荒井由実『さみしさのゆくえ』~人生の美しい翳り

一時期、どれほど親しくても、望まぬ別れに至ることがある。

ほんの少しの行き違いが雪崩みたいに大きくなり、解り合えぬまま終わったり、心にもない言葉で傷つけてしまったり。

どうして素直に「好き」と言えないのか。

ずっと、側に居て欲しいので、気のない振りをしてしまうのか。

過ぎ去ってからやっと気がつく、その人の大切さ。

でも、気付いた時には何一つ、戻ってはこないのだ。

*
 
誰だって、最初から、上手に愛せるわけじゃない。

*

でも、別れたり、振られたり、失恋するのは不幸なんだ、独りでいるのは恥ずかしいことだと――そんな風に思いだしたら、人はいつ愛し方を学ぶのだろう?
 
誰の人生にも翳りはある。 

ただ、それを口に出すか、出さないかの違いなのだ。

悪ぶるわたししか知らず あなたは旅立って行った
お互い自分のさびしさを抱いて それしか持てなかったの

こんなわたしでもいいと いってくれた一言を
いつまでも大切にしてる私を笑わないで

したいことをしてきたと 人は思っているけど
誰にも心の翳りはわかるものじゃないから

残った都会の光見つめて たたずめば
その時 私の中で
ほんとに 何かが終わる

幸せを感じるには、同じくらいの翳りが必要で、それと静かに向き合える人だけが、人生の真の美しさを知るようになる。

「恋をしてよかった」と心から思えるのは、いつもそれが過ぎ去ってから。

本当の幸せは、恋の只中にではなく、つい傷つけてしまったあの人の幸せを、心の底から願えるようになった時、得も言われぬ愛しさの中で感じるものではないだろうか。

『さみしさのゆくえ』は本当に美しい。これをユーミンの最高傑作と言う人も少なくない。

おそろしいのは、これが10代の時に書かれたということ。

心がしっとりと泣きぬれる名曲です。

CDとSpotifyの紹介

これも名曲ぞろいです。「中央フリーウェイ」「グッド・ラック・アンド・グッド・バイ」「14番目の月」と、ユーミンファンには外せないタイトルが揃っています。
ファンの中にも「荒井派」と「松任谷派」があって、荒井時代の方がよかったという人も少なくないですが、これを聞けば納得です。
ああ、ユーミン、どうしてあなたはそのままで居てくれなかったの?? と、こぼしたくなるような一枚です。

14番目の月 by ユニバーサル ミュージック (e)
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この記事を書いた人

石田 朋子のアバター 石田 朋子 サイト管理人

作家・文芸愛好家。80年代サブカルチャーの大ファン。普段はぼーっとしたおかあさんです。昭和の名作漫画はほとんど空で台詞が言えるほどの元祖ヲタ。車と猫が大好きな東欧在住。サイトでは作品紹介ではなく、作品を題材とした文芸コラムを掲載しています。

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