泣き虫の殺し屋『ニキータ』女は美しさを利用して成長する

目次

泣き虫の殺し屋 : 不良少女から大人の女へ

映画『ニキータ』について

リュック・ベンソンの映画といえば「レオン」が圧倒的に有名ですが、私は断然ニキータ派です。(レオンが苦手な理由は後述)

主演のアンヌ・パリローの小悪魔的な魅力はもちろん、映画全体に漂うクラシックな雰囲気や小物使い、恋と殺しを絡めたお洒落な設定。

フランス出身の監督ならではの演出で、まさに『大人の女の映画』だからです。

わけても秀逸なのが、スパイ養成所に送り込まれたニキータの指導役となる元・女殺し屋を演じるジャンヌ・モロー。

出演は2場面ぐらいですが、強烈な印象を残しています。

この映画の、この役に、ジャンヌ・モローを配したことで、『女性の成長物語』の深みがぐっと増したような気がします。

あらすじ

重度の薬物中毒で、町のならず者でもある少女・ニキータは、不良仲間と共に小売店に強盗に入り、警官二人を撃ち殺す。

死刑を言い渡されたニキータは、薬物を注射され、そのまま絶命するはずだったが、気が付けば、見知らぬ施設の一室にいた。

政府の秘密警察官のボブ(チェッキー・カリョ)は、警官二人を殺した償いとして、ニキータに暗殺者になるよう求める。

背けば、今度こそ『死刑』だ。

ニキータは渋々、ボブの申し出に従い、柔術や射撃訓練を受けるが、まるでやる気が無く、成績も最悪。

今のままでは、暗殺者どころか、処刑所に逆戻りだと諭され、途方に暮れたニキータは、元・女殺し屋で、ニキータの指導員でもあるアマンド(ジャンヌ・モロー)の部屋を訪ね、女殺し屋としての手ほどきを受ける。

ようやく使命に目覚めたニキータは、ジョゼフィーヌというコードネームで、政府の汚れ仕事を引き受けるようになる。

そんな彼女が出会ったのが、スーパーマーケットのレジ係、マルコだ。

二人はたちまち恋におち、同棲を始める。

だが、政府は容赦なく、二人の旅先にまで暗殺の指令が下る。

恋と暗殺者の狭間で揺れるニキータは、血生臭い事件に巻き込まれ、逆に政府に追われる身となる。
(この時、『掃除屋』として登場する男性殺し屋・ヴィクトルが、後の『レオン』のモデルとなります。同じジャン・レノが演じています)

以前から、ニキータの裏稼業に気付いてきたマルコは、ニキータの身を案じて、あることを画策する。

女は美しさを利用して成長する

全編、お洒落で、ムーディーな作品ですが、特に好きなのが、この場面。

殺し屋の養成所に送られたものの、教官をおちょくるばかりで、ちっとも真面目に学ぼうとしないニキータ。

そんな彼女に、元・女殺し屋で、彼女の指導教官でもあるアマンダ(ジャンヌ・モロー)は、ぼさぼさ頭のニキータに、こう言い聞かせます。

どう振る舞えばいいか分からない時は、微笑みなさい。
知的に見えなくても、相手に好感を与えるわ。

>

ちなみにQuoteしてるのは、テレビ洋画劇場でのセリフです。ここだけ完璧に覚えました。

ニキータ ジャンヌ・モロー 気品の定義は分かるわね

ニキータ ジャンヌ・モロー 知的に見えないけど、相手に好感を与えるわ

「好感」よりも「知的」を優先する。

これぞヨーロッパ女性の価値観ですよね。

それもジャンヌ・モローのような大女優が口にすると、ひれ伏しそうになります。

私もこのセリフで『ニキータ』の大ファンになりました。(この場面だけ繰り返し見てしまう)

こちらが二度目の邂逅。

ボブから「真面目に取り組まないなら、次はない(今度こそ死刑になるぞ)」と最終通告を受けて、ニキータは再びアマンダの部屋を訪ねます。

その時、ニキータが彼女の手をじっと見つめ、アマンダがこう答えます。

私の手を見ているの? 昔は綺麗だった。
今は皺だらけだけど。

ニキータ ジャンヌ・モロー 私の手を見ているの?

