親は死んで子どもの血肉となる ~鮭の産卵より

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【コラム】 自然の妙 サケの産卵

大海で成長した鮭が、故郷の川を目指して一斉に遡上し、川床に卵を産み付けた後、大量に死んでいく様は、壮絶でもあり、心動かされる風景でもあります。

普通は、産卵した後、子供が孵化するまで親が守り育て、自分で餌が取れるほど育ってから別れゆくものですが、鮭は産卵後、数日で命が尽きてしまいます。でも、親が死んで、自分の身を餌として捧げるからこそ、子供も過酷な自然で生き延びることができます。

また、大量の鮭の死骸は、森の栄養源となりますし、川にやって来る大量の鮭はお腹を空かせた熊のご馳走でもあります。
私も時々、有り難く頂いております。

この世に無駄な鮭は一匹としてなく、全てが生命の連鎖の中で何らかの役割を果たしているんですよね。

このパートは、主人公とヒロインが初めて磯海岸にデートに出かける場面です。

彼は彼女を喜ばせるつもりで、自分の好きな科学番組『オーシャン・プラネット』のビデオを持参します。

自分の好きなものは、彼女も気に入ってくれるだろうという、子供っぽい期待です。

それは彼女の期待していたモノとは全く違いましたが、彼女は付き合いで鑑賞して、ちゃんと感想も言ってあげます。

『愛される秘訣』って、こんな些細なことなんですよね。

【小説の抜粋】 鮭の一生

海洋情報ネットワークの構築に向けて、西に東に奔走するヴァルターは、恋人のリズの束の間の休息を楽しむ。

デートに来ても、父親のことを案じるリズに対し、ヴァルターは科学番組の『鮭の産卵』を見せ、親は自分が死しても、子どもの栄養になる自然と生命の不思議を話して聞かせる。

関連のあるエピソード → 
ウミガメの産卵 ~見守るしかない親の愛と子供の人生

このパートは『海洋小説『曙光』(第三章・海洋情報ネットワーク)』の抜粋です。作品詳細はこちら

【リファレンス】 鮭の産卵の動画

有名な『鮭の産卵』のビデオ。何百万という鮭が故郷の川に戻り、次々に産卵して、その生涯を終えます。後には、おびただしい数の死体が川辺に打ち上げられますが、いずれ生まれくる稚魚の養分となり、新たな生命のサイクルが始まります。一方、北上する鮭は、森の動物にとって最高のご馳走でもあります。鮭とクマの戦いは有名ですね。鮭一匹といえど、この世の役に立っています。

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この記事を書いた人

石田 朋子のアバター 石田 朋子 サイト管理人

作家・文芸愛好家。80年代サブカルチャーの大ファン。普段はぼーっとしたおかあさんです。昭和の名作漫画はほとんど空で台詞が言えるほどの元祖ヲタ。車と猫が大好きな東欧在住。サイトでは作品紹介ではなく、作品を題材とした文芸コラムを掲載しています。

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