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アウトブレイク ダスティン・ホフマン

エボラ熱と映画『アウトブレイク』ダスティン・ホフマン主演

アウトブレイク ダスティン・ホフマン

映画『アウトブレイク』について

今、西アフリカを中心に猛威を振るっているエボラ熱。

アメリカでも感染国からの入国でリベリア人男性が死亡し、入国者が特に多い国際空港には専門の医療班が派遣されるなど、次第に危機感が高まっています。

私もこのニュースは注意深く見守っており、本当に収束するのか、心配しています。

「日本は海に囲まれてるから、ダイジョーブ」という感覚があるかもしれませんが、現代は飛行機をはじめとする国際的な交通手段が発達し、様々な国の、様々な人が、日常的に、大量に行き交っている為、『絶対安全』ということは言い切れません。

それでも正しい知識があれば感染は防げますし、冷静な判断ができると思いますので、興味のある方は映画『アウトブレイク』をご覧になることをおすすめします。

1995年のハリウッド映画ですが、エボラ・ウイルスをモチーフにしており、感染の経路、医療者の対応、実際に町で流行したらこれくらいの厳重警戒、隔離状態になる点を忠実に描いていますので、入門編としておすすめです。


あらすじ

Wikiより・・

モターバ川流域の小さな村で未知のウイルスによる出血熱が発生する。
アメリカ陸軍伝染病医学研究所のダニエルズ大佐(ダスティン・ホフマン)を始めとした調査隊が現地に向かうも時既に遅く、村の医師と村から離れて暮らしていた祈祷師を除いて村は全滅状態となっていた。

ダニエルズはウイルスの致死率の高さと感染者を死にいたらしめるスピードの早さに危機感を抱き、軍上層部とアメリカ疾病予防管理センター(CDC)に勤務する元妻のロビーに警戒通達の発令を要請するが、双方から却下されてしまう。

そんな折、アフリカから一匹のサルがアメリカに密輸入された・・。

*

密売人の男はサルをペットショップに持ち込むが、ペットショップのオーナーは買い取りを拒否する。
しかし、サルにバナナを食べさせる際、サルに指を噛まれ、モターバ・ウイルスに感染する。

アウトブレイク

アメリカ陸軍伝染病医学研究所では『モターバ・ウイルス』の存在を確認するが、その対応に動く前に、どんどん感染が広がっていく。

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買い取りを拒否された密売人の男はサルを公園で手放すが、その前に自身も感染し、移動中の飛行機の中で発症する。

空港には恋人が出迎えに来るが、男はそこで倒れ、彼女も汗や唾液に接触したことで感染してしまう。

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病院に運び込まれた密売人の男は身体中から出血し、死の床にある。
ダニエルズ大佐の妻で、専門医であるロビーは男から「最近、動物に触ったことは?」と聞きだそうとするが、答える前に絶命してしまう。

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さらに映画館では、彼らに接触した客(ウイルスのキャリア)がホール内でゴンゴンと咳をし、その唾液から場内の観客に一気に感染が広がる。

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さらに病院では検査技師の不注意からウイルスを含む血液が拡散。
重大な事態を引き起こす。

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感染した患者が次々に病院に運ばれ、町中がパニックに。

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道路は封鎖され、町中に軍隊が派遣される。
ウイルスのキャリアを一人でも町の外に出せば、アメリカ全土に感染が広がる恐れがあるからだ。

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感染した母親は、子供や夫と別れのキスを交わすこともできない。
家族に見送られながら、一人、隔離施設へと送られる。

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独自に調査を進めるダニエルズ大佐は、ついに密輸されたサルの存在をつきとめ、TVニュースを介して市民に危険を呼びかける。

このサルは、ウイルスの抗体を有する、唯一の『治療薬』でもある。

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感染の拡大を恐れる軍の上層部は、町に爆弾を投下し、患者ごと焼き払う作戦を実行する。

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一方、サルの捕獲に成功したダニエルズ大佐は「モターバ・ウイルスの治療方法が見つかった。爆弾を投下するな」とパイロットに呼びかける。

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キーファー・サザーランドが冷酷な上官を、モーガン・フリーマンが良心的な将校を演じています。