この「手」に、女性の美しさと儚さ、人生の変容、容赦ない老い、思い出、切なさ、生き様、、、いろんなものがギュっと詰まっていて、それを大女優ジャンヌ・モローが口にすると、何とも言えない味わいと迫力があるんですよね。(生身の女としての実感がこもっている)

そして、このセリフの後の、笑顔がすごくキュートで清々しいんですよ。

老いても悔いなし。

若さと美しさを精一杯生きた、充実した女の微笑みだと思います。

ニキータ ジャンヌ・モロー 老いても充実した女の微笑み

その後、ジャンヌはニキータをドレッサーの前に座らせ、口紅を手に取らせます。

ルージュを引くのよ。女の本能のままに。
この世には無限のものが二つある。
女の美しさと、それを利用すること。

DVDの日本語字幕と異なりますが、TV洋画劇場では上記のように言ってました

ニキータ ジャンヌ・モロー ルージュを塗るのよ 女の本能のままに

ニキータ ジャンヌ・モロー アンヌ・パリロー ベテラン女優から若い女優へのエール

一度でいいから、こんなこと言っていみたいですよね。

この場面は、女性としても、女優としても、超一流の大先輩から、これから華を咲かそうとする若い女性への美と叡智のエール(あるいは、バトン・リレー)という感じで、ニキータという作品の魅力が凝縮されているといっても過言ではありません。

リュック・ベンソンが、この作品にジャンヌ・モローを引っ張ってきて、この場面を撮らせたのは英断です。

次の場面で、ニキータは華麗に変身。

この映画は本当に『女性』の描き方が上手いです。

女性にとって「メイクアップ道具が使いこなせる」って、一つの成熟の証ですからね。

美しく装うニキータ アンヌ・パリロー

この作品に登場する二人の男。

一人は、ニキータを導く、政府の秘密捜査官ボブ。

もう一人は、レジ係のマルコ。

でも、どちらがニキータを深く愛していたかといえば、やっぱボブの方かな、という気がします。

不良少女の時から、手をかけ、目をかけ、心を注いでいただけに、思い入れも半端ない。

初めての仕事で身も心もボロボロになったニキータと「別れのキス」をする場面。

さらっと口づけを交わして、いかにも「おフランス」な雰囲気がいいです。

ニキータとボブの口づけ アンヌ・パリロー チェッキー・カリョ

カリンチョさまの切なげな眼差しがたまらん..

ニキータ チェッキー・カリョ ボブの切ない眼差し

スーパーマーケットで知り合った恋人のマルコも、まめで、優しくて、私にも譲って欲しいです。

心優しいニキータの恋人

日本女性はコレに憧れるんじゃないか。彼氏が朝食を作ってベッドまで運んでくれるという(*^^*)

ベッドに朝食を運ぶマルコ

こちらは、旅先に下された殺しの司令。

隣室にはマルコが居るのに、バスルームから標的に銃を向けるニキータの悲しみと緊張感がたまりません。

もしかしたら・・と、最後の瞬間まで冷や冷やさせられる。

「殺し」の場面も、恋人たちの不安や絆を絡めて、スリリングに描いているのがこの作品の魅力です。

バスルームのドアの外からニキータに優しく話しかけるマルコ

恋人の優しい問いかけに涙をぬぐいながら照準を合わす場面が印象的

涙を拭いながらライフルの照準を合わせるニキータ

そんでもって、「おフランス」らしく、衣装がファッショナブル!

私もこんな帽子かぶって歩いてみたい・・。

ニキータの美しいパリジェンヌのファッション

穴のあいた鍔広の帽子も素晴らしくお洒落

ちなみに、20代の時、こういう髪型に憧れてたんです。
でも、恐ろしくて、ここまで短くカットできなかった。
絶対に合わないだろうな~と思って。

今、こういう髪型をしています。実は一番似合ってた。切ってから判った。
20代の時もチャレンジすればよかったな~と、後悔しとります。

(皆さんも、してみたいヘアスタイルがあれば、思い切ってチャレンジするといいですよ。失敗しても、また生えてくるから^^;)

この作品に関しては、男性はあまりそそられないかもしれないですね。

アンヌ・パリローが素敵! ジャンヌ・モロー最強! と感じるのは、やはり女性の方が圧倒多数ではないかと。

ベンソン流の派手なドンパチを期待して見たら、肩すかしを食らうけど、ニキータの華麗な変身や、ジャンヌ・モローとのやり取りを楽しむ気持ちがあれば、きっと、いつまでも、心に残る映画になると思います。

一つ一つの演出が丁寧で、映像を見るだけでも飽きませんしね。ついでに、フランスらしいファッションも。

ストーリーに関しては、ニキータの葛藤を前面に押し出さず、最後まで抑えた感じで持っていったのも良かったと思います。

最後も、男二人がしんみり語り合い、傷ついた小鳥をそっと逃がすような、余韻の残るエンディングでしたしね。

ついでに、私も「アレ」に何て書いてあったのか、知りたいです。

ボブへの愛の言葉? それとも感謝?

