太陽が海の恋人なら、月は海の守り神。
夜の海を照らすのは、闇夜に輝く月だから。
星が旅人を導くように、月はその航路を照らして守る。
もし夜に月が無かったら、たちまち暗がりに迷うだろう。
あれは昼の中では用をなさないが、夜には無いと困るのだ。
そんな光のしずくが、夜の底で、輝く白い珠になった。
真珠の言葉は、『純粋無垢、健康』。
宝石というよりは、魂の結晶。
胸の底に落ちた涙が固まって出来たような。
磨き抜かれた人の心は、真珠のように美しい。
それは昼の日中には目立たないけれど、夜に迷えば、明るく映えて見えるのだ。
この世には、闇に落ちてはじめて分かる美しさがある。
真珠は、そんな人の心によく似ている。
初稿 1999年秋