notes 美容室

他人の首に剃刀をあてられるのは、他人に信用されているから

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寺山修司の戯曲『血は立ったまま眠っている』より

床屋 おれが床屋になったのはなぜだと思うね。
南小路 毎日鏡をおおっぴらに見られるからですね。
床屋 いいや違う大違いだ
おれはな、いまの時勢みたいに人が信用できなくなってるときに、他人の首にじゃりじゃりっと剃刀をあてる仕事をしていられるのは、自分が他人に信用されているからだと思ってるのさ。な、そうだろう。誰だって仇の剃刀に自分の喉をあずけっこねえやな。
<中略>
おれは近頃ふっと思うんだがな。だんだんとこう時勢がわるくなってくると床屋がふえるんじゃないかと思ったりしてね。町中の男という男がみんな床屋になってしまったらどうだろうね、と。ぞっとすることがあるんだよ。
朝、店のあめん棒がくるくると廻り出す。無論町じゅうの全部の家の前でだ。客は一人もいない。男たちはめいめいに鏡に向かって自分の首を剃りはじめる。自分さえ信用出来なくなった奴は、ひょい、ずばりっ、だ。な、南小路。
信用ってことが何より大事な世の中じゃねえか

床屋でも、歯医者でも、他人に刃物を向けられる時の、あの得もいわれぬ不安と違和感。

相手がその気になれば、こっちの命など一瞬で絶つことができる。

そんな意図はないと分かっていても、相手も人間、いつ何が起こるか分からないし、事故だってあり得る。

それとも、ゴルゴ13みたいに、常に体のどこかに小銃を隠すか?

信用がなければ、診察台にも上がれない……というのは、まったくその通り。

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初稿: 2018年1月19日 @ 8:10 PM

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