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作品の見所

ジャンルとしては「災害パニックもの」に分類されるのですが、医療や防疫の知識に基づいて忠実に描かれているため、非常にリアリティがあり、予備知識としても役立ちます。

それでいてエンターテイメントの要素もあり、話もテンポよく進むので、気軽に鑑賞できる、良質な作品に仕上がっています。

ダスティン・ホフマン&レネ・ルッソという組み合わせも意外ですが、それはそれで面白いかと。

脇で、モーガン・フリーマンとドナルド・サザーランドが共演しているのも、映画好きには興味深いです。

感染と社会的影響

感染が水面下で広がりやすい理由

実際、「感染」というのは案外身近にあります。表沙汰にならないだけで。

私も看護業務を通して、MRSA(メチシリン耐性黄色ブドウ球菌)の保菌者(キャリア)になった経験があるし(すごく体調の悪い時にMRSAの患者さんに接して、自分自身ももらってしまった。手指の消毒やガウンなど、気を付けていたつもりなのに、やはり怖いものだと実感しました)。

十数年前にはある地域で結核が再流行して、私の知り合いのドクターと看護婦数名がやはり院内感染した経緯があります。(今でも若い人が罹患することがあるんですよ)

「若い」とか、「日頃から健康体」とかは、関係ありません。

どんな人も、日常的に、様々な病原菌やウイルスに接していて、感染というなら、毎日、何かに感染しているようなものです。

ただ、多くの人は、免疫細胞の働きによって、病原菌やウイルスに打ち勝ち、発症しないだけ。

発症しても、軽い喉の痛みだけで済んだり、うどん食って、布団かぶって、三日三晩、寝たら、熱も下がって、「あー、治ったー」と実感するのが大半でしょう。

いちいち自覚しないだけで、どんな人も、日々、何かに感染し、多くは自然に打ち勝ってるんですね。

見方を変えれば、些細なことがきっかけで、重篤な感染症を引き起こす……という事でもあります。

私のMRSA事件も、あの頃、病棟スタッフの大半が、その患者さんと接していました。

でも、キャリアになったのは、私と、某先輩の二人だけ。

後で聞いたら、某先輩も風邪気味で、体調の悪い時に、その患者さんの病室に行って、保菌者になってしまったと。

もちろん、私と某先輩の手洗いの仕方やマスク・ガウンの着用に誤りがあったのかもしれませんが、それだけでは説明がつかないところもあるのが、感染症の恐ろしさです。

病原菌もウイルスも、目には見えないし、接触しても、痛くも痒くもないからです。

*

たとえば、ある感染症について「100人が発症」という発表があったとします。

でも、それはあくまで「自分から病院に行って、診断が出た人」の数であって、世間体を気にして受診しない人もあれば、自然に治るならいいかと放置する人もあります。

公式発表が、必ずしも実態を正確に示しているとは限りません。性病などは、特にそうですね。

また、診断がついても、その後のフォローを無視する人もあるし、病識のない人もあります(自分の体液や血液が他者にとってどれほど危険か、まったく自覚がない)。

むしろ、世間に対して、隠している人の方が大半でしょう。

一般社会において、「ボク、キャリアです」なんて、言えるわけがないですから。(ものによっては、就職にも、結婚にも不利になる)

こうした、病原菌やウイルスそのものの性質に加えて、社会的な理由もあり、感染症というのは、どんどん水面下で広がっていくものです。

おかしな言い方ですが、発熱なり、喉の痛みなり、感染症の兆候が現れて、病院を受診して、診断がつく人はまだラッキーなのですよ。知人や家族など、周りにいる人にとってもです。

