失った恋にさ迷って ~松任谷由実の『届かないセレナーデ』

どれほど相手に尽くしても、

一所懸命に「いい女」になろうとしても、

恋は、失う時には失うし、愛されないものはどうしようもない。

それこそ彼氏に何度も手を突いて、「私のこと、好きになって下さい」とお願いしても、一度なくした恋は元には戻らないものだ。

でも、若い女の子は無知だから、全部「私のせい」と思う。

謝れば、もう一度、私に振り向いてくれると期待して。

そうして、しつこく、しつこく、彼氏の後を追いかけて、もっと傷ついてしまう。

彼と出会えそうな場所、出会えそうな時間帯に、ふらふらと出掛けて、最後は泣きながら帰ってくるのだ。

鳴らない携帯電話を握りしめて――。

*

松任谷由実のアルバム『LOVE WARS』に収録された『届かないセレナーデ』は、失恋した彼のことが忘れられず、夜の都会をさまよい歩く女の子の気持ちを切なく歌った曲だ。

もう会えない、会ってはいけないと、頭で分かっていても、大好きな彼の面影を追って、出かけてしまう。

遠くに見える人、すれ違う人、もしかしたら、あの人? と期待に目を凝らすけども、そのどれとも違う。

もういい加減、諦めればいいのに、ここに居れば、もう一度、やり直せるような気がして、ぐるぐる同じ場所を廻り続ける。

ごめんなさい 人違いです
逃げるようにして渡る 信号

断ち切れぬ想い。

何処にも突き抜ける先がない。

だから今もこの場所に、抜け殻みたいに立ち尽くしている。

戻ることも、進むことも、出来ぬまま──。

あなたと暮らした町で 今年も暮れて行くわ

こういう痛みも、いつか、みんな、思い出に変わる。

思い出になった時には、「こういうことを経験してよかったのだ」と心の底から思えるようになる。

永遠に失恋している人などない。

失恋は、死の宣告ではなく、経験の一つに過ぎないのだ。

CD紹介

『LOVE WARS』って、昭和バブル期の『純愛ブーム』の走りだったんですよね。

クリスマスに高級ホテルでディナーしたり、アッシーメッシーを何人も抱えたり、ティファニーのネックレスをおねだりしたり。

そういう物質的な恋愛にNoを突きつけるのが純愛ブームでした。

ある意味、物質的な恋愛ができる時代は幸福なんですよ。

10代20代の子でもちょっと頑張ったらティファニーのネックレスやカルチェの三連リングが買える方が夢と勢いがあっていいでしょうに。

LOVE WARS by ユニバーサル ミュージック (e)
 定価  ¥2,424
 中古 25点 & 新品  ¥1,502 から

LOVE WARSは全曲、Spotifyで公開されています。興味のある方は是非。

この記事を書いた人

石田 朋子のアバター 石田 朋子 サイト管理人

作家・文芸愛好家。80年代サブカルチャーの大ファン。普段はぼーっとしたおかあさんです。昭和の名作漫画はほとんど空で台詞が言えるほどの元祖ヲタ。車と猫が大好きな東欧在住。サイトでは作品紹介ではなく、作品を題材とした文芸コラムを掲載しています。

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