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カラマーゾフの兄弟

江川卓訳、原卓也訳『カラマーゾフの兄弟』をベースに人と社会について読み解く文芸コラム。

  • 2019年11月18日

『カラマーゾフの兄弟』執筆の背景 ~ドストエフスキー評伝より

ドストエフスキーは病み、疲労し、発想力を失っていた。しかしそれだけではなく、今やドストエフスキーにとってこの小説は「小説の中でも最も重要な小説の一つ」だった。この作品は「入念に仕上げなければならない」。さもなければ、「作家としての自分自身を未来永劫にわたって傷つけることになる」とドストエフスキーは書いている。

  • 2019年11月16日

カインとアベルのたとえ話 ~父親を見殺しにするのか

長兄ドミートリィによる父親殺しを予感しながらも、ヨーロッパに旅立とうとするイワンの行動にアリョーシャは強い不安を抱くが、イワンは「カインとアベル」になぞらえて、「僕は兄貴の番人じゃない」とあしらう。後々、この判断がイワンの良心の呵責となって重くのしかかる。

  • 2019年11月2日

幸福に必要な鈍感力 ~鋭い知性はむしろ人間を不幸にする

次男イワンと決定的に違うのは、「それがひとつも苦にならないし、屈辱でもない」という点。一つ一つを「施し」「お情け」と感じ、自己卑下に陥ってしまったイワンの繊細な性格とはあまりに違う。アリョーシャには、この現世を生きるに必要な鷹揚さが備わっていたということだろう。他人の施しに預かるには、イワンはあまりに繊細で、同時に誇り高い人でもあった。

  • 2019年8月3日

子は永久に『子』~父親という人生の負債(7)

父親を殺したいほど憎んだとしても、親は親、子は親には永久に逆らえない。たとえ相手が強欲な淫蕩父でも、育児放棄するような親でも、子は生まれながらに十字架を背負わされたように、親を慕って生きていく。心底から否定などできるわけがない。それゆえに苦しむのである。

  • 2019年7月31日

リアリストは自分が信じたいものを信じる ~信仰と奇跡と自身の基軸(6)

『リアリストにあっては、奇跡から信仰が生まれるのではなく、信仰から奇跡が生まれるのだ』。盲目的に奇跡を信じることと、信じる気持ちから奇跡的な出来事を生みだすことは全く異なる。なぜ人は宗教に自分を委ねてしまうのか。アリョーシャはその他の信者とどこが違うのか。

  • 2019年7月31日

イワンと無神論 自己卑下と高い知性が結びつく時(4)

イワンがニヒルになるのも無理はない。幼少時、人生一番最初にして、もっとも身近な『神』である父親に見捨てられたのだから。それも”口に出すのもはばかるような男”となれば、自分を恥じ、自身や周囲に対しても、自嘲的かつ冷笑的にもなるだろう。一番信仰を欲しているのは、他ならぬイワン自身ではないか。

  • 2019年7月31日

父に捨てられた長男ドミートリィが金銭に執着する時(3)

父親に厄介払いされた長男ドミートリィは幼少時からたらい回しにされ、金で周囲の歓心を買う、無節操な人間に育っていく。自分の父親が金持ちの小地主と知った途端、実際以上の資産を受け継げるものと勘違いし、金勘定に長けた父親が自分を騙そうとしていると逆上したところから悲劇が始まる。

  • 2019年7月31日

淫蕩父 フョードル・カラマーゾフ 指針を欠いたロシア的でたらめさ (2)

不幸の元凶である淫蕩父は金勘定に長けた地方の小地主。愛も責任も持ちあわせない結婚をして、幼い長男ドミートリィを放り出す。右に左に迷走するロシア社会のでたらめさを体現するような人物で、非情というよりは、心の指針を欠いた俗物であるのがありありと解る。

  • 2019年7月31日

プロローグ『作者より』ドストエフスキーの長編体質

ドストエフスキー最後の大作『カラマーゾフの兄弟』は、カラマーゾフ一家、とりわけ、主人公のアレクセイ・カラマーゾフ(アリョーシャ)に詳しい”書き手”の回想録として始まる。「これが蛇足だという意見には、私もまったく同感だが、なにせもう書いてしまったものであるし、このまま残しておくことにしよう」の一文に長文体質ドストエフスキーの心情が垣間見える。

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海洋小説『曙光』MORGENROOD

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