本当に怖いのは、「無知」と「無関心」。

そして、自分の身体に異変が起きても、隠そうとする気持ちです。

たとえば、結婚を前提にお付き合いする場合、「問題となる感染症がないか、お互いに検査しましょう」というのが、一昔前は当たり前でした。

でも、今、そんなことを口にすれば、人権侵害と怒られますよね。

しかし、実際問題、何も知らずに子供を授かって、胎児に重大な影響を及ぼすこともあれば、一緒に暮らすうちに、配偶者に感染することもあります。

自分に感染症が有るか、無いか、きっちり調べるのは、人格うんぬんの問題ではなく、自分や相手の安全を守る為ですよ。

確かに、この社会には偏見があって、○○検査で陽性反応が出た為に、職場を解雇された人もあります。

結婚を拒否される人もあります。

だからといって、「人権侵害」を盾に、見逃していい理由はどこにもありません。

何故なら、たった一滴の血液、たった一度のクシャミで、周りの人が感染し、最悪、死に至ることもあるからです。

感染というのは、心身の問題に限らず、社会的にも大きな影響を及ぼすこともありますので、慎重に扱わなければならないのは確かですが、身近に起きた場合は、医療者のアドバイスに素直に従い、適切な対応をして頂きたいと願っています。

がーっと感情的になって一方的に通院を止めたり、検査に来なかったりする人もありますので。

アウトブレイク [Blu-ray]
出演者  ダスティン・ホフマン (出演), レネ・ルッソ (出演), モーガン・フリーマン (出演), キューバ・グッディング・Jr. (出演), パトリック・デンプシー (出演), ドナルド・サザーランド (出演), ケビン・スペイシー (出演), ウォルフガング・ペーターゼン (監督)
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身体の弱い人は、ウイルスから物理的に距離を置くように

上記の記事は2014年に書いたのですが、2020年の新型肺炎に関する話題から、映画『アウトブレイク』を知り、この記事を見に来ている人が大半だと思うので、私が日頃、注意していることを書き記しておきます。

あくまで、個人の体験なので、そのあたりは割り引いて御覧下さい。

私は、呼吸器が弱いこともあり、「ヤバイ咳」をしている人がいたら、全力で逃げます。

とにかく、その場から立ち去る。

できるだけ距離を置く。

少なくとも、2、3メートルは離れて、飛沫感染しないように気を付けています。

理由は、普通の人にはちょっとした風邪でも、私の場合、あっという間に気管支がやられて、夜も眠れないほどの咳と呼吸苦に見舞われるからです。

事の起こりは、学生時代。

友人と一緒にテーマパークに遊びに出かけたのがきっかけでした。

待ち合わせ場所で落ち合った時、友人は開口一番、「私、今、38度の熱があるねん」

私はびっくりして、本当に遊んで大丈夫なのか、問い質しました。

でも、友人はどこ吹く風で、「私は身体が丈夫だから、38度の熱が出ても、全然平気なの」

実際、彼女はアスリートの経験もある為、体力、運動能力ともに桁違いで、38度の熱があっても、普通に飲んだり、食べたり、まったく影響のない体質だったようです。

私が嘔吐した絶叫マシーンでも、彼女はケロっとして、本当にこんな鉄人みたいな人が存在するんだなぁ、と、呑気に構えていました。

すると、翌日、今度は私が38度の熱を出し、喉がぱんぱんに腫れました。

友人はすっかり回復して、また外出するほどの元気です。

私の方は、その後もどんどん症状が悪化し、気管支炎を併発して、肺にもうっすら影ができるほどでした。

全治に三週間。激しい咳と、大量の痰に苦しみ、「横になることもできないほどの呼吸苦」というものを、生まれて初めて体験しました。

ところが、それだけでは終わりませんでした。

それ以降、何かに憑かれたように気管支が弱くなり、加齢と共に、いっそう強く、敏感に反応するようになりました。

感染初期は、ドライヤーの熱風を吸い込むが如く、喉の奥や気管支がヒリヒリと痛み、そのうち咳のしすぎで、喉がパンパンに腫れて、声も出なくなる。その繰り返しです。一度、そうなると、全治に二、三週間はかかりますし、夜も激しい咳で眠れない為、寝不足と筋肉痛で、全身ガタガタになるんですね。

ゆえに、私は身の回りにウイルス性のイヤな咳をする人がいたら、全力でその場を立ち去るんですよ。

相手がどう思うかなんて、関係ありません。

ウイルスをもらって、何日も、喉の痛みや激しい咳に苦しむのは私です。

うつした方は、うつした自覚もなく、私の医療費や生活の面倒まで見てくれるわけではありません。

その不公平を考えたら、相手がどう思おうと、全力で逃げる。

それが唯一、身を守る方法だと思っています。

マスクや手洗いが有効なのも本当ですが、皆が皆、ウイルスをもらった瞬間に、洗面所にダッシュして、消毒液で手を洗い、うがいができるわけではないでしょう。

朝にうつされて、夜遅く、家に帰るまで、為す術ないケースもあると思います。(仕事中で薬局にも行けない)

