マイノリティに未来はあるのか 映画『ザ・グレイテスト・ショーマン』

目次

映画『グレーテストマン・ショー』が描くマイノリティの世界

挿入歌『This is Me』 ~これが私

異形、有色、障害、その他訳あり、etc

社会的に蔑視されやすい、外見のユニークな人々を集めて、『ショー』を企画し、一流の仲間入りを目指す、P・T・バーナム(ヒュー・ジャックマン)。

貧しい仕立屋の息子で、子供の頃、上流階級の主人(後に妻となるチャリティの父親)に「娘に近づくな」と横面を張り倒された悔しさから、ユニークな興行を企画し、名声と財を成しますが、いつしか彼自身、家族や仲間の気持ちを顧みない、エゴイスティックな興行師となっていきます。

バーナムにスカウトされた、ユニークな人々。

小さいけれど勇敢な少年

見た目がユニークなマイノリティを募集する

見た目のユニークな出演者を募る

興行師として大成功を収める

『ラ・ラ・ランド』で新感覚のミュージカルを創造したベンジ・バセクとジャスティン・ポールが再び歌曲を手掛け、映画『ローガン』で、ウルヴァリンからすっかり足を洗ったヒュー・ジャックマンが素敵なパフォーマンスを見せる『ザ・グレイテスト・ショーマン』は、マイノリティにスポットライトを当てた、現代風の物語です(舞台は19世紀のニューヨークですが)。

関連記事 → 21世紀の正義と教育 ヒーローとは何か 映画『ローガン』

サーカスのスターは、お世辞にも美男美女とは言いがたい、ちょっと風変わりな人たち。

こびと。髭面女。毛むくじゃら。超肥満。超長身。アルビノ。アフリカン。

いずれも世間から嘲笑され、家族にも疎まれてきたような人々です。

バーナムは、そんな彼等にスポットライトを当て、ユニークなミュージカルショーを企画します。

ショーは大評判となり、ついには、英国のヴィクトリア女王に招かれる栄光に浴します。

ところが、上流階級の人々が集うパーティーに、ショーの仲間が顔を出そうとすると、慌てて扉を閉ざし、ユニークな外見の彼等を人目から隠そうとします。

そんなバーナムの心底を悟った仲間たちは、「いつもそうだった」と回想し、深く傷つきますが、それならそれで構わない、This is Me (これが私)と大合唱しながら、好奇の目の中を堂々と歩き出します。

髭面女を演じるキアラ・セトルがリードヴォーカルを務める挿入歌『This is Me』は圧巻。

パーティーへの参加を拒絶される

髭面ながら美声の持ち主

This is Me

私は暗闇を知っている
言われた ”隠れてろ お前など見たくない”
体の傷は恥だと知った
言われた ”消えろ 誰もお前など愛さない”
でも 心の誇りは失わない
居場所はきっとあるはず
輝く私たちのために

言葉の刃で傷つけるなら
洪水を起こして溺れさせる
勇気がある 傷もある
ありのままでいる
これが私

気を付けろ 私が行く
自分で叩くドラムが伴奏
見られても怖くない
謝る必要もない
これが私

心に弾を受け続けた
でも撃ち返す
今日は恥も跳ね返す
バリケードを破り
太陽へと手を伸ばそう
私たちは戦士
戦うために姿を変えた
心の誇りは失わない
居場所はあるはず
輝く私たちのために

これが私

私にも愛される資格がある
値しないものなど何ひとつない

この歌詞は、現代の気風にマッチしていると思います。

外見のユニークな人だけでなく、この競争社会で敗れ、傷つき、踏みにじられ、みじめな思いをしている人々にも強く訴えかける曲です。

見方を変えれば、現代は、弱者にとって受難の時代であると同時に、声を大にして、その権利と存在感を主張すべき好機なのかもしれません。

思えば、皆がそろって貧乏で、どこの子供も垢まみれで、膝に継ぎはぎのあるズボンを履き、鼻水を垂らしていたような時代は、むしろ不公平感も少なく、貧乏を貧乏と意識しない精神風土がありました。なぜなら、右を向いても、左を向いても、みな貧乏で、隙間風の吹く長屋で身を寄せ合うような、似たり寄ったりの暮らしをしていたからです。

ところが、なまじ社会が豊かになり、生き方も多様化してくると、逆に違いが浮き彫りになり、持たざる者は孤立していきます。

ハンディというのは、集団の中で意識した時にいっそう溝が深まるもので、世の中が進化すればするほど、落差も激しくなるものだからです。

それでも昔に比べたら、表面的には寛容になったと感じます。

同性愛者というだけで処刑されることもなければ、病人が納屋や精神病院に閉じ込められることもありません。

個々の権利は保障され、不当な扱いをされたら、行政に対して異議申し立てをすることもできます。

むしろ世界的に理解する方向に進み、有名人が同性愛をカミングアウトしたり、心身のハンディキャップをもつ人がSNSで積極的に発信したり、以前からは想像もつかないほど、マイノリティを取り巻く環境は変わったと思います。

それでも差別意識は依然として根強いですし、目に見える違いや階層を乗り越えるのは容易ではありません。

平等や公正を説いたところで、人々の生理的嫌悪感や歴史的感情、偏見や侮蔑を完全に払拭するのは至難の業でしょう。

それなら、こちら側から堂々としてやろう。

世間に堂々と顔を晒し、胸を張って生きていく。

『ザ・グレイテスト・ショーマン』は、社会の側に是正を求めるのではなく、こちら側の自己改革を促す作品です。

見方を変えれば、差別される側に自助努力を求めるわけで、このあたりが人間社会の限界という気がしないでもないですが、それでも、身体的、精神的、あるいは社会的にマイノリティに属する人々に、This is Me のメッセージは届いたでしょうし、今後もこうした作品は積極的に作られると思います。

