『オレが死んだら、80年代に灰を撒いてくれ』デイヴィッド・リー・ロスと80年代の面白さ

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デイヴィッド・リー・ロスと80年代の思い出

『オレが死んだら、80年代に灰を撒いてくれ』

ある日、Spotifyの『ジャンル』に『sprinkle my ashes over the 80's(80年代に灰を撒いてくれ)』というプレイリストを見つけました。

何のこっちゃと思って、調べたら、『ヴァン・ヘイレン』のヴォーカリスト、デイヴィッド・リー・ロスの名言なんですね。

When I die, sprinkle my ashes over the 80's
(オレが死んだら、80年代に灰を撒いてくれ)

When I die, sprinkle my ashes over the 80's. - David Lee Roth

どういう流れで、この発言が飛び出したのか、私も詳しいことは分かりませんが、Spotifyの公式プレイリストのタイトルに用いられるということは、音楽ファンの間では有名な言葉なのでしょう。

そして、私も同感です。

音楽に限らず、映画でも、漫画でも、もう二度と、あれほど豊かで自由な時代は戻って来ないでしょうから。

80年代の面白さ

80年代の面白さは、当時を経験した人でないと分からないでしょう。

私も、世界全体のバブリーな風潮はあまり好きでなかったけども、音楽・映画・漫画・小説・舞台劇術、TVコマーシャルからお笑い番組に至るまで、あれほどハチャメチャで、エネルギーに満ちた時代もなかったからです。

確かに、今見返せば、侮蔑やハラスメントに相当する表現も散見されますが、それでも、制作側の「世間の度肝を抜くような、面白いものを作ろう」という意欲は計り知れないものがあったし、世間の批判や悪口もどこ吹く風、「誰よりも新しく、誰よりも刺激的に」、皆が壮大な実験に挑戦していたと思います。

その背景には、60年代、70年代と受け継がれてきた、保守的な世界に対する反抗もあれば、先代のアグレッシブな精神を踏襲しつつ(ジョン・レノンとか、スタンリー・キューブリックとか)、さらなる創作の世界に足を踏み入れる感じ。

次から次に、新しい才能やスタイルが登場して、TVも、雑誌も、ラジオも、わくわくするような情報で溢れていました。

そう言うと、「いや、今だって面白いものはたくさんある」と反論したくなるかもしれませんが、皆が皆、ポリコレ棒で叩かれぬよう、不評を買わぬよう、常にネット民のご機嫌伺いながら、表現を小出しにする現代とは180度異なります。

たとえ、センセーショナルな歌や映画で物議を醸しても、それはそれ、これはこれ。

悪意に満ちた書き込みが世界中に拡散するなど無かったし、失言如きで、世間が大騒ぎすることもありませんでした。

作る側も、観る方も、のびのび楽しんでいたと思います。

あの時代に、ヴァン・ヘイレンをはじめ、マイケル・ジャクソン、ホイットニー・ヒューストン、ザ・ポリス、、ボーイ・ジョージ、デュラン・デュランをリアルに体験した者から見れば、21世紀になって、登場したものは、音楽でも、映画でも、どこか既視感があって、『過去のヒット作の焼き直し』という印象しかありません。

「現代の作り手に才能がない」というよりは、面白いものや新しいものは既に出尽くして、何をやっても前作のインパクトを超えるものは難しい、というのが正直なところでしょう。

面白いものを作りたくても、右に左にお伺いを立てて、ちょっとでも誰かの気に障れば、すぐ謝罪か削除を要求されるような中、金銭的、社会的リスクをおかしてまで、何かやろうという人も出てこないと思います。

そう考えると、皆がはちゃめちゃやって、それが緩く許された時代を、当時のアーティストが懐かしむのも当然至極で、『When I die, sprinkle my ashes over the 80's(オレが死んだら、80年代に灰を撒いてくれ)』というのも、デイヴィッド・リー・ロスの偽らざる気持ちかもしれません。

今となっては、限りなくNGに近い『Hot For Teacher』。
冒頭のドラムソロとギターソロは、 現代のミュージシャンにとっても憧れです。

能天気なメロディが印象的な、『Just A Gigolo』

80年代への回帰 : Dead Or Alive 『You Spin Me Round (Like a Record) 』

80年代を懐かしむ気持ちは、デイヴィッド・リー・ロスに限らず、現在、制作の中心にいる層も同じではないかと思います。

映画でも、『ボヘミアン・ラプソディー』、『ザ・トール』、『怪盗グルー』、『ガーディアン・オブ・ギャラクシー』など、70年代~80年代のヒット曲を使う作品が増えてきました。

それをきっかけに、若年層が70年代~80年代の音楽シーンに興味をもち、YouTubeやSpotifyなどを通して、表現の豊かさに目を見張る傾向が顕著です。

最近では、『ボヘミアン・ラプソディー』で、『ライブ・エイド』に興味をもった若いファンが、YouTubeに公開されている当時の記録映像を見て、「誰もスマートフォンを持ってない!」とコメントしていたのが印象深いです。

