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心が動けば、行動が生じる。行動すれば、流れも変わる 【仕事に効く言葉】

海洋小説『曙光』MORGENROODより、仕事と生き方に関する引用とコラムを紹介しています。

本記事の内容
  • 人を動かさぬ限り何も変えられない ~この世のことは人次第
  • 井の中の蛙 ~カエルの意見に頷く世間はない
  • 『頑張り』という現実逃避 ~立ち止まって初めて気付く過ちもある
  • 心が動けば、行動が生じる。行動すれば、流れも変わる。
  • 本物の自信は揺らがない ~自信とは努力の積み重ね
  • 若者は恋だけでは満足しない
  • 「俺が、俺が」と自分の主張を振りかざしても、周りは付いてこない
  • 社長の横でにっこり笑いながらも学ぶべきことはある
  • その時、父さんは何をしていたの? 父から息子に伝えたいこと
  • 人を動かさぬ限り何も変えられない ~この世のことは人次第

    ヴァルターは、海洋都市のいっそうの発展を願い、各機関に混在している観測データを一元管理し、便利な検索ポータルとして提供する『海洋情報ネットワーク』の構築を提案しますが、政府は重要性を理解せず、簡単に実現しそうにありません。

    自身の無力を痛感するヴァルターに、カリスマ経営者のアル・マクダエルは次のようにアドバイスします。

    お前が何をどう頑張ろうと、この世のことは人次第だ。

    人を動かさぬ限り何も変えられない。

    事業やグループワークにおいては、地位や資本や実績が物を言う世界に違いありません。

    では、どんな人でも力があればスタッフを思いのままに動かし、理想通りにプロジェクトを実現できるのでしょうか。

    たとえ力で押し切っても、周りにやる気が無ければ、大したものは作れないでしょう。

    逆に、資本や技術の乏しい中で始めても、皆が熱意をもって取り組み、一つ一つ積み上げれば、だんだん力もつくし、思いがけない協力者も現れるかもしれません。

    結局は、『人』。

    自分に何も無ければ、周りの人間を動かせ、とアルはアドバイスしているのです。

    「人を動かす」とは、心を動かすこと。

    心を動かすには、どうしたらいいのだろう。

    それを考えるのが、リーダーシップであり、マネジメントであり、創意工夫であり、仕事の根幹だと思います。

    カネやモノの流れだけ追うのが仕事ではない。

    小手先のテクニックや褒め言葉ごときで人の心は動かせません。

    最終的には人間力が問われるのは、どの分野、どの階層でも同じでしょう。

    レベルの高い人と、レベルの高い仕事をしようと思ったら、技術より信用が問われるのは言うまでもありません。

    出会いの場で、ヴァルターは、アルが生まれながらに地位や財産や名声や、ありとあらゆるものを持っていた事について言及しますが(アルも大会社の跡取りとして生まれてきたので)、いくつもの現場を経験して、アルが痛感したのは「この世のことは人次第」ということです。

    だからこそ、「自分に地位や資本さえあれば」と考えてしまう若いヴァルターに、上記のようにアドバイスするのです。

    この台詞は最終的にボツにしましたが、同じような主旨の台詞は随所に出てきます。

  • 井の中の蛙 ~カエルの意見に頷く世間はない

    海洋技術センターの人員整理で、潜水艇パイロットの職を解雇されたヴァルターは、ほとんどヤケクソで、故郷を後にします。

    人里離れたトレーラー村に逃れ、引きこもるように暮らしている彼の元に、稀代の経営者と名高いアルがスカウトに現れ、アステリアの海洋開発をめぐって意見を戦わせる場面です。(今日の利益か、数億年後の生命の価値か ~海洋開発と自然保護について

