満もひとしおだ。そんな中、アルの実姉ダナから、ウェストフィリアの火山で発見された青い貴石と、採鉱プラットフォーム建設に至るまでの経緯を聞かされ、ヴァルターは科学の良心を信じて深海調査に挑む。

【第五章】 指輪

ウェストフィリア調査はアステリアの人々に深い感銘を与えたが、逆にアルが開発当初の情報隠蔽を告発され、窮地に立たされる。ヴァルターは一人の市民として公聴会で証言し、疑義を晴らすが、その存在を疎む者たちの罠に嵌まり、アルやリズとの信頼関係を損なってしまう。

【第六章】 断崖

社会の強力なリーダーを失い、混沌とするアステリアに、富裕層向けの海上リゾート『パラディオン』の建設計画が持ち上がる。提案者は故郷の再建コンペで争った建築家フランシス・メイヤーだ。自分には関わりのない事と静観していたヴァルターだが、彼らの横暴に毅然と立ち向かうリズの姿に触発され、自らも海洋社会の未来の為に行動を開始する。だが、孤軍奮闘する彼に追い打ちをかける事故が起き、再び家財も生きる気力も失った彼は「この世の果て」と呼ばれる断崖へと向かう。

【第七章】 フォルトゥナ号

それぞれの後日談。

主な登場人物

■ ヴァルター・フォーゲル

本作の主人公。ネーデルラントの干拓地に生まれ育ち、土木技師の父親と、エクス=アン=プロヴァンスに続く高貴な血筋の母親をもつ。四カ国語の複雑な言語環境に育ち、難読症やコミュニケーション障害を呈したことから、子供ながらに将来に絶望し、希死念慮に憑かれるようになる。
13歳の時、大洪水で父親と生家を亡くし、顔が歪むほどの心的外傷に陥るが、潜水艇のパイロットを志し、故郷の復興ボランティアに打ち込む中で、心の傷を克服しようとする。
意思が強く、行動的だが、「見かけによらず、ノミの心臓」と喩えられる繊細さも併せ持つ。
ハンサムだが船乗りゆえに女性に縁が無く、「最初から好きでないのはお互いさま」を免罪符に港の女性と一夜限りのお付き合いを繰り返す。
帰る場所を持たず、三度の食事を目当てに船に居着いていることから、『さまよえるオランダ人船長』と呼ばれる。

■ アル・マクダエル

特殊鋼メーカー『MIG』のカリスマ経営者で、「拾いの神」の渾名を持つ。
ファルコン・マイニング社に最愛の者を傷つけられた恨みもあって、アステリアの海底鉱物資源の採掘に乗り出すが、開発の過程で社会的使命に目覚め、アステリアの産業振興に尽力する。
周囲には賢哲の人と仰ぎ見られ、信望も厚いが、娘にはめっぽう弱く、高価なスポーツカーやプリンセス人形を買い与える親馬鹿な一面も併せ持つ。四歳年上の姉にも頭が上がらない。
本作では『運命』の象徴。タヌキに似た風貌で、陰の愛称は「タヌキの父さん」。

■ エリザベス・マクダエル(リズ)

アルの一人娘。美人で聡明だが、男性経験ゼロで、自他とも認める『パパっ子』。
お伽噺やTVドラマが大好きで、憧れの人は「キャプテン・ドレイク」。ドレイクを演じた俳優に似ているという理由で、ヴァルターに一目惚れし、アルの反対を押し切ってアステリアに居着く。
漠然と自立に憧れていたが、ヴァルターと行動を共にし、アステリアの現実を目の当たりにするうちに政治に目覚め、海洋開発財団の理事長として積極的に発言するようになる。

■ グンター・フォーゲル

カールスルーエ出身の土木技師。幼少時は内気で、火山学者の父親に気兼ねする日々だったが、ネーデルラントのアフシュライトダイク(締め切り大堤防)を目にして、人間の意思の力に打たれ、治水に携わるようになる。ワーグナーの熱烈なファンでもあり、英雄ジークフリートの如く、高貴な家の娘であるアンヌ=マリーを手に入れる。
息子ヴァルターの言葉の問題に心を痛め、救いを求める過程で、ニーチェの永劫回帰の思想を知り、「魂の幸福とは、人生に『よしもう一度』と言える気持ち」と説くようになる。
大洪水の夜、決壊寸前の堤防を守りに戻って、命を落とす。

■ アンヌ=マリー・デュボワ

ネーデルラントに旅行中、グンターと恋に落ちる。実家はエクス=アン=プロヴァンスの名家で、裕福な婚約者もあったが、グンターと駆け落ちし、干拓地フェールダムの運河沿いの家で暮らすようになる。グンターの死後、ヴァルターを連れて故国フランスに戻るが、生活に困窮し、かつての婚約者と再婚する。一見可憐だが、本質は戦乙女(ワルキューレ)で、人生の困難に立ち向かう気丈な母親。聡明で、教養も深いが、男に無知で、思春期のヴァルターに対する接し方が分からず、母子関係をこじらせる。みなみのうお座にまつわる秘密の隠し財産を持つ。息子の結婚が生き甲斐。