現代のコンサートは、アーティストの演奏中もスマホで写真撮影、友達とメッセンジャー、片時もスマホを離すことなく、ステージに集中することがないからでしょう。

目の前のパフォーマンスより、いかに記録するか(SNSで自慢するか)、友達と感想を共有するか、そっちの方が大事みたい。

80年代のライブ・エイドで、何万もの観客が揃ってステージの方を向き(友達にメッセージを送る為、俯いて、スマホを弄ぶことがない)、アーティストと一緒に歌ったり、踊ったりする姿が、逆に新鮮なのかもしれません。

そう考えると、デイヴィッド・リー・ロスが目を三角にして嘆かなくても、80年代の面白さは、YouTubeやSpotifyを通じて、未来にも語り継がれるし、世界が彼等を忘れ去ることもありません。

Dead or Alieの、 『You Spin Me Round (Like a Record) 』のように、いい音楽はいつまでも時間軸の周りを廻り続けるのです。

*

この曲も、題名は知らなくても、80年代、誰もが一度は耳にしたことがあると思います。

80年代のディスコブームと札束が舞い飛ぶような華やかさを象徴するようなヒット曲です。

↓ ミラーボールが恥ずかしい^^;

ちなみに、この曲は、サダム・フセインの息子ウダイの狂気を描いた、映画『デビルス・ダブル』でも効果的に使われていました。

インシャアッラー 全てを神の御心に委ねて 映画『デビルズ・ダブル』

80年代、イラク国民が戦火と貧困に苦しんでいるにもかかわらず、息子ウダイは高級クラブで酒池肉林の毎日。

ウダイの影武者を務めるラティフは、毎晩、馬鹿騒ぎに付き合わされ、心底うんざりしています。

そんなラティフに、『ベイルートNo.1に女』として紹介するのが、こちらの場面。

豪華絢爛な高級クラブを舞台に、「君とお近付きになりたい」と歌い上げる『 You Spin Me Round』が効果的に使われています。

80年代のナイトライフを象徴する音楽として、この曲を取り上げたのは、ベスト・チョイスですね。

YouTube 誰もが世界的スターになれる時代

80年代のヨイショばかりでなく、現代のメリットにも目を向けてみましょう。

それにしても良い時代になりましたね。

YouTube以前は、学内にギターやドラムの上手な子がいても、せいぜい学園祭で腕間を披露して、女の子にキャーキャー言われる程度。

もう少し上に行っても、近所のライブハウスで、地元のファンに慕われるのが精一杯。

運がよければ、レコード会社に発掘されて、日本の歌謡番組で歌う機会もあるけれど、世界中の人に自分の演奏を聴いてもらう機会など皆無です。

それが今では一度のアップロードで事足りる。

音質、画像ともに、HD級の動画を作ろうと思ったら、それなりの撮影器具やスタジオが必要だけど、それでも、宣伝に一枠購入する手間と経費を思えば、安いものです。昔のギター少年が逆立ちしても叶えられなかった夢を、スマホ一つで叶えています。

100万回も再生されたら、プロでなくとも、ファンはつくし、広告収入もそこそこ得られます。

それも近所や国内だけではない、音楽やダンスなど、ビジュアル系なら、言語が異なっても、そのまま通用しますからね。

ある種の人にとっては、どんどん夢の叶いやすい時代になっていると思います。

*

今は情報格差とか教育格差とか、いろいろ言われてますが、

一部においては、

夢のある人が夢を叶えやすい環境になって、ホントに月面まで行く人が増えた、

それが目に見えて分かるようになっただけで(あるいは目立つスケールが大きくなっただけで)、

基本的な能力や個人のやる気にそこまで差異があるとは思えません。

ただ、当たり船に乗った時のスピードと成果の大きさがドーンと開くようになったので、基本的なところにも差異があるように感じるだけじゃないでしょうか。

喩えるなら、昔はせいぜい学園祭のヒーローどまりだったのが、今では世界中のユーザーが視聴するプレイヤーになって、ついでに広告料も入る、という違いです。

ゆえに、この優れたインフラを生かして、どんどんチャンスを掴んで頂きたいなと思います。

それが比較的簡単に出来る分野と、まだまだ難しい分野があるのは、しょうがないですけどね。(でも、それもそのうち克服されると思います。テクノロジーの進化で)

この子もすごいよね。

YouTubeのコメントで「このパートは見かけほど難しくない」とか言ってる人もあるけど、ほんならお前がやってみぃ、ですわ。

おまけの ギミアッ !

通称、「ギミアッ!」 といえば、マイケル・フォーチュナティの「ギブ・ミー・アップ」

マイケル・フォーチュナティの名前は知らなくても、「ギミアッ! オーオオオ~ ギミアッ!」のサビの部分は皆が知っているのではないでしょうか。

これもディスコソングの代名詞のような曲です。

Michael Fortunati - Give Me Up

ディスコで踊る時は、友達と向き合って、「ギミ・アップ」の部分で、前に四歩、後ろに四歩、交互に繰り返し入れ替わるのが楽しいのです。

初回公開日 2015年9月24日

この記事を書いた人

石田 朋子のアバター 石田 朋子 サイト管理人

作家・文芸愛好家。80年代サブカルチャーの大ファン。普段はぼーっとしたおかあさんです。昭和の名作漫画はほとんど空で台詞が言えるほどの元祖ヲタ。車と猫が大好きな東欧在住。サイトでは作品紹介ではなく、作品を題材とした文芸コラムを掲載しています。

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