    以下の台詞は、次から次に屁理屈を並べて、ことごとくアルに逆らう若いヴァルターに対し、アルが心の中で呟く言葉。

    「井の中の蛙」は、古い書き方で、『井蛙(いせい)』とも言います。

    何もかも分かったような顔でいるが、所詮、井蛙だ。

    カエルの意見に頷く世間はない。

    海洋小説 《曙光》 MORGENROOD 第一章・運命と意思

  • 『頑張り』という現実逃避 ~立ち止まって初めて気付く過ちもある

    自分を傷つけたものに復讐したい一心で、がむしゃらに頑張ってきたヴァルターは、とうとう自らの落ち度で、仕事も、信頼も、全てを失い、断崖に立ち尽くします。

    しかし、大いなる海を見るうちに、心も慰められ、これまでの行いを内省するようになります。

    一生懸命。

    勤勉。

    向上。

    頑張り。

    絶え間なく努力する人は立派に見えますが、その実、何かから逃げ回っているだけかもしれません。

    歩みを止めると、都合の悪い現実が目に入り、心が苦しくなるからです。

    まるで止まった途端、転倒する独楽(コマ)のように

    失敗を恐れ

    変化を恐れ

    都合の悪い現実から目を反らしてきた。
    第六章 断崖』のボツより

    ある意味、問題にぶち当たって、身動き取れなくなった時が、生き直すチャンスかもしれません。

    人間は、一度、歩みを止めないと、決して自分の過ちに気付かないからです。

  • 心が動けば、行動が生じる。行動すれば、流れも変わる。
    彼はまだ気難しい顔をして、口を一文字に結んでいたが、心は微かに波立っている。

    今はそれで十分。 

    心が動けば、行動が生じる。

    行動すれば、流れも変わる。

    何かを感じ取ること

    それが全ての始まりだ。

    第二章 採鉱プラットフォームより

    父を大洪水で亡くし、自らもパースの意匠盗用の疑いをかけられ、故郷に居られなくなったヴァルターは、不運を嘆く中、『拾いの神』と称される稀代の経営者アル・マクダエルにスカウトされ、海底鉱物資源の採鉱プラットフォームを手伝う為、海の星アステリアに赴く。

    そこでも憮然とした態度でアルに逆らうヴァルターだったが、他を圧倒するような採鉱プラットフォームの威容とスタッフの気魄に気圧され、自らを省みる。

    そんな彼の後ろ姿を見つめながら、「心が動けば、行動が変わる。行動が変われば、人生が変わる」と彼の将来に期待を寄せるアルの胸中。

    しかし、そんなアルの意図が理解できず、何かと反発して、周りと齟齬を起こすヴァルターに対し、先輩のマードックが優しく諭す場面がこちら。

    上司の叱責と部下の可能性 ~お前が本当に社長の飼い犬ならば

  • 本物の自信は揺らがない ~自信とは努力の積み重ね
    ほんの少し前まで、焦り、落ち込み、苛々と突っかかっていたのが嘘みたいだ。

    今なら自信とは何かと問われたら、自分の至らぬ所も弱い所も受け入れられる余裕だと答える。

    「何かが出来る」

    「何かを知っている」

    それらは一つの優越感に過ぎず、自分よりもっと優れたものに出会えば、あっけなく崩れ去る。

    だが、本物の自信は揺らがない。

    リングが否決されようと、無知や無力を侮蔑されようと、ここまで積み上げた自分自身を信じられるから、大地に根が生えたような強い気持ちにもなる。

    海洋小説《曙光》MORGENROOD 第六章より

    本当の心の強さとは ~無理に鋼になろうとするなでも書いているように、ヴァルターは「気の強さ」と「心の強さ」を勘違いしており、辛いことも悲しいこともがんがん蹴散らかして、意思を貫くのが強い生き方だと思い込んでいます。

    でも、それは大きな誤りで、勢いだけで人生の困難は突破できません。

    TVゲームなら、強くなる為に、いろんな武器を揃えたり、ポイントを増やしたり、「相手より強大なこと」が勝利に不可欠ですが、人生は必ずしもアイテムを揃えれば優位に立つというものでもない。確かに、資格や実績、人脈など、実社会を有利に生き抜くために必要なアイテムは多々ありますが、それを目の前に揃えれば誰もがゲームに勝てるというわけではなく、根本的に自分に自信がなければ、あるいは気魄で負ければ、宝の持ち腐れで終わることも十分に有り得ます。最強と思っていたアイテムを失って、たちまち生きる気力をなくす人もあるでしょう。

    逆に、自分という人間に対する揺るぎない信頼があれば、アイテムを無くそうと、相手より数が少なかろうと、堂々と土俵に立つことができます。

    そこで勝とうと、負けようと、自分がこれまで積み重ねてきたものに対して、価値があると信じられるからです。

    アイテム頼りの勝負は、アイテムがパワーを無くせば、それで終わり。

    でも、自分を信頼できる限り、また次の手を考え出すことができますね。

    自信は、相手より強いから、相手より優れるから、湯水のように湧いてくるのではありません。

    物事が上手くいかない時も、相手に負けた時も、どれだけ自分という人間を信頼して、これからも続けていけるかです。

    そういう心境になれば、勝ち負けは一つの結果に過ぎず、自分はプロセスを生きているのだという実感が湧きます。

    そして、それこそが、自分の人生を愛することの意味なのです。

  • 若者は恋だけでは満足しない
    どうしてジム・レビンソンは消えたのか。
    たとえ酒癖の悪い老人でも、手の早い海賊より千倍はましだ。
    老人は酒があれば事足りるが、海賊は乙女を手に入れただけでは決して飽き足らないからである。