同じウイルスに感染しても、私の友人みたいに、ケロっと治ってしまう人もあれば、私みたいに、何日も激しい咳に苦しむ人間もいて、その他大勢が大丈夫だからといって、私も大丈夫ということは絶対にないんですよ。

だから自覚のある人は、とにかく体内に病原性ウイルスを取り込まないことを第一に考えて、ウイルス性の咳をしている人があれば、問答無用で距離を置いた方がいいです。

感染する時は、一瞬。

「あっ」と気付いた時には、増殖と攻撃が始まって、気力やハーブティーでどうにかなるレベルではないからです。

*

ところで、人間の咳には、「他人にとって無害なもの」と「感染性のある咳」の二種類があり、前者については、それほど神経質になる必要はありません。

たとえば、健康な人でも、お茶やジュースを誤飲したら、激しく咳き込みますよね。

これは異物を排出しようとする自然な働きで、感染性はありません。

同様に、気管支拡張症や、喘息や、肺の切除後のように、呼吸器に器質的な問題があって、「日常的に分泌物が多い」「粘膜が敏感」「空気の通り道が狭くなっている」という理由から、コンコンと、頻回に咳をする患者さんもあります。

それも呼吸器の自然な反応であって、周りにはほとんど影響ないものです。

怖いのは、ウイルス感染によって、喉や気管支が炎症を起こし、ケンケン、コンコンと、キツネのような乾いた咳をしている人。

黄緑色や黄白色の、濁った痰がたまって、それを排出する為に、ゴンゴン、ゲホゲホと、湿った咳をしている人。(痰が異常にたまって、胸や背中にゴロゴロ音が聞こえることもあります)

咳の仕方を見れば、周りに影響のない咳か、ウイルス由来か、大体、分かります。

ウイルス由来と気付いたら、とにかく距離を置くこと。

「家に帰ってからうがい」では遅すぎることもあります。

私は、無駄な抵抗と思いながらも、咳する人が近くにあれば、その瞬間に顔を背け、息を止めて(できるだけ長く)、素早く立ち去るようにしています。

それぐらいやらないと、ウイルスもらって、苦しむのは自分だし、家族にもうつす危険性があるからです。

そのあたり、周りに気を遣いすぎて、逃げるに逃げられない人は、「もし自分が病気になったら、この人は医療費やその間の仕事を肩代わりしてくれるのだろうか」と問いかけてみて下さい。そうすれば、その勇気も出ると思います。

今度の新型肺炎も、人によっては軽症で済むだろうし、ウイルスを取り込んでも、何の自覚症状もなく、自然に治癒して、気付きもしない人もあるでしょう。

でも、自分は弱いという自覚があるならば、決して無理しないように。そして、遠慮は無用です。

ウイルスから距離を置いて、体内に取り込まないことが、一番の防御策なのですから。

世の中には、「医学的(あるいは生物学的)に隔離すること」と「人格否定」をごっちゃに考え、人権侵害と非難する人も少なくないですが、本当の人権侵害とは、病気で休むことによって、減給されたり、解雇されたり、社会生活に不利益を被ることです。

医学的・生物学的に衛生的な施設に隔離することは、治療の一環であり、その人自身を、雑菌や、いつもの日常生活から守る意味もあります(堂々と仕事を休める、等)。

こういう非常事態だからこそ、理性的に考え、身体の弱い人が無理に働いたり、通学しなくていい環境を大事にして欲しいものです。

※ もしかしたら、「隔離」という言葉のイメージが悪いのかもしれません。人種隔離政策みたいで。「患者保護」とか「特別観察」みたいな言い方に変えれば、患者さんの受け止め方も違うかもしれませんね。