永遠に教えてはもらえない。

それが、ボブに対する最大の罰。

みたいなシナリオが素晴らしいです。

エリック・セラの映画音楽と初回の暗殺場面

音楽を手がけているのは、ベンソン監督御用達のエリック・セラ。

全体にJAZZYな印象で、エンディングの『The Dark Side of Time』、殺しの場面でかかる『MPOLKMOP』も、一度耳にしたら忘れられません。

あの、「ちゃ~ら~ら~」の部分が、ニキータの「ええええええっ」という嘆きの声に聞こえる。

その後に続くリズムが、暗殺者の足音みたいで、すごい迫力でした。

っつうか、あんな豪奢なレストランに行ってみたいです。

お祝いのプレゼント。

ニキータに誕生日のプレゼントが贈られる

開けてみたら・・

誕生日のプレゼントの中身はライフル

女性にとってホント残酷な展開。だからこそ、暗殺者として腹を括ったニキータの強さと、その後の怒りに説得力があるんですよね。

DVDとSpotifyの紹介

このDVD、吹替が入ってないの!!

洋画劇場で放映した時、吹替もすごく上手だったんですよ。
あの音源はどこへ行ったんだろう??
次にリマスターする時は必ず入れて欲しいです。

ニキータ [Blu-ray]
出演者  アンヌ・パリロー (出演), ジャン=ユーグ・アングラード (出演), ジャン・レノ (出演), リュック・ベッソン (監督)
監督  
定価  ---
中古 0点 & 新品   から

こっちは中古しかないみたい。輸入盤はあるけど。興味のある方はどうぞ。

ニキータ by 
 定価  ¥550
 中古 8点 & 新品   から

『レオン』が苦手な理由

リュック・ベンソンと言えば映画『レオン』ですが、まあ、早い話、私はナタリー・ポートマンが苦手なんですよ(ファンの方、ごめんなさい)。

スター・ウォーズも、ブラック・スワンも、どうしても好きになれない。

決して悪い役者さんじゃないんですよ。

すごく熱心で、才能のある女優さんだと思います。

でも、好きになれない。

特に『レオン』のマチルダ。

なんかこう、我が儘で、軽率で、好きになれないんですよね。

早い話、妬いてるんですけど。

あの子がもうちょい慎重に振る舞ってたら、レオンも死なずにすんだわけでしょう。

なのに、愛人だとぬかしたり、一人で敵地に乗り込んでいったり、、、、

その末に、レオンがしんでしまうのが、もう許せなくって。

(゜o゜(○=(-_-○

ちなみに、私は完全版より、劇場公開版の方が好きです。

完全版も悪くはないけど、劇場公開時、あれらの場面をカットしたのは頷けます。

ベッドのシーンとか、何度も襲撃に行く場面とか、ちょっと余計かな、と。
(後に、ナタリー・ポートマン自身も、「少女と中年男性の逃避行とかあり得ない。今ならNGだろう」みたいな発言をしてますね)

ついでに、レオンの女性のエピソードも不要だった。

「いったい、どんな女?」と見る側の想像に任せた方が味があったのに。

どうせなら、DVDも、完全版と劇場公開版と、両方収録してくれたらいいんですよね、ブレードランナーみたいに。

劇場公開版を含むDVDが出たら勝ってもいい。

でも、やっぱり、マチルダ=ナタリー・ポートマンは、好きになれないだろうと思います。

こればっかりは好みの問題です。

初稿:2014年11月29日

この記事を書いた人

石田 朋子のアバター 石田 朋子 サイト管理人

作家・文芸愛好家。80年代サブカルチャーの大ファン。普段はぼーっとしたおかあさんです。昭和の名作漫画はほとんど空で台詞が言えるほどの元祖ヲタ。車と猫が大好きな東欧在住。サイトでは作品紹介ではなく、作品を題材とした文芸コラムを掲載しています。

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