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忌野清志郎とRCサクセション ~人の目を気にして生きるなんて、つまらないことさ

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【音楽エッセイ】 人の目を気にして生きるなんて、つまらないことさ

私が生まれて初めて訪れたロック・コンサートは、『忌野清志郎&RCサクセション』でした。

中学三年生の夏のことです。

当時、躾の厳しい家庭では、「ロックなんて、不良の聴く音楽」と言われて、我が家でも、ロックなど、とんでもない話でした。

歌番組でも、山口百恵ちゃんやキャンディーズが歌っているようなアイドル歌謡番組しか見せてもらえなくて、ちょっと派手なバンドが出てきたら、「こんなん見たら、不良になる」とすぐにチャンネルを変えられていたぐらいです。

そんな私に、忌野清志郎 & RCサクセションを教えてくれたのは、同級生のヒロミちゃんでした。(ついでに『ガラスの仮面』も)

彼女がRCの大変なファンだったのです。

ある日、「京都会館で、RCのコンサートがあるから、どうしても行きたい。ねえ、まりちゃん、一緒に行って」と涙目でお願いされ、可愛い女の子に頼まれると、イヤと言えない私は、叱られるのを覚悟で、祖母に「友達とRCのコンサートに行きたい」と打ち明けました。

すると、意外や意外。

あっさりがお許しが出たのです。

「あんたも、そんな年頃になったんやなぁ」と。

お小遣いまで渡してくれて。

感激しました。

*

その後、私は、さっそくヒロミちゃんとお出かけの打ち合わせ。

「着ていくものを考えなくちゃ」というヒロミちゃんに、「え? 着ていく物って、普通の格好じゃダメなの?」と言うと、

「何を言ってるのよー。RCのコンサートよ。みんな、すごい格好してくるんだから、私たちも頑張らなきゃ」

「えー、頑張るって、何を???」

「ダサイのはダメだってこと」

で、私が紺のタイトスカートに白いブラウスで行くつもりだと答えたら、

「恥ずかしいから、止めて (´。`)」とヒロミちゃん。

それで、ヒロミちゃんと四条河原町に一緒に買い物に行くことになったのですが、それも昔は「不良」と言われて、決して許されない行為でした。

それも親からOKが出たのだから、異例中の異例です。

で、生まれて初めて、子ども同士で四条河原町のブティックに買い物に出掛け、ヒロミちゃんの見立てで、大柄なトロピカルフルーツがプリントされた黄色いアロハシャツを購入しました。それにジーンズを合わせて、京都会館に出掛けたのです。(今でもそのシャツのことは鮮明に記憶しています)

京都会館に到着してみれば、なるほど、会館周囲は、パンクな格好をしたお兄さん、お姉さんでいっぱいで、観客を見ているだけで圧倒されました。

ヒロミちゃんに手を引かれて、ホールに入ってみれば、ほぼ満席で、コンサートが始まる前から、大変な熱気を感じたものです。

そして、忌野清志郎さんの登場。

演奏が始まると、観客は総立ちで、私もヒロミちゃんに促されて席を立ちました。

クラシックのコンサートでは絶対に考えられないアクションに、どう振る舞っていいか分からず、私はひたすら手を打ち、ヒロミちゃんと一緒に「清志郎~っ」と叫んでいたのでした。

それから程なくして、YMOの「教授」こと、坂本龍一さんと共演した『い・け・な・い ルージュマジック』が資生堂のキャンペーンソングとして大ヒットし、
歌謡番組でも頻繁に清志郎さんの姿を目にするようになりました。

でも、ヒロミちゃんに言わせれば、『ルージュマジック』は、清志郎さん自身もコメントしているように、完全に大衆ウケを狙った作品で、本来のRCの作品とは違う、ということでした(真性ファンは、ちょっとお怒りモード)

それでも『ルージュマジック』は私の大好きな曲だし、『人の目を気にして生きるなんて つまらないことさ』という歌詞にも大いに共感したものです。

「ビジュアル系の元祖」と呼ばれるアーティストはたくさんいますが、奇抜なファッションに、バイセクシュアルなメイク、鼻に引っかけたような独特の歌唱や、世相を皮肉った、機知に富んだ歌詞など、オリジナリティあふれる世界を作っていたのは、清志郎さんが最初ではないかな……と思ったりします。

こちらが「大衆ウケ」を狙って作曲された『い・け・な・いルージュマジック』

坂本龍一さんとのショート・フィルムには、なんと、男同士の艶っぽいキスシーンもあり、ファンにはこたえられない逸品です。

うちの親はこういうのを嫌っていたわけですね^^;
ゆえに彼のコンサートに行くことが、私にとって、エポックだったと。

こちらは私のお気に入りの『トランジスタ・ラジオ』。

う~ 授業をさぼって 日の当たる場所にいたんだよ

という歌詞が大好きでした。

リヴァプールから、ホットなメッセージ、空にとけてった

これはリヴァプール=ビートルズを示唆してるのか。

清志郎さんが歌うと、何でもない歌詞が空に広がるようで、伸びやかな気持ちになります。

『雨上がりの夜空に』もいいですね。

ドライブしていたら、この曲を思い出します。

どうしたんだ ヘイヘイ、ベイビー バッテリーはビンビンだぜ いつものように決めて ぶっ飛ばそうぜ!

ヒロミちゃんに言わせたら、『EPLP』がRCの最高傑作らしい。

こちらのLive版に収録されている、『よォーこそ』は、コンサートの第一曲目で歌われるナンバーなんですね。

清志郎さんの訃報に寄せて

【追記 2009年5月7日】

私はヒロミちゃんほど熱烈なファンではなかったけど、それまで健全なアイドル歌謡か、クラシックしか聴いたことがなかった私にとって、清志郎さんのド派手メイクや、「愛し合ってるかぁ~い」のシャウト、授業をサボって、屋上でラジオを聴く不良な歌詞は、親に刷り込まれた価値観を打ち破り、「自分の目で見て、自分で判断する」という、大人への階段の第一歩だったように感じます。

『い・け・な・いルージュマジック』で歌われる、人の目を気にして生きるなんて つまらないことさは今でも私の座右の銘。

中学卒業以来、一度も会ったことのないヒロミちゃん。

きっと、日本の何処かで、清志郎さんの訃報に涙を浮かべていることでしょう。

不器用で、頑なだった、私の肩を強く押して、ついでに勉強の仕方も教えてくれた、あの日のこと、今でも忘れていません。

一緒に、RCサクセションのコンサートに行ったことも。

トランジスタラジオのように、『空にとけていくような』……清志郎さんの思い出です。

初回公開日 2009年5月7日

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