初恋は、過ぎ去って初めて、その人を本当に愛し始めるのではないか、と思う。
恋の中にいる時は、ただただ、側に居られるだけで幸せ、目が合うだけで嬉しくて、はしゃいだり、落ち込んだり、自分の感じる気持ちがすべてで、相手のことなど本当は見ていない。
そうして恋が終わり、何もかもが懐かしく感じられるようになってはじめて、その人の優しさに気付く。
あの言葉も、あの眼差しも、そういう意味だったのだ──とようやく理解した時、皮肉にも、愛を伝える機会は永遠に失われているのだ。
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そう思うと、どうして、もっと強く、気持ちをぶつけ合えなかったのだろう。
好きなら「好き」、失いたくないなら「失いたくない」と、どうして言葉にしてはっきりと相手に伝えなかったのだろう。
傷つくことばかり恐れて、自分のホントの気持ちさえ見失っていた。
愛し方も傷つき方も分からなかったから、あの頃は──。
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ユーミンの『タワーサイド・メモリー』を聞いていると、「恋すること」、それ自体が、どれほど素敵な心の体験か、今さらのように思わずにいない。
でも、恋の最中では、相手の気持ちとか、二人の運命とか、そういうことばかり気になって、だんだん心の体験としての恋を実感できなくなってしまうんだな。
そして、後々になって、ああ、あの素敵な一瞬を、どうして笑って過ごせなかったのかと心残りに思う。
もっと、あの人の声、あの人の笑顔、仕草の一つ一つを、深く、強く、心に刻みつけておけばよかった、と。
懐かしんでも、すべては時の彼方で──。
「ごめんね」なんて 言って欲しくない。
痛みの中で知ってゆく。本当の、人の愛し方──。
CDとSpotifyの紹介
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一部ファンの間ではユーミンの最高傑作と称されるアルバム。
その後のヒット曲とも、荒井由実時代のヒット曲とも一線を画したような、透明感あふれる作品がいっぱい。
幸福感はないけれど、若い女の子の心の底をノックするような、切ない歌詞が秀逸。
ユーミンのベストセラーもたくさんありますが、これだけは別格です。