なぜなら、今、私たちが生きている莢界は、どこもかしこも格差だらけで、踏みつけにされている人の方がうんと多いからです。

以前にも増して、違いが可視化され、人の能力や魅力が数値で測られる現代、各々が自分の才能を信じて、胸を張って生きていく気概がどこまで通用するのか(あるいは、気力だけで、どこまで自分を支えられるものなのか)

もしかしたら、傷つく方がうんと多いかもしれないけれど、それでも、私たちはそうやって生きていく。

何故なら、誰もが生きるに値する存在だからです。

……それにしても、こうした映画が好まれる時代は、案外、不幸なのかもしれないですね。

需要があるから作られるわけで、皆が調子づいている時は、スーパーマンやランボーみたいな、イケイケマッチョな物語が好まれますから。

日本でも癒やしブームが始まったのは、90年代半ば、氷河期の頃。

皆が慰めや励ましを必要としている時代は、決して幸福ではないのです。

生きよう、輝こう

映画のラスト、サーカス館が放火され、再建の見込みもなくなった時、それまで批判的だった評論家が、「君はいろいろな人間を一緒に舞台へあげた。肌の色も、体型も、大きさも、違う者たちを平等に。ほかの評論家なら名付けてた。”人類の祝祭(Celebreation of Humanity)”と」励ます言葉が印象的です。

Come Along

目が語っている
隠れてろというウソを信じてたと
外が怖くて カギを掛けてた
でも もう終わりだ
もう陰に隠れて生きるのはイヤ
一度 外を見たら 変わるしかない
軌跡の稲妻を瓶に詰めて
才能を証明しよう

生きよう 輝こう
君の炎を明るく燃やそう

空へ 手を伸ばそう
空の広さに胸 震えたら
そこは空想の世界
何にでもなれる
目を開けて夢を見よう

元の世界にはもう戻れない
目を開けて夢を見てるから
輝こう

一人も みんなも さあ集まれ
夢あふれる人たち
一人も みんなも 呼び声を聞いて
自由への道を探し求めてる人たち

そこは空想の世界
何にでもなれる...

医療福祉の分野では、よく『ノーマライゼーション』という言葉が使われます。

しばしば、「平等」と勘違いされますが、ノーマライゼーションとは、「赤いリンゴもあれば、青いリンゴもある」という意味で、「どの林檎も絶対的に均一100円でなければならない」「青いリンゴも赤リンゴとみなすべき」という画一化とは異なります。

赤いリンゴも、青いリンゴも、大きいリンゴも、小さいリンゴも、同じ“りんご”として、一つのバスケットの中で仲よく生きていく。

境界もなく、特別扱いもなく、全てがありのままに存在し、自然な日常の風景として一つに溶け合う、それこそがノーマライゼーションです。

そんな風に、人間社会も、もっと気楽に、伸び伸びと生きていければいいですね。

*

個人的には、アルビノの女性が好きでした。

一言も台詞がないのですが、ダンスがとても素敵。体付きも肉感的で、女性的な魅力にあふれています。

ゼンディヤの後ろに隠れて目立ちませんが、じっと見入ってしまうタイプのダンサーです。

とても素敵なアルビノのダンサー

グレイテスト・ショーマン [AmazonDVDコレクション] [Blu-ray]
出演者  ヒュー・ジャックマン (出演), ザック・エフロン (出演), ミシェル・ウィリアムズ (出演), レベッカ・ファーガソン (出演), ゼンデイヤ (出演), キアラ・セトル (出演), マイケル・グレイシー (監督)
監督  
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キアラ・セトルについて

本作で、大柄な髭面女、レティ・ルッソを熱演するキアラ・セトル(Keala Settle)、とても素敵なシンガーさんです。Wikiによると、ブロードウェーで活躍して、批評家賞やトニー賞などを受賞されてるんですね。今後の活躍が楽しみです。

The Greatest Showman Japan Premiere Red Carpet- Keala Settle (39535224644) (Cropped).jpg
By Dick Thomas Johnson from Tokyo, Japan -
This file has been extracted from another file: The Greatest Showman Japan Premiere Red Carpet- Keala Settle (39535224644).jpg
, CC BY 2.0, Link

Spotifyでサウンドトラックも再生できます。

This is Me も、レコーディングされた音源はがひと味違って、綺麗です。

キアラ・セトルのアルバムもリリースされています。今後の活躍が期待されます♪
個人的にはベッド・ミドラーのヒット曲『ローズ(The Rose)』のカヴァー曲が好き。

ここで転ぶかと思われたが、転ばなかったのはさすがウルヴァリン。

不倫しかけるが思いとどまるウルヴァリン

この記事を書いた人

石田 朋子のアバター 石田 朋子 サイト管理人

作家・文芸愛好家。80年代サブカルチャーの大ファン。普段はぼーっとしたおかあさんです。昭和の名作漫画はほとんど空で台詞が言えるほどの元祖ヲタ。車と猫が大好きな東欧在住。サイトでは作品紹介ではなく、作品を題材とした文芸コラムを掲載しています。

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