かなしくなったときは
かなしくなったときは 海を見にゆく
古本屋のかえりも 海を見にゆくあなたが病気なら 海を見にゆく
こころ貧しい朝も 海を見にゆくああ 海よ
大きな肩とひろい胸よどんなつらい朝も どんなむごい夜も
いつかは終わる人生はいつか終わるが
海だけは終わらないのだかなしくなったときは 海を見にゆく
一人ぼっちの夜も 海を見にゆく
どうやっても不器用な人間がいる。
ああしなさい、こうしなさい、頭では分かっていても、どうしても、そうできない人たちだ。
そういう人にとって、心の拠り所は何だろう。
どこかに救いはあるのだろうか。
そんな時、私たちの足は自然に海に向く。
果てしない広がり。
規則的な波の音。
昔そこに住んでいた記憶が
安らかだった時代を思い出させてくれるからだろう。
何の悩みもなく、痛みもなく、
まだ魂しか持たなかった頃
海の揺りかごに包まれた
優しい時間を。
そして、いつかはそこに帰って行ける。
一つの海に繋がれたように。
私たちは、あの果てしない水の向こうで生まれ、
ほんの一時
この世を体験するに過ぎないのだ。
どんな詩人が
自分の書いた海で
泳ぐことができるというのだろう