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女は強く、賢く ヒロインの源泉 ~リプリーからワンダーウーマンまで

2020年のアカデミー賞授賞式で、シガニー・ウィーバー(エイリアンのヒロイン)、ブリー・ラーソン(マーベルのヒロイン)、ガル・ガドット(ワンダーウーマン)の三人がスピーチに立った演出に心が湧いたオールド映画ファンは多いと思う。

20世紀を代表する闘うヒロイン、シガニー(リプリー二等航海士)と、その血脈を受け継いだ21世紀の二人のヒロイン、ブリーとガル。

今でこそ、『闘うヒロイン』は珍しくも何ともないが、リプリー(シガニー)がSFホラーの金字塔『エイリアン』で、宇宙船の最後の生き残りとして死闘を繰り広げるまで、物語における女性の存在など、紙みたいに薄っぺらいものが多かったからだ。

「風と共に去りぬ」や「ティファニーで朝食を」のような文芸作品はともかく、アクション映画やホラー映画のヒロインといえば、男性主人公の後ろにくっついて、キャーキャー騒ぐだけ。

武器もなく、腕力もなく、、お姫さまみたいに男性に助けてもらって、めでたし、めでたし。

それで世間も納得していたし、「女性とは、そういうもの」という思い込みが当の女性自身にもあって、自ら率先して闘うことに、恐れや戸惑いを抱いていた。

しかし、『スターウォーズ』のレイア姫が、初めて武器を手にしてから、アクション映画における女性の立ち位置も徐々に変わってきた。

ヒーローの後ろにくっついて、キャーキャー騒ぐだけでなく、自身も銃をぶっ放し、弱腰な男たちを叱咤し、自ら戦火に飛び込んでいく。

そして、世間がそうした構図に少し慣れてきた頃、強烈なインパクトを与えたのが、『エイリアン』のリプリー二等航海士だ。

謎の異星人に、次々にクルーが殺されていく中、果敢に生き延びたリプリーは脱出用のシャトルに乗り込み、「ああ、やっと死の恐怖から逃れた」と一息ついたも束の間、機械の隙間からエイリアンの手が飛び出し、シャトルの中に既に乗り込んでいた事実を突きつけられた観客の衝撃は、絶望のドン底に叩き落とされるかの如くだった。

それだけに、絶体絶命の極限下で、最後まで生きる意思を失わず、間近に襲いかかるエイリアンと対決したリプリーの姿は、生涯、心に残るほど強く、美しかった。

従来のシナリオなら、男の船長とリプリーが生き残って、リプリーは船長に助けられて生き延びる……というのが主流だったから、最後に女性一人が残されるという設定が余計で新鮮に感じられた点も大きいと思う。

それに続く『エイリアン2』では、リプリーが更にバージョンアップして、マシンガンはぶっ放すわ、ガンダムみたいなパワーローダーを装着するわ、まさに20世紀のワンダーウーマン。

その後に続くヒロイン像を完全に変えたといっても過言ではない。

それも背伸びして身に付けた強さではなく、「あなたにも闘う力はあるはず。恐れずに、立ち向かおう」と内なるパワーを呼び覚ますが如く。

何かにつけて相手を罰し、謝罪に追い込もうとする現代のフェミニズムとは異なり、リプリー(シガニー)が体現した「女性らしさ」とは、自らの開放であり、宣言だ。

その呼びかけに刺激されて、闘うヒロイン、物を言うヒロイン、自立を目指すヒロインが次々に誕生し、その流れはとうとうプリンセスの殿堂ディズニーのヒロイン像まで変えて、21世紀のワンダーウーマンに至った。

そして、その流れはとどまるところを知らず、女性たちの価値観や生き方をいっそう押し広げていくだろう。

ともあれ、女性のシンボルが花とキャンディだった時代は終わり、復興と創出が世界的テーマとなる21世紀後半には知性や意志の力がいっそう必要とされる。

女性にとって、二度目の大きな転換期、2020年アカデミー賞の授賞式に、20世紀のヒロインと21世紀のヒロインが揃って舞台に立ったのは、非常に興味深い出来事なのだ。

参照記事 → 映画『エイリアン』の生殖とエロティシズム

映画館でこれを観た時は、本当に胸が痺れました。

劇場で鑑賞した思い出って、案外、時と共に薄れたりするのですが、これだけは忘れられないですね。

あと、ふっと後ろを振り返った時、そこにエイリアン・クイーンがおる場面とか。

ああいうカメラ回しは、ジェームズ・キャメロンが本当に上手いのです。

これ、振り返る瞬間にストップモーションが取り入れられているんですね。

本作で、ストップモーションの演出はここだけです。だから、余計で、背筋にぞーっときたの。

で、リプリーの可愛いところは、マシンガンを持つ姿が、今ひとつ、ぎこちないところ。

現代のヒロインはよく訓練されていて、銃を構える姿も特殊部隊のようですが、リプリーは「物の流れから、致し方なく銃を手にした」という感じで、そのギャップが余計で戦う意思を感じさせるのです。

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