たとえ彼女が運命の囚われ人としても

好きに生きるだけが人生ではない ~たとえ彼女が運命の囚われ人でも

 好きに生きるだけが人生ではない。

 決められた役割を全うするのも、同じくらい尊い。

 たとえ彼女が運命の囚われ人としても、誰がそれを否定できるだろう。

 打ち上げパーティーの『La Mer』や、プラットフォームの取材や、彼女なりに皆の役に立とうと一所懸命に頑張っている姿を思い出し、俺は何かにつけ余りに身勝手ではないかと思った。

《曙光》 MORGENROODのボツ原稿より

風来坊の船乗りで、一人きままに生きてきたヴァルターは、MIGの社長アル・マクダエルの娘として政財界の会合に出席したり、ビジネスランチで歓談したり、懸命にホステス役を務めるリズの姿を目にして、感銘を受けます。そして、上記のように、これまでの自分の生き方を振り返ります。

傍目には、「お金持ちのお嬢さんがちやほやされて」としか映りませんが、年配の人が集まる堅苦しい会合に参加して、楽しいことなど何一つありません。

気の合う仲間とオープンカフェでわいわいやる方がどれほど気楽かしれません。

それでも自分の立場を自覚し、懸命に務めを果たそうとする彼女の姿に、「自由自在」「好きなことだけ」が美徳ではないことを悟る場面です。

この世には、やりたくもないことを、責任感でやってる人の方が圧倒多数です。

それを奴隷と嘲笑うか、敬意を示すかで、その人の感性が分かります。

たとえ器用に生きられなくても、真面目にやっている人はたくさんいます。

その真面目さゆえに、社会の秩序や平安も保たれているのです。

Tags: , ,

詩想と引用の関連記事

海のように深く沈潜する

彼もこの海と同じだ。 全てが止まったように見えるが、心の中では生まれたり、悟ったり、日一日と変わりつつある。 どん底に落ちたというのに、目の前は不思議なほど清明だ。 喩えるなら、がむしゃらに突っ走っていたレーシングカーが壁に激突し、ようやく […]

銀河

『善行を積めば、あの世にとこしえの幸せが用意されている』というファンタジーは、名も無き善人にとって、最後に残された砦といえる。 現世で栄耀栄華を味わっている人は、あるかどうかも知れない『あの世の幸福』とやらに何の興味も持たないだろうし、それ […]

月 プリンセス

太陽が海の恋人なら、月は海の守り神。 夜の海を照らすのは、闇夜に輝く月だから。 星が旅人を導くように、月はその航路を照らして守る。 もし夜に月が無かったら、たちまち暗がりに迷うだろう。 あれは昼の中では用をなさないが、夜には無いと困るのだ。 […]