飛べない蝶にも意味はある 映画『パピヨン』 ドガは本当に負け犬なのか?

2020 7/08
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【映画コラム】 ドガは本当に負け犬なのか?

周回遅れで、スティーブ・マックイーン主演の映画『パピヨン』を見ました。

『風と共に去りぬ』と同じく、世界中の誰もが結末を知っている名作なので、ずばり結末から申せば、殺人の濡れ衣を着せられた『蝶(パピヨン)』の入れ墨をもつ男(スティーブ・マックイーン)が、何度も脱獄を図っては失敗し、遂には、断崖絶壁から海に飛び込み、自由を得る──という物語です。

この映画の感想となると、十中八九は、海に飛び込んだスティーブ・マックイーンが英雄視され、その場に残ったもう一人の囚人ドガ(ダスティン・ホフマン)は、己の人生に何をも為せなかった負け犬のように言われますが、果たしてそうでしょうか。

私も10代20代の頃なら、「スティーブ・マックイーン、格好いい! やっぱ人間はかくあるべし」と単純に賞賛していたかもしれません。

でも、年を取ってから見ると、その場に残ったドガにも、ドガなりの矜持と諦観があるような気がしてならないのです。

ラスト、断崖から飛び降りることを決意したパピヨンと、それに気圧されるように付いて行くドガ。

だけども、ドガはこの島に残ると決めます。
先の脱獄で足に大怪我を負い、今も不自由な身であるドガにとって、断崖から海に飛び込むなど、それこそ自殺行為だからです。

パピヨンはドガの心情を理解し、今生の別れを告げます。

この場に殘ることを決めるドガ

命がけで海に飛び込み、椰子の実の筏にしがみつくパピヨン。

飛び込みに成功するパピヨン

それを見届けるドガ。この微笑みは友の勇気と幸運を心から祝福している。

友のチャレンジを祝福するドガ

だが、次の瞬間、ドガの微笑みは涙顔に変わる。

涙顔にかわる

この表情を、「パピヨンのように飛べなかった自身への悔い」と取る人もあれば、「友と別れた悲しみ」と感じる人もあります。

あるいは、これからも延々と続く孤独と貧窮に対する絶望。

自身の無力を恥じる涙、等々。

解釈は人それぞれです。

しかし、ドガはパピヨンのように、遠くまで泳げる体力も気力もなく、自身で「ここまでが限界」と知っています。

パピヨンと同じように断崖から飛び込んでも、結局、大海原のど真ん中で力尽きたかもしれません。

そう考えると、ドガはドガなりに自分を貫いたと言えるし、死ぬまであの島で暮らしたとしても、それはそれで納得したのではないでしょうか。

一般論では、パピヨンの方が勇ましく、理想的な生き方と語られますが、ドガにもドガの考えがあり、ドガらしい人生があります。

どちらが勝者、どちらが負け犬という訳でもありません。

どんな人生であれ、最後まで生き抜いたなら、ドガも「悲運に打ち克った」と言えるのではないでしょうか

飛べない蝶にも意味がある。

それはダスティン・ホフマンの演技を見れば分かります。

Amazonのレビューに「ダスティン・ホフマンが演じる意味があったのか」というコメントがありますが、ラストのあの表情は、ダスティン・ホフマンでなければできない演技でしょう。

ちなみに、この断崖から飛び降りるスタントは、人形ではなく、伝説的なスタントマン、ダー・ロビンソンです

スティーブ・マックイーンがラストに叫ぶ、Hey, you bastards, I'm still here! (お前ら、くそったれども、オレはまだ生きてるぞ!)という台詞がいいですね。

この「You」が意味するところも、意地悪な看守や、逃げ出す勇気のない囚人ではなく、「試練を与えた神や運命に対して」という見方もあり、私も大いに同意します。

また、こんな風に、10代20代とはまったく違った解釈ができる点が、年齢を重ねることの面白さかもしれませんね。

※ 社会(現実)の囚われ人となっても自由を諦めないパピヨン
自由を諦めないパピヨン

DVDとAmazonプライムビデオの紹介

ラオウ・内海賢二サマと宮部昭夫の二種類の吹き替えが収録された愛蔵版。
マニアックなカスタマーレビューが面白い。

パピヨン スティーヴ・マックィーン没後30年特別愛蔵版 [DVD]
出演者  スティーヴ・マックィーン (出演), ダスティン・ホフマン (出演), ロバート・デマン (出演), ウッドロー・パーフリー (出演), アンソニー・ザーブ (出演), フランクリン・J・シャフナー (監督)
監督  
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