『陽性』と『発症』と『感染』の違い

今回の新型肺炎について、多くの方が不安に感じるのは、『陽性』と『発症』の違いが分かりにくいからではないでしょうか。

平たく言えば、

『陽性』・・・人体に有害な病原菌やウイルスを保有している(あくまで、検査結果。科学的に、ウイルスの存在が確認された状態。鼻毛に一匹、二匹、ウイルスが付いたぐらいで陽性反応は出ませんし、検査の後、速やかに死滅するか、急激に増殖するかも分かりません。一時の検査結果だけでは確定できないこともあります)

『発症』・・・人体に有害な病原菌やウイルスによって、発熱、咳、喉の痛みといった症状が起きている

『感染』・・・ヒトからヒト、あるいは、動植物、食べ物、不衛生なモノ(公衆トイレの便座など)などから、人体に有害な病原菌やウイルスがヒトの体表や体内に取り込まれること。この時点で、即、発症とはなりません。発症するか否かは、個々の健康状態、取り込んだ量などによります。うっかり青カビのついたパンを口にしても、直ちに食中毒にならないのと同様。

の違いです。

『陽性』というなら、全ての人が、何らかの病原菌やウイルスを持っているものです。

例えば、食中毒の原因で知られる『黄色ブドウ球菌』は、日常的にヒトの体表面や消化管に存在しています。

もし、日本国民の全員が、黄色ブドウ球菌を持っているか、否かのテストを受ければ、みな、陽性反応が出るでしょう。

かといって、皆が皆、嘔吐や腹痛など、激烈な食中毒の症状を引き起こすわけではなく、発症するか否かは、個々の健康状態や体内で増殖した菌の数などによります。

今度のコロナウイルスも、『陽性』あるいは『感染』という言葉で報道されますが、『陽性』=『発症』ではないし、感染=陽性=発症と、同列に語れるものでもないです。

そのあたり、(一般人の中で)、認識が曖昧なまま、「どこそこで、誰が感染」「何人が陽性」と報道されるから、事情をよく知らない人から見れば、「ヒトからヒトに咳と高熱がうつる」みたいなイメージで捉えられ、恐怖を煽るのだと思います。(ゾンビに囓られたら、お前も直ちにゾンビになるぞ、みたいな感じ)

今も、新型肺炎の院内感染が話題になっていますが、私には何となく状況が目に浮かびますし、しっかりガウン・マスク・手洗いなどしても、過労や栄養不足で身体が弱っていたり、もともと、中高年で、体力も落ちているような方なら、キャリア(陽性)になりやすいのも理解できます。

本当に感染を防ぐなら、「人と人が数メートル以上、接近しない」ぐらいの措置が必要ですが、現実生活において不可能でしょう。

となると、個々の抵抗力に期待するしかない。

だから、厚生省にしても、有名なドクターにしても、「漠然としたこと」しか言えないのが現状だと思います。

とはいえ、ウイルスが今までにないタイプで、周辺国の実情もいまいちよく分からない。

ネットで流れてくる動画を見れば、人がバタバタと死んでいるし、欧米ではSF映画みたいな格好をした専門家が救助作業にあたっている。

こんな様を見れば、「普通の風邪とは到底思えない」というのが一般人の思いでしょう。

でも、今一番避けるべきことは、感染の拡大もそうだけれど、皆が恐怖心から保健所や病院に押しかけて、医療現場が全く機能しなくなることです。

待合室が混み合うとか、薬やマスクが足りないとかいうレベルの話ではなく、医療者自身が感染して、体調不良で身動き取れなくなる状態です。

医療者を介して、他の入院患者にも感染が広がり、次々に病状が悪化すれば、それだけでも現場は疲弊し、病院そのものがバイオハザードと化してしまいます。

生物兵器のウイルスと人類滅亡を描く 映画『復活の日』にも書いているけれど、私があの作品を見て一番恐ろしいと感じたのは、原因不明の風邪の対応に追われていた医師や看護師が、遂には力尽きて、人的に診療が麻痺してしまう場面でした。

実際、新型肺炎においても、医療関係者の間で発症が相次いでおり、個々の感染対策の落ち度というよりは、元々の体力低下に加えて、ウイルスに晒される量が圧倒的に多いからでしょう。

すでに医療関係者の健康面で、黄色信号が点っている状態で、患者倍増、医療業務の増大、医師・看護師ダウン……となれば、それこそ救いの手が断たれてしまいますから、政府も、厚生省も、楽観論を崩さず、検査も推進せず、国民の自覚に求めるような態度を貫いているのではないでしょうか。

これもあくまで推測ですけど、現場は相当に人手不足だと思いますよ。

平素から、ギリギリの人数でやっているけども、今はさらに過酷な状況。

じゃあ、私たちはどうすればいいの? 

