notes 美容室

他人の首に剃刀をあてられるのは、他人に信用されているから

notes 美容室

寺山修司の戯曲『血は立ったまま眠っている』より

床屋おれが床屋になったのはなぜだと思うね。
南小路毎日鏡をおおっぴらに見られるからですね。
床屋いいや違う大違いだ
おれはな、いまの時勢みたいに人が信用できなくなってるときに、他人の首にじゃりじゃりっと剃刀をあてる仕事をしていられるのは、自分が他人に信用されているからだと思ってるのさ。な、そうだろう。誰だって仇の剃刀に自分の喉をあずけっこねえやな。
<中略>
おれは近頃ふっと思うんだがな。だんだんとこう時勢がわるくなってくると床屋がふえるんじゃないかと思ったりしてね。町中の男という男がみんな床屋になってしまったらどうだろうね、と。ぞっとすることがあるんだよ。
朝、店のあめん棒がくるくると廻り出す。無論町じゅうの全部の家の前でだ。客は一人もいない。男たちはめいめいに鏡に向かって自分の首を剃りはじめる。自分さえ信用出来なくなった奴は、ひょい、ずばりっ、だ。な、南小路。
信用ってことが何より大事な世の中じゃねえか

床屋でも、歯医者でも、他人に刃物を向けられる時の、あの得もいわれぬ不安と違和感。

相手がその気になれば、こっちの命など一瞬で絶つことができる。

そんな意図はないと分かっていても、相手も人間、いつ何が起こるか分からないし、事故だってあり得る。

それとも、ゴルゴ13みたいに、常に体のどこかに小銃を隠すか?

信用がなければ、診察台にも上がれない……というのは、まったくその通り。

 両手いっぱいの言葉―413のアフォリズム (新潮文庫) (文庫)
 著者  寺山 修司
 定価  ¥ 637
 中古 57点 & 新品  ¥ 1 から
 5つ星のうち 4.3 (11 件のカスタマーレビュー)

Tags: , , ,

寺山修司の関連記事

少女

つきよのうみに いちまいの てがみをながして やりました / つきのひかりに てらされて てがみはあおく なるでしょう / ひとがさかなと よぶものは みんなだれかの てがみです 海は、それを見る人の心の鏡であり、それ自体が何かを物語るわけではない。だから、海をどう表現するかを見れば、その人の心が分かる。海が美しいのではなく、海を想う人の心が美しいのである。

海 夜

マッチ擦る つかのま海に 霧ふかし 身捨つるほどの 祖国はありや 有名な寺山修司の短歌だが、なぜ私はこの時、作者が煙草を吸い、その銘柄は何だったのかと考えるのだろう。 ピース? ハイライト? まさかチェリーということはないだろう。 そして、 […]

オランダ 海岸

https://flyingquestions.tumblr.com/post/162388092675/街中の質問の写真について紹介します2004年東京丸の内周辺エリアに大小さまざまな365の質問が氾 8歳の時、私のことをとても可愛がって […]