■ セス・ブライト

アステリアでアル・マクダエルの片腕を務めるクールな専務。「僕は誰の味方でもない」というスタンスで、アル、ヴァルター、リズ、その他の人間関係のバッファー役となる。実は壮絶な生い立ち。

■ ロバート・ファーラー

ファルコン・マイニング社の社長。『ネンブロットの蛇』と恐れられた父ドミニク・ファーラーの後を継いでマイニング社のトップに立つが、女好きで、詰めの甘い性格。

■ オリアナ・マクダエル

リズの又従妹。黒いカトレアのように妖艶な美女だが、アル・マクダエルの娘として世間の賞賛を一身に集めるリズを目の敵にしている。ウェストフィリア調査ではロバート・ファーラーに取り入り、ヴァルターにも色仕掛けを試みるが、逆に心惹かれるようになる。父親は「マンモン」と渾名される闇金の使い手。

■ フランシス・メイヤー

世界的に名の知れた天才肌の建築家。実家は大手観光グループのオーナーで、政財界に幅広い人脈を有する。才能豊かで、作品にも定評があるが、性格はイタチのように小心で、プライドも高い。干拓地の再建案について、素人のヴァルターにけなされた事を恨み、アステリアでは富裕層向けの海上都市『パラディオン』の是非をめぐって、再びヴァルターと火花を散らす。

■ マックス・ウィングレット

アステリア行きのコンパートメントで同室になった熟練の施工管理士。面倒見のいい親分肌で、ヴァルターのことも大らかな気持ちで見守る。現実主義で、冒険はしないタイプだが、後にリング・プロジェクトの指南役となる。ブラウンエールとコメディが大好き。

■ エヴァ・ウィングレット

マックスの妻で、リゾートタイプの住宅設計を得意とする建築デザイナー。人生の機微に通じた心優しい楽天家で、リズとヴァルターの恋を応援する。

■ ダグラス・アークロイド

採鉱プラットフォームのマネージャー。プロジェクトリーダーに苛められて過食症に陥り、マッコウクジラのような巨漢になる。新参のヴァルターを毛嫌いし、接続ミッションもパイロット抜きでやると主張するが、根は誰よりも現場思いで、アルを心から尊敬し、採鉱システムの完成に人生を捧げている。後にヴァルターの良き話し相手となる。

■ ラファウ・マードック

採鉱システムの開発とオペレーションを手掛けるプロジェクトチームのサブリーダー。ヴァルターと同じオランダ出身の同胞で、ひねくれたヴァルターの面倒をよく見る。奥さんのカリーナは総務部長で、夫婦揃って採鉱プラットフォームを住まいにしている。

■ メイファン・ホー=ティワナ

海上安全局で海洋情報データの管理に携わる。スイーツが大好きな、ほんわかした女性だが、情報行政に一見識もち、ヴァルターと一緒に海洋情報ネットワークの構築に尽力する。
ヴァルターにはお母さんのように優しいが、大人(上司)として厳しい一面も持ち合わせる。

■ ヤン・スナイデル

ヴァルターの幼馴染み。飲んだくれの父親に虐待され、粗暴に育つが、サッカーを通じてグンターの好影響を受け、復興ボランティアのリーダーとなる。ヴァルターにとってはジャイアンのような存在だが、共に再建コンペで闘い、刺激し合う仲。

物語のアイテム

■ ニムロディウム

みなみのうお座星域で見つかった架空の稀少金属。常用金属に微量に添加することにより、強度や耐久性を増す。特に有害な宇宙線をシャットすることから、宇宙構造物に重宝される。ニムロディウム(それを採掘・生産するファルコン・マイニング社)が無ければ宇宙船も飛ばないと言われる、宇宙文明の根幹を支える金属。ニムロデ鉱山に高品位の大鉱床が存在する。

■ リング

原案は、清水建設の『マリネーション構想』。作中では、ヴァルターが10歳の時に思いつき、父親と一緒に砂浜でシミュレーションしたのがきっかけ。いつかCADで描こうと約束し、果たされぬまま父親を亡くしたことから、ヴァルターの中で、父の理念を伝える思い出の作品となっている。

■ 採鉱プラットフォーム

石油プラットフォームに類似の半潜水式の洋上リグ。タワーデリック、揚鉱管、水中リフトポンプ、集鉱機、破砕機から成り、水深3000メートルの海底下に広がる海台クラストを採掘する。システムは完全自動化され、ほとんど人の手を介することなく鉱物を採取できることから、既存の採鉱技術に革新をもたらし、ニムロデ鉱山の深刻な鉱害問題を解決すると期待される。

■ 緑の堤防

素人のヴァルターが建設会社の広告用パースを参考にしながら描いた緑化堤防と人工地盤の再建案。壊滅した干拓地を自然な形で再建する良案だったが、メイヤーに噛みついたこともあり、建設会社に「意匠の盗用」と脅され、仕方なく示談書にサインして、罪を被る。

■ パラディオン

メイヤーが提案する富裕層向けの海上リゾート都市。直径七キロの浮体構造物に華麗なシンメトリーの都市空間を創出する。莫大な建設費と維持費を要し、支配階級の権力と財力を呼び込むことから、地元住民の猛反発に遭う。

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