と問われたら、本当に『自衛』としか言いようがありません。

とにかく、ウイルスを身体に取り込まないよう、人混みを避け、消毒やうがいを徹底する。

万一、取り込むようなことがあっても、十分に栄養や睡眠をとって、ウイルスに打ち勝てる身体作りをする。

いわゆる「平素の風邪予防対策」です。

結局、こんな事しか言えないから、ますます国民の不安と不満がつのり、皆が疑心暗鬼になっているのですが……。

ともあれ、高齢者、妊婦、乳幼児、持病など、自覚のある方は、くれぐれも健康管理にお気を付け下さい。

元気な人が「大したことない」と言っても、それは自分には当てはまらないのだと割り切って、体力作りに努めて下さい。

肺炎は「重症の風邪」とは違う

何も知らない方は、『肺炎=重症の風邪』と呑気にイメージしている人も多いかもしれませんが、肺炎は風邪とは全く異なります。

激しい咳や高熱など、諸症状は風邪と似通っていますが、肺炎の本当の恐ろしさは、肺の主要な機能である「換気(外気から酸素を取り込み、血中の二酸化炭素を排出する)」が正常に行われず、ついには血中のpHバランスを崩して、呼吸性アシドーシスに陥ることです。

呼吸性アシドーシスが重症化すれば、意識混濁、けいれん、血圧上昇、頻脈など、様々な問題を引き起こし、非常に危険な状態になります。

下図を見たら、一目瞭然。

私たちが日常的に「風邪」と呼んでいるものは、鼻、喉、気管支の上の方がウイルス感染によって炎症を起こすもので、肺は正常に機能しています。

ゴンゴンと咳が出て辛いけど、肺では、ちゃんと、酸素=二酸化炭素のガス交換が行われ、血中の酸素&二酸化炭素の濃度も正常に保たれています。

しかし、ウイルスの攻撃が肺全体に及び、肺胞と呼ばれる小さな袋が機能不全に陥れば、身体に必要な酸素が十分に取り込まれない上、有害な二酸化炭素がどんどん体内に蓄積して、身体中の組織に大きなダメージを与えるんですね。


図: 肺炎予防.jp 『肺炎と風邪との違い、肺炎のリスクを知って下さい』


図: 済生会病院 『本当にあだの風邪? それ、肺炎かもしれません』 

イメージが掴めない方は、キッチンの換気扇のフィルターを想像して下さい。

中華料理店のように、もうもうと油煙を吸い込んで、フィルターが目詰まりすれば、いくらファンを回しても、空気は清浄化されず、家中に臭気が漂います。

肺もそれと同じ。

一度、目詰まりのような状態になれば、いくら人工呼吸器で酸素を送り込んでも、元には戻りません。

何故なら、人工呼吸器は、治療に必要なエアを送り込むことはできても、肺の代わりに、血液の換気を行う機能は備わっていないからです。

たとえば、腎不全なら、人工透析のフィルターによって、血液中の不要な成分を除去し、血液を正常な状態に調整して、体内に戻す代替機能がありますが、人工呼吸器は、エアポンプの役割を果たすだけで、肺胞の代替にはならないんですね。

体力のある人ならば、酸素を補給し、呼吸の手助けをする過程で、肺やその他の組織も修復し、本来の呼吸機能を取り戻すことができますが、高齢者、乳幼児、他の疾患を合併している患者さんなど、元々の体力が弱ければ、修復も追いつきません。

油煙がもうもうと立ちこめる室内に閉じ込められたら、どんな健康な人も窒息してしまうように、肺というのは、取り替えも利かず、酸素不足や二酸化炭素の貯留などで、その他の臓器もダメージを受ければ、回復するのは決して容易ではないのです。