    海賊=若いヴァルター、乙女は、アルの娘のこと。
    老人=前任のプロジェクトリーダーがなくなって、優秀な若者が後任としてやって来たのはいいが、若者は、恋だけでなく、様々な野心を持ち合わせており、今に恋人だけでは飽き足らず、地位、財産、キャリア、等々、いろんなものを欲しがるようになる……という喩え。

    上記はアルの独白として。最終的にはボツ。

  • 「俺が、俺が」と自分の主張を振りかざしても、周りは付いてこない
    俺が、俺が、と自分の主義主張をふりかざしたところで、周りは決して付いてこないわよ。

    あなたがどれほど正しい事を口にしても、相手の心には響かないでしょう。

    それよりも、自分を一歩下げて、周りの声に耳を傾けてごらんなさい。

    相手に頭を下げたからといって、あなたの価値まで下がるわけではないのよ。

    『曙光』 第三章・海洋情報ネットワーク

    海洋開発の老舗会社の部長と口論になった後、直属の上司に「お前の方から謝れ」と求められたことに対し、ヴァルターが異論を唱えると、メイファン女史が上記のように諫める。
    相手に頭を下げたからといって、あなたの価値まで下がるわけではないというのは私の処世術。

  • 社長の横でにっこり笑いながらも学ぶべきことはある

    MIGの跡取り娘としての立場を自覚したリズは、アステリア・エンタープライズ社の専務、セス・ブライトに付いて、MIGの事業を学ぶようになります。

    とはいえ、百戦錬磨のベテランに比べたら、ひよっこみたいなもので、大事な仕事も任せてもらえません。

    同じ年頃の女性が生き生きと働く姿を横に見ながら、リズは父の隣でニコニコ笑うだけの飾り人形みたいな自分に焦りと虚しさを感じるようになります。

    以下は、セスの専務室で仕事を学ぶリズの会話。

    「あまりに広範で、今は事業所の名前と事業内容と資本家計を把握するのが精一杯です。これほど大きな組織を父と伯母の二人で切り盛りしているのが不思議なくらい……」「一から十まで手綱を取って指示しているわけではありません。エンタープライズ社がいい例でしょう。ここも実質、誰の采配で回っているか皆承知してます。要は一つの指針の元にどれだけ効率的に分業できるかです。僕だって、コンサルティング業務は個々の担当者に一任していますし、物流も、プラットフォーム支援も、現場で判断を下すのは各部署の責任者です。最初の人選が確かなら後は比較的やり易いですよ。むしろ人選を誤る辣腕経営者の方が危なっかしいぐらいです」

    「それは理解できます」

    「どこに、どんな人が配属されているか、それを見れば組織のことは一目瞭然です。経営者の器も知れます。お嬢さんもその辺りを学べば、将来に役立つのではないでしょうか」

    「でも、できれば一つの職務を全うしたいと思っています。漠然と全体を見渡すのではなく、営業でも、在庫管理でも、一つのことに打ち込んで、仕事のノウハウを身に着けたい」

    「気持ちは分かりますが、立場上、それは無理でしょう。お嬢さんにそのつもりはなくても、周りは気を遣います。皆と一緒に机を並べなくても、学べる仕事は他にもありますよ」

    「それでも父が本気で私に望んでいると思いません。私にも何かの役割を期待するなら、接待ばかりに使ったりしないでしょう。夕べも、その前も、私に求めることといえば、父の隣でにっこり笑って場を和ませるようなことばかり。私はMIGのキャンペーンガールではありません」

    「社長の隣でにっこり笑っても、相手を不快にさせるだけの人もおりますよ。この世は決してコネや損得だけで動いているわけではありません。『やり手』と評判の経営者でも実際に会って話してみたら、週刊誌の提灯記事と大きくかけ離れていることもありますし、世間であまり注目されない子会社が驚くべき技術力を持っていたりします。資本やコネだけちらつかせても、本当に一流と呼ばれる人たちは見向きもしませんし、本当に得るべきところから信用を得られなければ大事は成せません。そして、その善し悪しを見抜く力は、マニュアルを読むだけでは決して身に付かないものです。『社長の隣でにっこり笑って』と仰るけども、笑いながらでも学ぶべき事はいっぱいありますよ」
    海洋情報ネットワーク 海洋社会の知的基盤を強化するの前述のパート

