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人こそ資本 深海の鉱物のような人間の可能性と『捨てるな』の精神

『人こそ資本』 深海の鉱物のような人間の可能性と『捨てるな』の精神

人こそ資本 深海の鉱物のような人間の可能性と『捨てるな』の精神

アイデアは資本に優先する

『アイデアは資本に優先する』というのは、HONDAの創業者、本田宗一郎の言葉です。

たとえ十分な資本がなくても、設備や技術が不足しても、優れたアイデアはあらゆる障壁を超克して、世界を変えるという教えです。

もちろん、アイデアが優れているだけでは話になりません。

何が何でもそのアイデアを形にするのだ、という強い意思があってはじめて、不可能も可能になります。

ある意味、強い意思と情熱は、アイデアや資本にも優先する……といっても過言ではないでしょうね。

漠然と世の中を変えたい、いいものを作りたいと願っても、手足を動かさないことには形になりません。

また、手足を動かしたところで、必ずしも上手くいくとは限りません。

それでも、どんなことをしても、成し遂げようという気持ち。

そこに創意工夫が加わって、優れた事業として結実するのでしょう。

どん底から這い上がってきた本田宗一郎だからこそ、説得力のある言葉です。

このパートは海洋小説『曙光』(第一章・運命と意思)の抜粋です。詳しくは作品概要をご参照下さい。
※ WEBに掲載している抜粋は改訂前のものです。内容に大きな変更はなく、細部の表現のみ訂正しています。

小説のあらすじ
宇宙文明の先端技術を支える稀少金属(レアメタル)『ニムロディウム』は、巨大な鉱山会社ファルコン・マイニング社の支配下におかれ、市場のみならず、政治、経済、あらゆるものが寡占状態にあった。

ファルコン・マイニング社とファルコン・グループの一党支配に風穴を開けるべく、MIG(マクダエル・インダストリアル・グループ)の長、アル・マクダエルは、惑星表面積の97パーセントを海洋で覆われた海の星・アステリアの水深3000メートルに眠る海台クラストを採掘し、独自の技術でニムロディウムを生産することを試みる。

しかし、本採鉱を前に、プロジェクト・リーダーが謎の失踪。

急遽、アルは、海洋技術に長けて、有人潜水艇の操縦もできるパイロットのリクルートを試みるが……。

【小説の抜粋】 人間の可能性と『捨てるな』の精神:人こそ資本

Noblesse oblige(ノブレス オブリツジ).(高貴な者はそれにふさわしい社会的責任と義務を有する

それが祖父の教えの真髄だ。

祖父の高潔な精神と生き様は、アルと姉のダナに強い影響を与えた。

ビジネス会話の隠語としてラテン語を教えてくれたのも祖父なら、合金設計の技術を面白く語って聞かせてくれたのも祖父だ。愚かなことを口にすれば、実妹だろうが、次男の嫁だろうが厳しく叱責し、家族に煙たがられることもあったが、アルは一本芯の通った祖父が好きだった。祖父の話を聞いていると、人間の意思はこの世のどんな権力や財力にも勝るような気がするのだった。

祖父はしばしば言っていた。

「自分が明日死ぬなど、誰も露ほども考えない」

その言葉通りに祖父は死んだ。八十一歳だった。

アルが十二歳になって間もなく、なかなか朝食に姿を現わさないので、心配して見に行くと、祖父は自室のバスルームで口を半開きにして倒れていた。夕べ祖父と話した時は、今日もチェスで一戦を交える約束だったのに。

そんな祖父の教えの中で最も心に残っているのが「捨てるな」という言葉だ。

人間には無限の可能性がある。自分を捨てることは、一切の可能性を捨てることなんだよ

それは自分以外の人間にも言えることだ。

事業の要は「モノ」「カネ」「ヒト」。
モノとカネには限りがあるが、ヒトには無限の可能性がある。

工場の組み立てラインを管理するのもヒトなら、画期的な商品を編み出すのもヒトだ。
優秀な人材がなければ、百億の予算も、世界有数の設備も、用を成さない。

人こそ資本

それはそのままアルの経営哲学になった。

人それぞれ長所も短所もあるが、アルは深海に眠る鉱物みたいな人間が好きだった。

数十億年の星のエネルギーをぎゅっと内に秘めたような兵(つわもの)だ。

 これぞと思う人材を得る為なら、フォルトゥナ号を駆って、どんな遠くでも会いに行った。

 そこに可能性を感じたら、一度は切り捨てられた人材でも拾い上げ、回生のチャンスを与えた。

 そうしてアルに見出された者たちが次々に再起の機会を得、予想以上の成果を上げたことから、いつしかアルは「拾いの神」とあだ名されるようになった。

 フォルトゥナ号が降り立つ時、必ず誰かの運命が変わるのである。

【リファレンス】 本田宗一郎と愛される企業

私の学生時代には本田さんもご存命でしたから、新聞のインタビュー記事やメディアでリアルな声を聞く機会も多かったです。

世界のHONDA。

敗戦後の混乱から立ちあがった鉄の人であり、チャレンジャーですね。

本田宗一郎 「一日一話」より 得手に帆を上げて』にも紹介していますが、とことん自分の理想を追求したモーターオタクでもあったと認識しています。

『アイデアは資本に優先する』と同じくらい好きなのが、『企業は製品が全て』という言葉。

理念がどう、経営方針がどう、つべこべ説明しなくても、製品を一目見れば企業の全てが分かる……というのが、HONDAの真髄でした。

今に喩えれば、iMac や iPhone がそうですね。

食品なら、ガリガリ君とか、カルビーとか。

企業がつべこべ説明しなければ伝わらない製品というのは、一見、素晴らしいように見えて、魅力に乏しいのかもしれません。

世の中には、Appleキチガイ、KAWASAKI狂い、みたいな人がいて、そのメーカーしか買わないユーザーも少なくないですが、よくよく話を聞いてみれば、性能うんぬん以前に、存在感とか、コンセプトとか、直感で惹かれて、まるで異性に恋するが如くですよ。うちの隣人も、外国の方ながら、「車はHONDAしか買わない」というHONDAの信奉者ですし(ありがとうございまーす)。

でも、本当は、そういうのが企業にとって一番幸せなのかもしれませんね。

一位でなくても、万年中堅でも。

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 著者  本田 宗一郎
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第一章・運命と意思 Kindle Unlimited 版

稀少金属『ニムロディウム』の発見により、宇宙開発技術は劇的に向上するが、世界最大のニムロデ鉱山がファルコン・マイニング社の手に落ちたことから一党支配が始まる。 海底鉱物資源の採掘を目指すアル・マクダエルと潜水艇パイロットのヴァルター・フォーゲルとの出会い、生の哲学と復興ボランティアのエピソードを収録。
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