そんでもって、肺=呼吸器というのは、命ある限り、動き続ける組織です。

たとえば、肝不全や腎不全で意識混濁し、寝たきりになっても、呼吸器に問題がなければ、割と安らかに寝ていられます。

しかし、呼吸器不全に陥れば、想像を絶するような苦しみがあります。

健康な人でも、鼻を洗濯バサミでつまんで、口にはストローをくわえて、一日過ごしなさいと言われたら、あまりの息苦しさに、室内を歩き回ることもできないでしょう。

でも、それが、呼吸器疾患の人が味わう苦しさです。

吸っても、吸っても、必要な酸素が体内に取り込まれず、手足は痺れ、意識は朦朧として、ちょっと動いただけで、心臓がバクバク鳴り出す。

少しでも、苦しみを忘れようと、ベッドに横になり、目を閉じても、身体は酸素を求めて、必死に呼吸器を動かし続けますから、眠ることもできません。

頼む、呼吸器、止まってくれ! とお願いしても、酸素が取り込まれなければ、肉体は死んでしまいますから、それこそ死の際まで、呼吸器(心臓も含めて)は、ハアハアと運動を続けます。傍で見ている方が倒れそうなほどの苦しさです。でも止められません。止めたら、直ちに死んでしまうから。

私が現場にいた頃の肺がんの患者さんたちは、皆、オーバーテーブルに突っ伏し、座ったまま、最後を迎える人が大半でした。

肺もほとんど機能せず、空気の通り道も塞がって、ストローをくわえた状態になると、あまりの息苦しさに、横になることもできず(身体を水平にすると、横隔膜が上がって、余計で呼吸器が圧迫される)、みな、座って過ごす以外になくなってしまうのです。ずっと座って過ごすから、お尻に褥瘡ができて、皮膚が真っ黒になって。みな、「五分でいいから横になりたい」と涙を流しながら、息苦しさに耐える日々でした。

病気というと、心筋梗塞や脳梗塞の方が怖いイメージがあり、確かにその通りですけど、肺炎(呼吸器不全)のように、想像を絶する苦しみが待ち受けている疾患もあります。

今度の新型ウイルスも、「インフルエンザと同様」「致死率もそれほど高くない」「軽症ですむ人も多い」と言われ、確かにその通りですけど、自分や家族がその2パーセントに該当して、想像を絶する呼吸苦に見舞われても、「運が悪かった」で諦めがつくのか。

知らない人は、「人工呼吸器=ゴムのマスクに酸素チューブが付いている」ぐらいにしか想像しないかもしれませんが、いよいよ状態が悪化して、気管挿管が必要になった時、気管チューブの長さがどれくらいか知ってます?

経口挿管(口からチューブを入れる)で、だいたい、20センチ~25センチです。

チューブの太さも、7ミリから8ミリほどあります。

そんな太いチューブを、口からぐいぐい、胸の奥まで突っ込まれて、「ああ、先生、これで呼吸が楽になりました」と、悦びの笑みを浮かべることができると思いますか?

っつーか、喋れません。

ベッドから降りることも、一人で寝返りを打つことも無理です。

その状態で、何日、何週間を過ごすのです。

装着するだけで、大変なストレスです。

たとえ、致死率2パーセント、重症化10パーセントみたいな話でも、この世にそういう苦しみを負う人がいる限り――まして、防ごうと思えば、防げたかもしれない感染症について――「大したことない」では済まされないのですよ。

肺炎=風邪の重いの……ぐらいに、簡単に考えている人があるならば、本当に考えを改めて欲しいし、症状の有る・無しに関わらず、「うつさない・もらわない」を気に懸けて頂きたいと思います。

抗体とは有り難いもの ~水疱瘡と麻疹に関する

話のついで。

近年、水疱瘡も麻疹も風疹もおたふく風邪も、良質なワクチンが開発され、公的にも支援されて、手軽に抗体が獲得できる時代になっています。

昭和の時代、これらの感染症によって、生きるか死ぬかの闘いを強いられた私にとっては、本当に羨ましい限りです。

私は、三歳の時に麻疹、七歳でおたふく風邪、九歳で水疱瘡を経験しました。

どれも重症で、うちの家族は、その度に私の死を覚悟したそうです。(10歳まで生きられないかもしれない、という話だった)

