何を見ても同じにしかパイロットにいい仕事はできない

何を見ても『同じ』にしか見えない潜水艇パイロットにいい仕事はできない

何を見ても同じにしかパイロットにいい仕事はできない

【概要】第四章 ウェストフィリア・深海調査 出航

ダナ・マクダエルから、北方の火山島ウェストフィリアと、青い貴石『ブルーディアナイト』にまつわる悲劇を聞かされたヴァルター・フォーゲルは、決意新たに出航する。

しかし、肝心の深海調査は動機も前準備も杜撰そのもので、スタッフの士気もバラバラだ。ファルコン・マイニング社の使いとして調査に同行したオリアナは、相変わらず挑戦的で、ヴァルターの忠告を聞こうともしない。

皆が不安に感じる中、第一回目の潜航が始まり、ヴァルターは新米パイロットのユーリを補佐して、海洋学者のノックスと共に、水深2000メートルのメテオラ海丘のカルデラ底を目指す。

真摯に努めを果たそうとする新米パイロットと、研究者らの熱意により、現場の士気も徐々に高まるが、そこにファルコン・マイニング社のロバート・ファーラー社長が視察に訪れ、「学説も金で買える時代だよ」と、科学者の良心に背くことを強要する。

恋人リズの命を人質に取られ、身の安全か、科学的真実か、板挟みになったヴァルターに「その場に行けるのは一度きりだよ」と力強い助言を与えてくれたのは、かつての上司、ランベール操縦士長だった。

大勢が潜水艇からの実況を見守る中、三度目の潜航が始まり、ヴァルターはアシスタントを務めるゾーイに「理由などなくても生きている深海の世界」を語り、思いがけないものを発見する。

【リファレンス】 何を見ても『同じ』にしか見えないパイロットにいい仕事はできない

科学の良心と、恋人リズの身の安全の間で板挟みになったヴァルターに、かつての上司、ランベール操縦士長は、「やりにくいことがあっても、その場に行けるのは『一度きり』だよ」と諭します。

「深海の珍しい生き物も、熱水が勢いよく噴き出すチムニーも、その場で出会えるのは一生に一度だ。もしかしたら、この数世紀のうちに、それを目にする人間は世界中で君一人かもしれない。それくらい稀少で、宇宙的スケールの出会いを、わたしたちは日常的に体験することができる。そうだろう?」

その言葉に、己を取り戻したヴァルターは、明日の潜航調査で何を為すべきか、はっきりと自覚します。

そんな彼にランベール操縦士長は言います。

何を見ても『同じ』にしか見えないパイロットにいい仕事はできない。
たとえ目の前に別の宇宙が開けていても、それとは気付かぬものだ。
発見はいつでも己の内側からやって来る。

「発見」と言うと、何か新しいものが目の前に現れて、「すごい、すごい」と狂喜乱舞するのが発見だと思いがちですが、新しいものを「新しい」と気付くのは、その人の知識や感性次第であって、何を見ても同じにしか見えない人には、たとえ目の前に新しいものが現れても、そうとは気付きません。

小さな輝き、微かな重み、昨日とは異なる色形、等々。

知識はもちろん、微細な違いを敏感に感じ取る勘や集中力があって初めて、「発見」に至るものです。

それは、さながら、己の内側から閃く如く。

誰かが肩を叩いて教えてくれるわけでもなければ、雲の隙間から光が差して、神の啓示が下るわけでもありません。

発見とは、己の中に十分に熟成した知識と感性がスパークする瞬間です。

それと見分ける知識と、錐のような集中力、常に外側に向かって開かれた、柔軟な感性があればこそ、未知なるものと繋がることができるのではないでしょうか。

潜水艇の操船は、訓練を積めば、誰でもある程度の水準に達することができますが、「何かありそうな所」に到達するには、漫然と覗き窓を眺めているだけでは成し得ません。

ランベール操縦士長が、駆け出しのヴァルターに教えたのは、操船以上に、「何か」に気付く為の知識と感性なのです。

第四章 ウェストフィリア・深海調査 Googleブックスで試し読み

火山島ウェストフィリア近海の海底鉱物資源の探査に乗り出したファルコン・マイニング社はヴァルターに深海調査をオファーする。潜水艇パイロットの矜持から引き受けるが、ファーラー社長の介入で現場の士気はガタガタ。しかし海洋学者やオペレーターらの真摯な探究心により、次第にチームは一丸となる。そして未知の海底で目にしたものは……。
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