    本作に登場するヒロインのリズは、24歳から27歳。

    女性が一番変化する、あるいは社会的な影響を受けやすい年齢に設定しています。

    社長令嬢でもあるリズにとって一番の責務は、父の名誉を保ち、企業イメージを高めること。

    令嬢だからといって、贅沢や我が侭は許されないし、何処へいっても、「アル・マクダエルの娘」という役目が付き纏います。

    そのように定められた人生を、どのように自分らしく生きるかが、本作の第二のテーマでもあります。

    世の中には「自分の好きなように生きるのが一番大事」という声もありますが、周囲の幸福の為に、社会的務めを果たすことも同じくらいに大事です。

    果たしてそれは不幸な生き方でしょうか。

    皇族や世界的セレブのように、社会の期待する役目を果たしながらも、自分の生き甲斐を追求し、時に人間的な脆さを見せながらも、世間の尊敬と愛情を一身に集めている方も少なくありません。

    そうした姿勢は皇族やセレブに限らず、サラリーマンや主婦や、何かしら役目を負った市井の人々も同じではないでしょうか。

    周りの女性に引け目や劣等感を感じていたリズも、やがて自分の定めを受け入れ、自身に与えられた力を上手に生かす道を見出します。

    そのきっかけとなったのが、恋人の理解と真心であるのは言うまでもありません。

    *

    社長=お父さんのアル・マクダエルは賢哲な企業家であると同時に、恋愛指南のプロでもあります。

    彼に距離を置かれて、戸惑う娘に、お父さんが恋の道をレクチャーするエピソードはこちら。

    参照記事
    拒絶の中でも、学ぶ者は学ぶ ~失恋した時、どうするか~

  • その時、父さんは何をしていたの? 父から息子に伝えたいこと

    あれこれ迷いながらも、ようやく自らの使命に気付いたヴァルターは、その決意を盟友のマックスとエヴァに打ち明けます。

    彼の父親は、大洪水の夜、堤防を守りに戻って、命を落とし、その出来事が深い心の傷になっていました。

    一緒に逃げて欲しかったのに、自分を置いて堤防に戻った父親の気持ちに納得いかないところもあったからです。(彼は13歳の子供だったので)

    海上都市のプランが潰された時、お父さんはどこで何をしていたの? 
    と聞かれた時、皆でビールを呑みながら文句を言ってただけだ、と、胸を張って答えられるか? 

    俺の父親は、洪水の夜、堤防を守りに自分の持ち場に戻った。
    その為に命を落として、俺と母親の人生も全然違ったものになってしまったが、それでもその事がずっと誇りだった。
    あの晩、一緒に逃げて、それまで通り幸せに生きて行くことも可能だったし、また、その道を選んだ人たちのことを責める気はない。
    だけど、俺の父親が身をもって生き方を示してくれたおかげで、俺はどんな時も一本の軸だけはぶらさずに生きてくることができた。

    誇りだけは失わず生きることができた。

    勝てるわけがない。
    そうとも、勝てるわけがないんだ。
    そんなこと、改めて人に言われなくても、自分自身が一番よく知っている。
    だけど、抗いもせず、ただ大きな潮流に呑まれて終わるなんて、俺はいやだ。
    せめて潮流の中に杭の一本は立てたい。

    あの夜、父は逃げようと思えばいくらでも逃げられた。
    それは決して間違いじゃなかったんだ。
    そうしても間違いではなかったんだ。
    一緒に来てくれたら、俺立ちも今まで通り幸せに暮らすことができたんだから。
    堤防が決壊し、ポルダーが水没しても、俺達はそれまで通り幸せに暮らすことができただろう。

    でも、父はそうしなかった。──多分、もう駄目だと分かってたかもしれない。
    それでも最後まで職務に生きた。

    仕事が大事だったから──?

    違うよ。

    あれは俺の為だったんだ。

    今ならはっきりと分かる。

    あれは俺に見せる為だったんだ。

    海洋小説『曙光』 MORGENROOD (下)のボツ原稿

    ファイル作成:2012年5月31日

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