家族の話では、麻疹が重症だったせいか、みるみる痩せ細り、虚弱体質になったそうです。

特に、九歳で経験した水疱瘡は、医師も顔を背けるほどの重症でした。

お腹一面に、菓子箱のプチプチみたいな水疱が現れ、顔、内臓にも広がり、激しい痛みから食べ物も十分に飲み込めず、ついには足の裏から点状に出血して、歩行さえできなくなりました。

また、目の周りを掻いたせいで、異常に目やにが増えて、ついには瞼が開かなくなり、それを取り除く為に、特殊な洗浄液で拭き取ったら、睫毛がごそっと抜けて、今もそこだけ歯抜けみたいになっています。

今はワクチン接種が普及して、罹患する子供も減ったせいかしれませんが、水疱瘡なんて、ニキビみたいなのがプチプチっとできて終わり、と軽く考えている人も多いような気がします。

確かに、私のクラスメートのように、プチプチっで終わる子もありますが、一方で、私のように、全身に水疱ができて、内臓にまで広がり、ついには足の裏から点状に出血して、二週間以上、壮絶な苦しみを味わう子供もいます。

私が冷静だったのは、子供の頃から家庭医学大事典や保健と人体の図鑑に親しみ、プチ・ブラックジャックみたいな知識があったからです。
幼くして免疫の機序を理解し、自分で自分の症状を観察する余裕もありました。(いわばプロ患児)

何も知らない子どもなら、足の裏から出血し、瞼が開かなくなった時点で、パニックになると思います。

それから、○○年後。。

私が妊娠中に、一歳八ヶ月になる息子が、保育園で水疱瘡に感染して、全身に水疱ができる惨事となりました。

当時は水疱瘡のワクチンも普及しておらず、本格的な公的支援が始まったのは、下の娘が生まれた翌年だったからです。(現住国の話)

しかも、罹患歴のない家人までもが水疱瘡を発症し、こちらも全身に水疱ができる重症となりました。

私は、妊娠28週から31週にかけての身重な状態で、重症の水疱瘡患者を家の中に二人も抱えて、彼等の面倒を見ていたのですよ。

でも、九歳の時に水疱瘡の抗体を獲得したおかげで、私は発熱もせず、どこも痛みもせず、水疱一つ、できませんでした。

翌月末には、元気な赤ちゃんを出産して(36週)、これまた新生児室ナンバーワンのいい子ちゃん(看護師が言ってた)
この子も今は中学生ですが、生まれてこの方、発熱したのは1度だけという、超人ハルクのような健康優良児です。

その時、つくづく思ったのが、免疫機能と抗体の偉大さです。

抗体なんて、自分の目で見ることはできないし、普通一般の血液検査で存在に気付くものではないです。

でも、九歳のあの日からずっと、終生免疫を獲得して、こんな大惨事にも、私とお腹の子供を、しっかり守ってくれたんですね。

現代は、私が生きるか死ぬかの闘いでようやく獲得した抗体を、一本の注射で得ることができます。

風疹や水疱瘡のウイルスを甘く見て、おかしな反ワクチン主義を唱えている人もありますが、これらが重症化すれば、どれほどの痛み、苦しみに苛まれることか――あの日、足の裏の腫れと痛みに苦しみながら、床を這うようにしてトイレまで行ったことを私は生涯忘れないし、おたふく風邪で耳下腺が腫れ上がり、口を一センチも開くことができなくて、水を一飲みする度に激痛が走ったことも、お腹一面、ゾンビみたいな水疱ができたことも、今でも生々しく思い出すし、自分の子供には絶対味あわせたくないものです。

Photo : http://www.the-solute.com/movies-by-the-fives-march-1995/

初稿: 2014年10月10日

海洋小説 《曙光》 MORGENROOD
ブックカバー
宇宙文明を支える稀少金属ニムロディウムをめぐる企業の攻防と、海洋社会の未来を描く人間ドラマ。心に傷を負った潜水艇のパイロットが、恋と仕事を通して成長する物語です。